使えない資格
なんの資格も取らなければ、文系の学生にとって、大学は暇過ぎるほど暇なところだ。
詰め込めば2〜3年で卒業出来そうだ。
わたしは社会科の教員免状を取ろうとしていたので、そこそこ忙しかった。
本当は教師になる気などさらさらないのに。
親友は図書館司書の資格取得を目指していた。
図書館に勤める気などさらさらないのに。
自分は教師より図書館勤めが向いていると気づいたときには時すでに遅し。
図書館司書は必修科目が矢鱈多い。
そのとき既に2年生だったので、教職と両方取得するのは日程的に無理だった。
なんか楽に取れる資格はないかなーとぼんやり考えていたら、博物館学芸員があった。
社会科の教職の必修科目とほとんど被っている。
博物館学と博物館実習とあと一つ二つ単位を取ればよさそうだ。
博物館学の最初の講義で担当教員から、
「まず最初に皆さんにお断りしておきますが、この資格を取っても就職先はありません」
薄笑いを浮かべながらキッパリ言い渡された。
学芸員として採用されるためには、膨大な知識や広範囲にわたる教養、突出した強みが求められるのだろう。
こちらとしても、枯れ木も山の賑わい的に、履歴書の空白を埋められればそれでいいかなという軽い気持ちだった。
最初にそんな発言があったものだから、講義は雑談中心の緩い内容だった。
博物館実習では手袋をはめて巻物の扱い方を習ったり、拓本をとったりした。
(拓本の実習は手や服が汚れそうなので欠席した)
4年生になってからは講義に出られない日も多く、救済措置として、博物館を見学してレポートを提出することで勘弁してもらった。
そのとき初めて行ったのが、渋谷の「たばこと塩の博物館」。
目黒寄生虫館、明治大学刑事博物館などもこのとき知った。
個人的に好きでよく行っていたのは、国立近代美術館とブリヂストン美術館だった。
雑学的な話は面白かった。
ほとんど忘れてしまったけれど、ものの数え方の単位(箪笥を一棹と数えるとか)、歌舞伎の難解な外題の読み方とか…
そして何より、簡単に取れる資格は使えないということを学んだ。
※2年前に書いたものを下書きから発掘しました。