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イベントレポ:「翻訳を楽しく悩もう」presented by 韓国語のHANA

韓国語を勉強したり、翻訳された韓国文学を読んだり、韓国映画・ドラマやバラエティー番組を見たりして、「翻訳」に興味を持った人も多いのではないだろうか。今注目を集めている「韓日翻訳」について、日韓・韓日翻訳者や講師として活躍され、韓国語学習ジャーナルhana vol.41で「韓国語の翻訳入門」についても執筆されているカン・バンファさんと、聞き手にHANAのとんそく子さん(浅見綾子さん)をお迎えしてお話いただいた。

まず、翻訳とは? というお話から。翻訳とは「A言語が理解できない人のためにB言語で伝え、理解させる」こと。そこで、A言語とB言語の理解度を等しくするために、A言語の国では当然のように知られている固有名詞に説明を加えたり、目的や対象に合わせた自然な表現のB言語に置き換えたりするのが「翻訳」である。

そして、翻訳者には「信頼できる翻訳」が求められる。

「信頼できる翻訳」のポイント1つ目は「翻訳の基本を忘れない」こと。名前や地名の誤訳はないか、推測や慣例で訳していないか。下調べと確認を怠らず、常に自分を疑うこと! いちばん怖いのは「思い込み」とも仰っていた。

ポイント2つ目は「翻訳した意図・理由が言える」こと。なぜその表現・言葉を選んだのか、根拠を説明できる翻訳が信頼できる翻訳である。ジャンルや対象者が根拠になることもあれば、場面や作風の理解度が言葉選びの根拠になることも。また、いきなり単語対単語で翻訳するのではなく、作品を読み込んで全体のテーマを把握してから細部の言葉選びをしていくと、適切な言葉を選べるはず、というアドバイスもあった。

質疑応答のコーナーでは、事前に集まっていたたくさんの質問に答えてくださった。

韓国語がある程度できて、翻訳の勉強は何から始めるべきか悩んでいる方への質問に、なぜ翻訳家になりたいのかをよく考えてみることから始めるべきと答えていたのが印象的だった。言葉がわかれば翻訳ができると思っている人も多いが、語学の勉強と翻訳の勉強はイコールにはならないからだ。それでも翻訳の仕事をしたいと思ったら、自分の好きなジャンルを見つけて追究すること。翻訳スクールやサークルで仲間と集まって、テクニックや情報交換をするのも翻訳の勉強に効果的だそう。

出版翻訳をしたい方からの質問では、翻訳に関する賞の受賞にしても、出版社への持ち込みにしても、どの方法も一回では諦めないでほしいという言葉がとても心強く感じられた。量をこなして得られる実力もあるとのことなので、開催されるコンテストを利用して実力をつけてやろう、くらいに考えてもいいのかもしれない。

他にも、直訳すべき部分と意訳すべき部分のバランスに悩んでいる方へのアドバイスや、「役割語」をどう決めるか、自然な日本語の文章にするためのコツ、絵本の翻訳についての質問から、翻訳作業中の気分転換などについても答えてくれた。

翻訳をこれから勉強しようと思っている人にとっても、すでに翻訳を勉強中の人にとっても、第一線で活躍されている翻訳者の方から実践的なアドバイスやお話を聞くことのできた、とても有意義な一時間だった。

「翻訳は死ぬまで勉強」という言葉に圧倒されながらも、誰かの役に立つだけでなく、死ぬまで勉強して成長できる「翻訳」という仕事が、さらに魅力的に感じられた。
楽しく悩みながら、よりよい翻訳ができるように精進しようと決意を新たにさせてくれたイベントだった。

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(レポート:松原佳澄)

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