プロ意識
もう、再三こちらでも書いていますが、市の子育てサポートに登録し、地域のお子さんの子育てのお手伝いをしています。
事務局側は、あくまでもボランティアと強調されていますので、変なプロ意識は必要ないのかも知れませんが、最低賃金より安くても、金銭のやり取りが発生するからには、自分なりのプロ意識をもってやっています。
父が最期の闘病をする前から、月に一回のペースで実家のある広島に帰省していたので、なかなかアルバイトはできませんでした。
それでも何かできることはないかと、週一回、小学生の送迎をしていたことがあります。
お受験で有名な〇〇会のお仕事。
民間企業なので、面接もあり、座学の研修がしっかり行われました。
〇〇会は有名幼・小のお受験目的の進学塾で、入園前のお子さんを、ママの出勤前にご自宅に迎えに行き、直営の教室に送り届けて、託児も受験勉強もみっちりしてもらえるというシステムがあります。
働くママには無理といわれていたお受験ができるのです。
ベビーカーでの電車移動は難易度が高いので、わたしは小学一年生の送迎を希望しました。
まず小学校併設の学童にお迎えに行き、〇〇会の学童保育まで送り届けるというお仕事でした。
〇〇会の学童保育は、お稽古に行かなくても英語、絵画、ピアノ、体操、バレエなども習え、もちろんお勉強もしっかり指導してもらえます。
料金はべらぼうに高いらしく、医師や士業のお母さんが多いと聞きました。
私立小のお子さんが多かったようですが、わたしが担当したのは公立小の女児二人でした。
この仕事は、スーツを着ていかなければならないという決め事があり、ラメ入りや厚手の生地のスーツしか持っていなかったので娘の就活スーツを借りたりしていました。
どんなセレブのお嬢さんかなと緊張しましたが、ごく普通の無邪気な小学生でした。
20分ほど歩くのですが、文句をいうこともなく、しっかり歩いてくれます。
その間の会話は、研修で指導された通り、何かを一方的に教えてはならないという会独自の方針がありました。
季節の花が咲いていたら、
「あら、これ何のお花かしら?」
「この小鳥の鳴き声は…」
などとただ呟くのです。
そのあと「おうちに帰って図鑑で調べてみましょうね」などと続けるとなおよいと教わりましたが、なかなかそんな風にはいきません。
お子さんが一方的に喋り、
「昨日ね、誕生日だったんだよ。
パパはワイン飲んで、ママは酎ハイ飲んだの」
みたいな日常会話が中心になります。
わたしも会の方針に背いて、
「あ、チューリップが咲いてるよ」
などいってみたり、どこかの家の表札を指して、簡単な漢字を教えたり、フリートークをしていました。
たまに寄り道をしたがることもあり、「何時何分までに、着かなきゃいけないから、急ぎましょうね」
というと、
「じゃ、あと何分だね」
と即答できるのは、さすがに賢いお子さんだなと、感心しました。
道すがら、友達に会うと
「その人、だあれ?」
と聞かれますが、お子さんは慣れた口調で、
「シッターさんみたいなものだよ」
と答えます。
物心ついたときから、シッターさんにお世話になっていたんだろうなと想像しました。
時々、「もう、〇〇会に行きたくないんだよね」と洩らす日もあります。
「じゃあ、帰ってからお母さんに相談してみてね」
というしかありません。
お母さんが残業で遅くなっても、ここではシェフが作った夕食が提供されると聞きました。
稼げるママには、それなりの子育て法があるんだなと思いました。
いろいろ興味津々で面白かったのですが、わざわざ都内までスーツを着ていくのも面倒で、一年弱で仕事は辞めました。
近くでも似たような仕事はあるはずと探して、市の子育てサポートに辿り着きました。
今は障害のあるご兄弟の送迎や、お家での育児のお手伝いなどをしています。
分散してくれればいいのですが、同じ日に3件依頼が集中する曜日もあり、その日の夜はさすがに疲労困憊、バタンキューです。