芸能界の闇
NHKスペシャル『ジャニー喜多川 “アイドル帝国の実像”』 を観た。
(NHKプラスで10/27まで配信)
芸能界は魑魅魍魎が跋扈する世界…
かつてはそんなイメージが通り相場だった気がする。
今どきの人には、そんなダークなイメージはないのかもしれないが。
スターにしてやるからという甘い言葉をエサに、卑劣な行為は闇に葬られ、トップアイドルになるためにあまりに高い代償を払わされる。
少年たちにとっては、ジャニーさんは神様だった。
放送局は視聴率を、出版社は部数を伸ばすために、薄々知っていながら、正面から向き合おうとしなかった。
長年見て見ぬふりを決め込だ。
ジャニーズ事務所を敵に回すとしっぺ返しが恐ろしい。
フォーリーブスの北公次さんや豊川誕さんがこの問題を告発した記憶はある。
週刊文春の特集記事も読んだ。
1980年代後半から、次々と暴露本が出版された。
芸能界を去り精神を病んでしまった人もいる。
ジャニー喜多川氏は事務所を始める前、それまでお世話になった芸能事務所の社長に金銭問題で訴えられた。
その裁判で、初代ジャニーズ(1962〜67年まで活動)のメンバーも証言台に立ち、性加害について嘘の証言をさせられたという。
そんな頃から、噂があったことに驚く。
アメリカ時代の知人の証言で、メリー、ジャニーの姉弟の生い立ちや暮らしぶりも明かされる。
日本に戻ったジャニー氏は、ワシントンハイツ(戦後、アメリカ空軍とその家族のために代々木に建てられた住宅)に住み、少年たちを集めて野球チームを結成した。
その後、映画『ウエストサイド物語』に感銘を受け、こういうものがやりたい!と閃いたらしい。
姉のメリーと弟のジャニーの絆と役割分担。
知っていることもあったが初めて知る話も多かった。
日本の芸能界に厳然たる力を持つようになり、誰も暴走を止められなかった。
そして世界に比類ない大スキャンダルとなった。
英国の公共放送局BBCが去年の3月に世界に発信したことをきっかけに、事態は大きく動いた。
フォーリーブスのメンバー、江木俊夫さんは、「男の子を見る目が普通の人とは違い、人の何倍も肥えていたのでしょうね」と語る。
それは本能的なものなのでしょうね、と。
彼には、原石を見つけ出し、磨き輝かせるという特殊な能力があった。
それが性癖と結びついていたものだとすれば皮肉なことである。
発掘した少年をエンターティナーとして育てたら、あとは姉のメリーさんがひたすら売り込みをかける。
江木俊夫さんはきっぱりこういった。
世間がいうように、最低最悪、鬼畜だといわれればその通りかもしれません。
しかし、歌とダンスを教えてくれ、今の自分をつくってくれ、フォーリーブスという名前を永遠に残してくれたジャニーさんには感謝しかありません。
罪を憎んで人を憎まず?
人間とは複雑怪奇なものですね。
ジャニー喜多川がモンスターだったのか。
それを許した芸能界はやはり魔界だと思う。