謎解き今昔
昔の推理小説によく登場していたアイテムとして思い浮かぶものに、分厚い紙の時刻表がある。
松本清張の『点と線』は、時刻表トリックの古典ともいわれる。
西村京太郎の作品も鉄道を使ったトリックが多い。
アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』には、時刻表そのものが出てくる。
昔は一家に一冊とか、ごく身近にあるものだったが、今は時刻表で乗り継ぎなどを調べる人はほぼいない。
アプリを使えば、乗るべき列車、最短、最安値の経路を瞬時に教えてくれる。
ミステリーにしても実際の事件にしても、昔と今では、謎解きの方法もすっかり様変わりしたものだなと思う。
今は防犯カメラの画像を解析して、犯人を特定することが多い。
DNA鑑定もぐんと精度が上がっている。
固定電話で、アリバイを証明、または工作するトリックなどは古臭くて、とても使えない。
地球上のどこにいてもGPSというもので追跡できる。
最先端の技術を使ったトリックも、やがて古びてしまう。
ドラマ『科捜研の女』は、その名の通り、科学的な捜査で事件を解決に導く。
現実には、全国津々浦々、科学捜査が行き渡っているわけでもなさそうだ。
不審死の司法解剖も地域格差があるという。
思いついたことをなんとなく羅列してみたけれど、先日最終回を迎えたドラマ『VIVANT』も、コンピュータやインターネット、画像の解析技術など、最新のテクノロジーを駆使して、目まぐるしく展開していった。
息吐く暇もないほどのスピード感。
スケールが大きく、見応えはあったけれど、途中で何度も置いていかれそうになった。
意外性を打ち出すあまり、強引なところや、ツッコミどころも多かったように思う。
やはりわたしとしては、刑事が靴底をすり減らし、人間の能力(脳力?)、推理力だけで事件を解決する、昔ながらの謎解きが性に合ってるようだ。
例えば『刑事コロンボ』みたいな。
*イラストは丸井もちさんにお借り
しました。
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