【旅の話⑩】 カンボジア・バッタンバン 《言葉の通じない田舎のお宅で療養》
早朝にシェムリアップの宿を出て、宿のオーナーに昨夜教えてもらった道順の通りに、まだ人の少ない道を歩く。
長距離バスのターミナルへ向かった。
念のために30分余裕を持って出たけれど、無事に出発30分前に到着。これも念のため、バスのお腹に預ける荷物は最小限にしてドライバーに手渡し、乗り込めた。
空調は安定の極寒さ。頭上の4つの通気口をできるだけそっぽに向け、この旅で持ち歩いているいちばん分厚い上着を羽織る。
乗車してから半日ほど。隣のお兄さんは爆睡していたので、外を見ながらずっと考え事をしていた気がする。
バッタンバンは、シェムリアップとプノンペンのちょうど中間あたりにある小さな町で、地雷撤去の前線でも有名なところ。
Googleマップで位置や大体の規模は確認していたものの、あとは何も情報なし。
プノンペンで会う予定にしているカンボジア水泳代表チームのヘッドコーチ(当時)、沖田咲ちゃんから
「教えてる選手の実家がバッタンバンで、よかったらホームステイできるよ!」
と有難いオファーをもらって、お邪魔させてもらうことにしたのだった。
当の選手リカルドくんはプノンペンで訓練中で不在やけど、家族に言っとくから大丈夫とのこと。
家族と対面
降ろされた見知らぬ土地バッタンバンのバス停は、シェムリアップよりも砂っぽくて殺風景だった。
顔も知らないリカルドファミリーとの直接の連絡手段がゼロなので、やや不安もありながらしばらく待つ。
でも不思議と、旅中のこういう場面ではどれだけ先行き不透明でも比較的落ち着いていられる。
身の安全にだけできる限りアンテナをぶっ立てとけば、あとは来る波に乗ればいいからむしろ楽、なんてことを思う。
と、男性に話しかけられた。
英語が一切通じなかったので、絵に描いたような全身を使った身振り手振りでお互いコミュニケーションを取ろうと頑張る。
どうやら、リカルドくんの家族らしい。
***
バイクを指差したので、後ろに乗る。初めて見るバッタンバンの砂色の街並みを走り出した。
一応良く知らない人のバイクに乗るので緊張感はそのまま、でも彼の背中からいい人感が伝わってきて、力は抜いていられた。
が、さっきから何となく体がおかしい気がする。熱?
到着、体調くずれる
景色から砂利道以外の人工物が無くなって、ザ・田舎に。
着いた!
それはもう、めちゃくちゃ温かそうな一家が迎えてくれた。
ご両親に兄弟姉妹に赤ちゃん、牛や鶏も生活の境界線なく、一緒に暮らしてる。
英語を話す人はやっぱり誰もいなかったので、引き続き全力で身振り手振り。
さあ、お世話になるからには何でも手伝いするで!と張り切りたいところだったけれど、
このタイミングで本格的に体調が悪くなってきた。
ふらふらして、頭が痛い。。
お昼ご飯も作ってくれていたのに、着いて早々体調が悪くて寝かせてほしいと伝えるのが申し訳ないのと、伝わってるかわからないのと、体がキツいので頭がこんがらがった。
精一杯誠意を伝えようと奮闘して、荷物だけ何とか二階に運んでから、このハンモックで横になり即寝。
生活を体感
起きたら、夕方になっていた。
まだ何も食べる気にはなれなかったけれど、体は、だいぶ楽になった。
歩き回れる。お腹を下してる訳でもなかったので、食中毒とかでもなさそう。単純に疲れかな、と思う。
心配してお姉さんが見にきてくれて、大丈夫と手振りで伝える。
お姉さんがやってるらしい畑(何かわからない野菜が沢山)を見に行ったり、
お兄さんと少し稲刈りしたり
弟とひとしきり遊んだりしてゆっくり過ごさせてもらった。
晩飯作りは手伝ったけど、食べるのは体調的に断念。(無念...)
電球はつくけど、電気器具やガス、水道は無かった。
お母さんは基本は黙々と作ってて、たまにこっちの様子を気にしてくれる。静かに、けど虫の声は大音量の中、料理した。
ご飯の時間にはもう寝かせてもらった。
いくらでも寝れる。
フィジーを出てから6箇所目、ノンストップで来てたので、休めという体の声だと思う。
タイミングもこの家で、家族の安心感の中で寝かせてもらえてよかった。いやー、世界は良くできてる。
(お邪魔して寝てばっかりで、コミュニケーションが頑張れないことには残念な気持ちが募る...)
出発
翌朝、体感的にはほぼ全快になっていた。
体で表現できる限りのお礼と(ほんま、しきれん)、ハグをして、バス停まで送ってもらった。
バス停横の商店にWiFiがあって、咲ちゃんとリカルドにお礼を送った。リカルドファミリーのおかげで、体は大丈夫そう。
カンボジアのバスにも慣れてきた。
いくつかサービスエリア的なところを経由して(シェムリアップの朝以来の食事)、
一路、首都のプノンペンへ。プノンペンも、今回が初めて。
***
↓全く知らなかった、カンボジアのスポーツ事情と沖田咲ちゃんの生き様に触れた話につづく。