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わが半生
自分で言ってしまうダサい感じ。ただそう言ってしまうくらいに苦労してきた。半生といってもそこまで長い年月ではない気がする。
 
理不尽。生まれの不自由。借金。プライド。苦しみには色んな種類がありそう。避けては通れない。
 
では何について、代わりに何について語ろうというのだ。最近苦しかったことと言えば、ぼんやりしていて思い出せない。思い出せないことを隠しているのではないか。言葉にできない苦しみ。
 
苦しんだ分見返りがいつもあるとは限らない。もし見返りがあることを期待しているのであればそれはそもそも苦しみとはならない。いや一次的には苦しいのだが、後で思い返して良かったとなる。
 
誰にも体験できないできごととか、エリートゆえの苦しみとかは、たしかに周りから見れば価値があるかも知れない。また大体失敗がつきものであるから、その失敗を次に生かすことで価値が生まれる。
 
全く目を背けてしまう。逃げる。それがいいかもしれない。ではなぜ苦しみを持ちがしたのか。苦しいを語れない苦しみを書いている、などということを言いたいのか。
 
ア・プリオリに苦労がある。歴史も因果も何もなくふと苦しみがある。生まれついたそのとこが苦しみであるとかいう不条理か。
 
段々面白くなってきた。説明したいのにできない人がもがいているようにもみえる。これからもその苦労が続くだろう。今までずっとそうだったから。
 
自分の今までの人生と、苦労からいきなり目の前の机に焦点が合うのが、ピントが急に絞られている感じで面白い、かもしれない。しかし苦しみを一切明かそうとはしない。
 
苦しみを解き明かそうとすると、ただそこにいるだけの自分に戻ってくる。無限に後退していく。
 
その俯瞰した自分にもう一度乗り移り、その眼で以て手を眺める。手を眺めるのはいい。欠陥があって骨があってしわがあって、見ていて飽きない。しかし凝視しているうちに何でこんな形何だろうと思えてくる。
 
苦しみを明かしたいのに明かせない。語ることができないので語ることができないという苦しみ。手は謎を解き明かすための道具。
 
対して穏やかな情景。木の葉の涼しい物音。栄養を蓄えている。木の手はおそらく枝葉である。葉脈があり、枝がある。
 
早く春にならないだろうか。今日は雨が降っている。夕暮れもなく、徐々に暗くなっていくだけで、つまらない。遠くへ行きたいという欲求。春が待ち遠しいという思いを春になっても思う。
 
その春に到達することはできない。今まさに春の中にいるのに、それに気づかないで、次の春を待ちながら、終わっていく。
 
座ったまま、何も言わず黙って、手を見つめながら、しかしそこから何も発見することができずに、より分からなくなって終わる。結局悲しみとは何だったのか。
 
独身者
石鹸は汚れを落とすもの。まだ使われない新品の石鹸は、少し使うのをためらう。そこに風が吹いてくるのは何の意味が、風で匂を運ぶ。
 
石鹸箱という限られた空間から放たれる匂い。それが街までやってくる。街を区別しているのは道、蜘蛛の巣のような道。
 
大原女が秋風の権化。閉じた空間の中を縦横無尽に闊歩していく。街は使い捨ての張りぼて。使われていくうちにどんどん解けてすり減っていく。石鹸のように。
 
「彼」が登場。凸と凹が重なるような。大原女がどんなものか知らないが、女と来て彼が来たら何かしらを期待してしまう。
 
だから街を俯瞰することなどできない。石鹸箱を通る風もわからない。女には気づくのだろうか。また自分が独身であるという一番近いことには気づいているのだろうか。
 
近くも良く見えていないのでは。自分がどんな服を着ているのか、またどんな服を着ればいいのかわからない。または個性がない。自分を出したくない。公式なものを好む。
 
どこかに仕えたことがある。それは名誉なことだろうか。変わり者。しかし信頼がおける人、仕事はできる。不自由を克服。
 
つかの間の休息。独身だから、時間があるので銭湯に行ける。
 
午後三時と言えば普通の人は働いている時間だ。秋の三時は少し暗い。
 
その女と近眼男が出会うことはない、いやそんなことはない。男は今まさに湯屋から出て来て路に出てくるところである。そこを女が通れば出会うことはある。しかし近眼だから気付かないかもしれないし、別に出会うからどうということもない。
 
春宵感懐
雨が渇く。雨が降っている時でも風は吹いているものではないか。心地いい風、しかしまだ湿り気が残っている風。地面から蒸発する匂いを運ぶ風。
 
情景が動いていく。ゆっくりと。雲の流れも月のうごきもすべてがゆったりとしている。その二つがまじわるときがある。
 
皆気付いていないだろうから知らせてあげよう。ただ独断ではなくみんなと共有できる感覚。皆に言っても恥ずかしくない感性。
 
湿り気があるからそう感じる。生暖かさに春の要素がつまっている。桜は散ったかもしれない。現地点で春ではあるが、それも過ぎ去っていく。梅雨の気配。
 
いい意味のため息か。ストレスのため息か。注意を惹きたいため息か。自分は落ち込んでいる、苛立っているということを周りに知らしめたいときに溜息を吐く。ひとりでもそう。みなさんへの呼びかけの裏で独りため息。
 
幻想といえばもう何でもありになってしまってつまらない。想像力。不可侵のもの。自分一人の頭で作り上げるもの。
 
明かされることのない幻想。ひとりだけで楽しむもの。そもそも幻想を把握できないと、ではなぜ幻想がわくということが分かったのか。
 
幻想がわいた、内容はわからないが幻想を思う下地が現れたが当の内容を思うより先に消えてしまった。いや無理がある。矛盾している。つまらない。
 
説得しようとしている。言い訳がましい。じゃあこんな詩を書く必要はそもそもなかったということになる。誰にもわからないのであれば、幻想という言葉を出す必要はなかった。
 
それは能力の問題ではなくそもそも人間にはできない。春の宵からなぜいのちの話題に移ったのか。
 
風がため息になった。大きい主語。人間について語るには詩という形式は不向きである。気持ちを吐露するだけ。何ら生産的ではない。
 
退屈が究極になる。こころ、顔、道徳の授業みたいだ。詩人が何を言うか。説得力なし。いやそもそも詩に説得力を求める方がよくないのか。
 
顔を見て即笑ったら失礼だけど。はいはいそうですか。みんなで幸せだねじゃあ。これ以上話すことはないね。なぜつまらないのか。
 
なぜ人生や人間や心などを持ち出す詩がつまらないのか。それは詩が内容を伝えるところに重心を置いて居なく、声に出したり、メロディを付けたりして楽しむものだからか。
 
冒頭を最後に繰り返すというのが現れ始める。ではどうすればいいのか。
 
曇天
つまらない詩に対してどのように対処すればいいのか。空を持ち出して来たら、私の方ではもはやそれを見ようとはしない。地面を見ることにする。
 
すべてを否定していく。いや見ていない。すべて妄想である。病院に行け。黒い旗が何かを知らしめているということもない。不吉なものを暗示しているはずがない黒はただの黒であり、それ以上でも以下でもないからだ。
 
行の無駄。インクの無駄。そんなに音が好きなら音楽を作ればいいのにそれもしない。旗は動かない。風など吹かない。接着剤でガチガチにしてやったからだ。どこに旗があるのか。どこにもない。妄想だから。
 
聞こえた。スピーカーで流した。細い棒。折れそう。耳が悪いだけでは。旗を降ろそう。嫌がらせをしよう。
 
勝手に触るな。妄想というか夢の話を聞かされている気分。今日は雨が降っている。だから外にも出たくない。勝手なことはしたくない。旗も下ろすな。
 
いつか旗の棒ごと折れてしまう。ざまあみろ。根性で下ろせ。自分からのぼりに行け。しかしなぜ下ろす必要があるのか。
 
空に吸い込まれる。空から降ってくるものは多々あれども。旗がどこか誰かに何かを知らせているのであれば、下ろすべきではない。それとも旗を助けようとしたのか。
 
昔にとらわれている。進むことはない。少年とか幼心とか興味がない。お前に興味がない。認めてないからだ、尊敬していないからだ。
 
誰にでもできることをもったいぶってやっているだけなんだ。読めない漢字を書くな。未来と過去が入り組んでいる。
 
勝手に海だと思っていた。野原は地面。では空のことを考えよう。いやもうこのパソコンのことを考える。速く買い換えたい。タブレットを買いたい。今日も午後に起きた。
 
詩漁ってから働き始めるというのにこのような生活リズムではいけない。都会に瓦があるというのがよくわからない。都会ってどのくらいの都会。東京。ビルとかある。
 
あれこれ、ダサい。何が詩人だよ。つまんない。まだ中学生の愚痴とかを聞いていた方がまし。期待して損をした。いや、私は期待していたのか。
 
これからは何も期待しないことにする。所、場所のこと。勝手にそれは想像してください、という姿勢。今と少年時代。
 
野原と空。妄想の黒い旗をずっと持っている。何の役にも立たない。しかし継続するということの実態はこのようなことかもしれない。誰にでもできることをやる。時間を無駄にしていく。
 
蜻蛉に寄す
秋、トンボ、紅葉、山登り、芸術、スポーツ。涼しい。二学期。食欲。グルメ。冬の前。
 
オニヤンマ。二匹でペア。田舎。穏やか。昆虫キモい。広い羽根。結構素早い。赤はくすんだ赤。セミ。幼虫。カブトムシ。
 
夕陽の赤と赤とんぼ。相性良い。夕陽がきれい。美しい、文学的。繊細な感性。才能。信者。神。価値。誰にもできない。文体。
 
突っ立って何もしない。穀潰し。影が延びる。日に背を向けているのか向いているのか。広い野原。草木。山がある。田舎。故郷。
 
煉瓦工場。燃やす。熱い。煙が空に昇る。空気が汚れる。文明。産業革命。アンパンマン。灰。元通りにならない。田舎ではない。発展の兆し。
 
夕陽が工場を飲み込んでいる。夕陽の力強さ。綺麗で美しい日本人の感性。すごい文体。みたいな印象。感じ。のようなもの。
 
ああ可哀そうに。いやしてあげたい。ああ神様が悲しんでいるよみんな、あの有名な詩人様がため息をついているよ、皆話を聞いてあげようよ。その言葉をまとめて本にして何円かで売ろうよ。
 
ほら、石を拾ったよ。何か特別な意味があるはずだ。あの詩人様が意志を拾ったのだから間違いない。きっとなにかあるはずだ。貴重な場面だ。
 
ああ冷たいね。可哀そうだね。冷たいよりかは暖かい方が良いもんね。意志なんか投げてしまおう。どこかへ放ってしまおう。何かを連想させてしまうんだね。
 
石を温めてあげたんだね。偉いね。その冷たさから目を背けずに、石を思いやってあげたんだね。石と身体は同化している。
 
もうお役御免。充分温まったからいいだろう。なわばりを広げている。自分の範囲を作ろうとしている。
 
草を殺す。意味なんかないんだよね。理由もないんだよね。ただこっちが頭を働かせないといけないんだよね。自分は適当に言葉を言っていれば、勝手に読み込んでくれるからね。面白いね、いい商売だね。
 
抜いて捨てた。殺して何かを作るということもなく、捨てた。土だらけか。草がたくさん生えているのではないか。土道があってその横に草が生えているのか。今日もこうして終わっていく。トンボはどこへ。
 
石が温まっていったように草は徐々に死んでいく。「僕」は何もそれで影響を受けない。影響を与えていくだけ。
 
工場が自然を破壊している。自然を壊すな、ということをこの詩は伝えています。繊細な作者の感性が伺えますね。私たち凡人には到底及びもつかない発想力がここにはありますね。

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