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イベントレポ:日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール合同授賞式

2021年11月18日、「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」第4回・第5回合同授賞式が行われた。
授賞式には第4回で最優秀賞を受賞した朴澤蓉子さん、金憲子さん、第5回で最優秀賞を受賞した東峰直子さん、廣岡孝弥さん、そして審査員の中沢けいさん、吉川凪さん、きむ ふなさん、清水知佐子さん、古川綾子さんが参加した。

このコンクールは優秀な翻訳家の発掘と韓国文学の普及を目的として2017年から開催されており、第4回(2020年)は138名、第5回(2021年)は113名もの応募があった。

【受賞者の声】
まず最初に、第4回で最優秀賞を受賞した2名が表彰された。
「하나코는 없다(ハナコはいない)」で最優秀賞を受賞した朴澤蓉子さんは、10年ほど映像翻訳に従事してきたという。「今までの試行錯誤は間違っていなかったのだと感じた。これからも頑張っていく勇気をもらった気がする。このような挑戦する機会があるのは、ありがたい幸せ」と受賞の思いを語った。

「어느 밤(ある夜)」で最優秀賞を受賞した金憲子さんは、大学時代に韓国語と出会い多くの人に支えられ勉強を続けてきた。「翻訳は時間のかかる作業なので体力的に大変なこともあるが、著者の意図を読者に届けようと努力する過程が、世のなかや他者を理解する力を育ててくれているのではないか」と述べた。

そして、「ある夜」の著者であるユン・ソンヒさんからの祝辞が紹介された。「本を開いた瞬間、本を読んだ瞬間、それを言語に翻訳する瞬間、すべての瞬間、優しい慰めが皆様の生活に満ちているでしょう。物語の美しさが、皆様の暮らしをより充実させてくれることを願っています」と受賞者を祝福した。

続いて第5回で最優秀賞を受賞した2名が表彰された。
「하얀 배(白い汽船)」で最優秀賞を受賞した東峰直子さんは、2020年よりチェッコリの翻訳スクールで翻訳を学んだことが大きな転機になったという。「10年前から仲間たちと翻訳勉強会を続けてきたことも身になったのではないかと思う。受賞を励みに、韓国文学を広めるのに貢献していきたい」と喜びを語った。

「모멘트 아케이드(モーメント・アーケード)」で最優秀賞を受賞した廣岡孝弥さんは、今回が3度目の挑戦だった。作品のテーマが仮想現実であることに触れて「翻訳という作業はことばの壁を超え仮想空間にアクセスできるようにする行為。そのため毎日緊張感を持って丁寧に作業するよう心がけた」と振り返った。

「モーメント・アーケード」の著者であるファン・モガさんは祝辞のなかで「翻訳は二つの言語を扱いますが、二つの考え方・文化の相違点を見つける作業というより、二つの物語をつなげる・結ぶ、そして通す作業だと考えています。そのため、時には原作自体が持つ意味を超える価値が生まれる作業だと考えています」と述べ、受賞者の功績を称えた。

【自由に言葉と向き合う】
最後に審査員長の中沢けいさんは、今回初めて男性の受賞者が誕生したことについて大きな変化であると喜び、故安宇植さんとの翻訳談義の裏話も披露した。昔と比べて韓国文学が幅広い層に親しまれ、翻訳者がより自由に作品と向き合えるようになった現状を高く評価した。

わずかな時間ではあったが、受賞者たちの翻訳や作品への愛情が伝わってくる授賞式だった。第4回の受賞者による邦訳作品はいずれも「韓国文学ショートショートシリーズ」として2021年7月に刊行されている。第5回の邦訳作品も2022年の前半に刊行予定。本シリーズは韓国語の原文も一緒に収録されているので、韓国文学の入門書としてもぴったりだ。
他にも、コンクールの課題作を取り上げたイベントも計画されているという。今後ますますパワーアップする「日本語で読みたい翻訳コンクール」から目が離せない。

⇒ 『ハナコはいない』はコチラから

⇒ 『ある夜』はコチラから

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(レポート:中川里沙)

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