人間の価値
当たり前に感じる人が大半だと思うが、
人間の価値なんて
そう簡単に変わるものではない。
例えば、
年収 800 万円の人は
それに見合う能力があるはずで
会社を辞めたところで価値は同じはずだ。
勿論、例外もあるだろう。
生涯で一つの会社だけという場合は、
旧い年功序列が残っていて
能力以上の昇給があったりする。
また、
会社の創業メンバーだったりすると
後から入った人よりも有利な立場だったりする。
ところが、
私の場合、そういうケースとは異なる。
市販の履歴書に書ききれない程の
職歴がある。
つまり、
幾つもの会社に採用された実績がある。
テレビ業界における私の経歴に
文句を言える人は
それ程いないはずだ。
しかし、
右肩上がりの時代が終わり、
テレビ業界も事情が変わってきた。
かつては経験や知識を持つベテランが好まれ、
ギャラの安い若手は「小僧」などと呼ばれていた。
それが良い風潮だとは言わないが、
能力に基づく序列があった。
気がつくと
高い能力なんて誰も求めなくなっていた。
機材がアナログからデジタルに移行したことで
システムにかかるコストが大幅に軽減し、
作業時間が短縮され、
何度でもやり直しができるようになった。
そもそも質の高い番組作りなんて
どうでも良くなってしまっているようだ。
東京のいわゆるキー局は
もう半世紀以上も新規参入がない。
ある意味で競争をする必要がない。
外資のCSチャンネルにいたため、
そんな由々しき事態に気付いていなかった。
求人広告を見て応募しても返事すらもらえない。
初めて経験するハローワーク。
私の年齢を考えると、
希望の年収は 400 万円が限界と言われた。
個人の能力なんて
誰も評価の対象になんかしていない。
スーパーの惣菜売り場に並べられて
「半額」のシールを貼られた気分だ。
言われた条件に沿って応募しても
面接すらしてもらえないし、
不採用の通知すら省かれてしまう。
何だよコレ?
私という人間の価値は
あっという間に消滅してしまった。
マジで途方に暮れた。
元の業界に戻れない。
衝撃的すぎる現実だった。