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看護学生が考える 医療×ワクワクの形とは

SEEDsファイナリスト 猪村真由さんインタビュー

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KBCの一大プロジェクトであり、国内最大級・学生団体初のオンラインビジネスコンテスト”SEEDs”。このビジコンで<The Art>という事業を提案し、見事ファイナリストに選ばれた猪村真由さんは、現在慶應義塾大学看護医療学部に通う2年生で、KBCの16期メンバーとしても活動されています。今回はそんな猪村さんから事業への想いやSEEDsについてお聞きしました!

 <取材・編集 KBC16期 河井彩花>

ー現在の<The Art>の事業案について簡単に教えてください。

<The Art>は、長期療養中の子どもたちが、「ワクワク探しの旅にでる」ということをコンセプトにしたオンラインサービスです。

長期療養中の子どもたちは、病院という閉鎖的で社会的に孤立した環境におかれています。そんな子どもたちに、自分の可能性に気がつくきっかけを与えたい、病気にとらわれずに生きる希望の光を与えたい、という思いからこの事業案を考えました。オンラインサービスであれば、病院内の子どもたちも、お家にいる子どもたちも、平等に利用できることから、オンラインという形でこの課題を解決しようと思っています。

ーこの事業を始めようと思った理由は何ですか。

ひとつめは、NPOの活動を通じて、NPOの限界とビジネスの可能性に気がついたことです。私自身が看護学生であり、長期療養中の子どもたちに興味があって、NPOで活動をしてきました。その中で気がついたのは、NPOの活動に興味のある方はボランティアとして関わってくれるけれど、興味のない人は巻きこみにくい、活動するには多額の寄付に頼らなければならない、というNPOの特徴です。それは、NPOのよさでもあり欠点でもあるのですが、自分は無関心期から関心期に変わるきっかけに何か影響を与えられるような存在になりたい、一般ユーザー(病気ではない子どもたち)を巻き込める形で何か事業を起こして関わっていきたいと思い、今回の企画をしました。


ふたつめは、私が10歳の時に体験した、障害や病気をもつ子どもたちとのダンスの経験です。幼い頃からダンスやミュージカルなど芸事をしてきた私にとって、芸術は全ての子どもたちにとって平等に開かれたものであり、それぞれの可能性を引き出す特別な存在であることを実感してきました。だからこそ、ただ「ダンスが好き!」「歌が好き!」というワクワクを追求して生きていた、あの日の子どもたちのように、何かに夢中になって病気や障害を乗り越えられるきっかけを届けられればいいなと思い、現在の案にたどり着きました。

ー事業案を考えていたときのエピソードがあったら教えてください。

まず長期療養中の子どもたちの視点を得ようということで、学校での実習や、インターンでの経験を生かして、院内にいる子供達の感情に自分がなってみるというところから始めました。そのときに人と会えない寂しさだったり、誰かと繋がりを感じたいという気持ちがすごく自分の中で大きいということに気がつきました。

またコロナによって、実際に長期の外出自粛を経験し、外に出ることも、友達と会うこともできないという状況が続き、私はもちろん、社会全体が、ストレスや閉塞感、孤独感を抱いていたと思います。でも、この環境というのは入院中の子どもたちにとってはすごく当たり前のことなんだということを痛感しました。ここで得た視点は、コロナによる外出自粛を経験しなければ気づかなかったことです。今回、私たちが感じた感情を次に生かすことで、もっと病院内にいる子どもたちに寄り添うことができるようになると思ったので、そのような意味でコロナの影響は大きかったなというふうに思います。

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ーSEEDsに参加したきっかけは何ですか。

私がSEEDsに参加しようと思ったのは、提出締め切り日の午後6時だったんです。それまで私はNPOでのインターンで「誰かのもとで何かをする」という経験はしてきたのですが、自分から活動を作ったり、思いを形にするということはしたことがなく、する勇気もありませんでした。まだ勉強期間であり、形にするのはもう少し時間が経ってからでいいかなと思い、先延ばしにしようと思っていたのですが、KBCメンバーに「想いがあるなら、とりあえず言葉にしてみるだけでも自分の経験になるから、書類だけ出してみようよ」と言われて、軽い気持ちでまず400字を6時間で書き上げました。その時は、まさかファイナリストに選ばれるとは思ってもいませんでしたが、今では応募して本当によかったなと感じています。

ー事業を進めていく中でうまくいったこと、うまくいかなかったことを教えてください。

うまくいかなかった点としては、自分の作りたい世界観とビジネスというものをすり合わせるのがすごく難しかったなというふうに感じています。みんなは、理想のビジネスモデルや、関心のある社会課題に対する解決策が明確だからこそ、ビジネスコンテストというもので勝負しようという思考回路で挑んでるのだと思います。しかし、私の中では具体的にこういうことでお金を稼ぎたいということはなく、まずは子どもたちが自分らしく病気にとらわれないで輝ける世界を作りたいという想いがベースにありました。その中で自分は子どもたちのエネルギーを引き出す関わりをしようということは決めていたのですが、それを実際にどういうビジネスにしていくのか、という点において一番の苦労がありました。

うまくいった点としては、最初に構想した自分が作りたい世界や、自分の想いというものは全く変わっていない、むしろ強くなっているということを自信を持って言い切れることです。私の中でビジネスというものはある種、手段に過ぎません。自分の理想とする世界観をどうやって具体的に扱い、実現していくかということに力を入れて取り組み、日々レベルアップさせていくことができていると思います。

ー大学生活と事業の準備を同時に進めるにあたって、大変だったことはありますか。

学校の課題と事業の準備をするために、時間をやりくりするのが難しかったです。このSEEDsに向けて準備することがとても楽しく、毎日自分の気持ちが形になっていくことを実感すると、どんどんやりたいことが増えていきました。たくさん本を読んで言語化して、いろんな人と電話して、というふうに生活していたら自分が看護学生であることを忘れていて、そう言えば私、看護学生だったなって(笑)。看護医療学部は現在オンライン授業で、課題は郵便で家に届く仕組みなのですが、届くまで本当に忘れてて、提出期限ギリギリで頑張っています。SEEDsの山場と提出物の山場が重なったということもあって、看護学生としての勉強に怠惰な気持ちが生まれそうになったこともありました。しかし、このビジネスや事業内容考えていく中で、自分が看護学生であるっていうことは譲れないポイントであり、常に看護での学びのなかに事業ヒントがあると考えているので、学業はしっかり力を入れよう、授業も頑張ろうというふうに思っています。

(ライターのコメント)取材中に見せてもらった「ひとりじゃないよ」、「電池が切れるまで」という猪村さんおすすめの本にはたくさんの付箋が貼ってあり、猪村さんの勉強に対する熱量を感じました。忙しい中でも、子どもたちに寄り添うことを第一に考えている姿に心を打たれました。

ー猪村さんは現在、看護医療学部の2年生ですが、残りの学生生活で成し遂げたいことは何ですか。

現在、自分自身が看護師になるかどうかというところですごく悩んでいて、将来的に看護師として子どもたちと関わっていくのか、それとも他の観点から社会の中で関わっていくのかというところが自分の中でも課題だなというふうに思っています。残りの学生生活で、まずは自分のよさが生かせるのはどういう立ち振る舞いなのかということを明確にしていきたいなと思います。そもそも私は、他分野と医療との応用という領域に自分の価値を見出したいという思いから慶應の看護医療学部に進学することを決めました。だから、看護学生として、sfcの学生として、何か医療とのイノべーションを起こせる存在でありたいと思っています。

また、自分という存在が誰かの生きがいになったり、誰かのエネルギーを引き出してあげられるような関わりができる人間でいたいなということは常々思っています。私が相手に何かを与えるわけではなくて、私との関わりの中で新しい自分の可能性を見つけていく、そのようなエネルギーを引き出してあげられる存在になっていきたいです。

ー最後に、6月21日に行われる最終ピッチに向けて、一言お願いします!

まずは、ピッチを通して「猪村真由」という存在を知って欲しいです。看護学生である私がこの事業をする意味を伝えていけたらいいなと思っています。私の作りたい世界に共感してくれる人を増やすために、自分の素直な想いを届けたいです。

そして、SEEDsの運営やKBCのメンバーのみなさんへの感謝を伝えたいです。本当にありがとうございました。空白の2ヶ月になるのかなと不安に思いつつ始まった自粛期間ではありますが、KBCのメンバーの一言でSEEDsに取り組むことができて、自分の思いを形にできたこと、そして私自身がこれほど成長できたことは、本当に貴重な経験だったと感じています。

最後にKBC内部に向けたメッセージになってしまいますが、こうやってインタビューをしてくれたり、議事録をとってくれたりする、KBCのみんながいるからこそ、ここまで来ることができました。本当にありがとう。KBCでの出会いに感謝し、お礼の気持ちもかけて最後、頑張りたいなって思います。

(ライターのコメント)取材中、猪村さんはひとつひとつの質問にまっすぐに向き合ってくださり、キラキラした表情で想いを語ってくれる姿が印象的でした。授業や課題、アルバイトに追われつつも、精力的に、また誠実に、事業に取り組む猪村さんの行動力はすばらしく、同じ学生として、そして同じKBCメンバーとして、本当に尊敬しています。猪村さんに出会えてよかった、そう思えるインタビューでした。
ファイナルピッチでも、他者への思いやりを忘れない猪村さんの、キュートな魅力に夢中になること間違いなしです!応援しています。ありがとうございました。

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<SEEDsファイナルピッチ情報>                     

6月21日(日) 14:00~17:00 開催!

配信はYouTubeにて。チャンネルはこちら▷https://www.youtube.com/channel/UCsWO4qx0qJ4ynJzwdQz9pbQ


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