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マガジン

  • 桜漂流記

    初めて書いた小説の無料部分です。万が一続きを読みたいと思って頂けた方がいたら、ご購入いただけたら嬉しいです。

  • 天使の抹茶ラテと悪魔の落書き

    二作目の無料部分です。万が一、続きが読みたいと思って頂ける方がいらっしゃいましたら、ご購入頂きたく存じます。

最近の記事

【短編】宙ぶらる

「ちょうどヒロインとくっつくところだったんですよ僕は!」 「あたしは二十億のお金を手にする寸前だったわ」 「僕なんて自己紹介したっきりですよ……」 あるところに、途中まで作られて放置された物語の人物達が集まる世界があった。  彼らは中途半端に作っては無責任に放置する人間たちへの報復を企てた。 「俺達は戦車も銃も用意できるぜ!」 「SF物の連中も呼んで来い!」 「兵器の数も、性能も俺たちの方が上だ!」 「今こそ自分勝手な人間たちを皆殺しにし、我らの物語にエンドマークを刻むのだ

    • 【短編】憧れた世界

       布団の中で目を開ける。  部屋を見渡して時計を見た。そして自分の両手を見る。完璧だ。僕は悪魔と取引して、ついに念願だった二次元アニメの世界の住人になった。  前の世界ではうだつの上がらない中年だった僕は、この新しい世界ではまだフレッシュな高校一年生だ。  前の世界とは違い、顔もそこそこ格好よく、身長も平均より少し高い。とりたてて目立つキャラではないが、口がうまく、なぜか女の子にモテていくといった設定だろう。  喜びに包まれながらうとうとまどろんでいると、隣に住む幼馴

      • 【短編】夜道の女の子

         自分が普通ではないのを自覚したときには、既に鬱積した欲望が体の中から溢れようとしていた。普通なら、普通の人ならば、こうした歪んだ欲望があっても何らかの回路によって抑制できるのだろう。私には不可能だった。きっと頭が故障しているのだろう。こんなにも純粋で美しく魅惑的な欲望を抑制して生きていくなんて、死んでいるのと同じだ。私は殺したい。人を殺したい。命が消えてゆく瞬間を、匂いを感じたい。  欲望を満たす為に、私が最初に行った事は道を探すという事だった。 できれば、獲物は弱い個

        • 【短編】世界の中心は

           その死神はこの世界でもっとも若い死神だった。  年上の死神達から言葉を学び、空の飛び方を教わり、人の魂の狩り方を教わり、魂の食べ方を教わり、ついに先日一人立ちをしたばかりだった。  死神は空を飛んでいた。地上を見ながら、風に乗って飛ぶのは気持ちが良かった。森の上を飛び、様々な木々や動物たちの息吹を感じた。大きな川をなぞるように飛び、巨大な滝に出来た虹のアーチをいくつもくぐった。鳥達と列を組み、鳴き声を真似て遊んだ。  若い死神はこの世界の美しい風景が好きだと感じた。そ

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        • 天使の抹茶ラテと悪魔の落書き
          15本
        • 桜漂流記
          17本

        記事

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉛

          【終わりの始まりⅫ】 「見捨てた! 見捨てた! 見捨てた!」 「待ってたじゃない」 「一生怨む一生!」 「アハハ。大丈夫だよ。もうすぐその一生終わるし」 タクローを睨むが、腹の底に沈澱していた恐怖が再び舞い上がる。 「あ、ゴメンゴメン終わるかもしれないしアハハ」 「全然フォローになってませんけどおお」 スピードを落とし、慎重にカーブを曲がる。道は緩やかな下りになっているが、カーブは急で朝日にキラキラ光る海が下に見えた。 ガードレールがあるにはあるが、ひやひやする高さである。

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          【終わりの始まりⅪ】 【小岩井宏美】  風に一度溶けてしまったような声だった。 目を凝らして、少しずつすくい取るように僕はその声を聞く。 「たけちゃん!」 「あのバカ野郎。人と話をする時は目を見て話せって言ったのは自分だろうが……」 良かった。タケチャンにも聞こえているようだ。 言葉はほとんど聞き取れなかったけれど、心に染み入っていくように栄二さんの声が届いていた。どこから聞こえているのか解らない。上なのか下なのかすぐ側からなのか。いつもの優しい声だった。 「正しくいら

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          【終わりの始まりⅩ】  トキエが昭吾に口づけをした瞬間、女性と昭吾はその場に崩れ落ちた。 昭吾の背中にしがみつく男は煙の様に消えた。まさしく煙の様に一瞬で気体になって消えたように見えた。  微かに聞こえる潮騒と風にざわめく葉の音が辺りを包んだ。 「え? 二人とも死んじゃった?」 タクローの声が後ろから聞こえた。裕也は右手に握りしめたままだったメモを覗く。  汚い文字で、漢字をど忘れしたからと平仮名で書かれた「こえがとどきますように」という文字は滲んでいなかった。 タクロ

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          【終わりの始まりⅨ】  トキエの涙に濡れた声が辺りに響いていた。  きっと、あの小さな交差点で車に潰され、死んだ事に気付いたその瞬間から裕也と話しをするまで。死してなお、意思を持ち続ける為に、想いを伝える為に、定めた目的が復讐だったのではないだろうか。 「一緒に居たかった」  復讐という理由をつけて、本当に伝えたかった事を伝えようとしたんじゃないだろうか。  鳴き声が聞こえなくなっても、昭吾という男はトキエを優しく抱いていた。 「おい。すまなかったな」 突然、男が声を

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          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉗

          【終わりの始まりⅧ】  車を降りた僕等を迎えたのは眉毛の濃い初老の男だった。 怪訝な表情がポルシェのヘッドライトに歪んでいる。 「やっぱり……タクローさんじゃないですか! どうしてこんな所に……」 事情をどうやって説明しようか考えていた裕也は驚いてタクローを見る。 「やぁやぁ。偶然!」タクローは裕也を見て、失礼にも初老の男性に指を向けて言う「モルシェくれた人」 男性は裕也を一瞥するも、タクローへ近づいた。一応頭を下げた裕也は無視された。頭を上げた裕也が男性を見て再び驚いたの

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉗

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉖

          【関之尾武雄と小岩井宏美とその他2人~終わりの始まりⅦ~】  僕があまり喋らない事も関係しているだろうけれど、タケチャンは縛られている二人と楽しそうに話しをしていた。足に怪我をしている(タケチャンが刺したのだが)男が下尾。耳から血を流している男が上村と言うらしい。大河原組の上下コンビと名を馳せ、幹部の一角を担いたいらしい。が、実際は雑用しかやらせて貰えず、ついに来た今回の仕事らしい仕事にはかなり気合いを入れて挑んでいたようだ。 「あーそうかー。じゃあダメだな。残念だったな」

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉖

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉕

          【終わりの始まりⅥ】  しばらく車を走らせると、二車線の道に出た。車の中はオープンカーとまではいかないまでも、冷たい風が吹き抜けていて裕也は寒さに肩を縮めていた。 「あーはいはい。この道ね」 トキエの見知った道らしく、先ほどの道に戻ることなく元々の目的地に車を走らせることが出来るらしい。舗装された道で、ラーメン屋や土産屋がぽつりぽつりとあるような道だった。 「お腹空いたねー」 運転しているタクローがこぼす。 「どこかに寄りましょう。後ろの窓どうにかしないと僕は凍死します」

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉕

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          【関之尾武雄と小岩井宏美~終わりの始まりⅤ~】  ざわざわと近くの林の木々が騒ぎはじめると、ひときわ強い風が吹き抜けた。都会で感じるよりも数段冷たいその風は、ヘッドライトの届かない闇へと消えていった。道幅は極端に狭い。田んぼや畑に囲まれていて、車道というよりもあぜ道に近い。エンジンを止めた車のヘッドライトは僕達と切通組の車を照らしている。  定期的に男の呻き声が聞こえてくる。タケチャンが暴れているからだ。すでに相手の男は動いていない。タケチャンが突っ伏した男の髪の毛を掴み上

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          【終わりの始まりⅣ】 「わー! わー! やっぱり追って来てるよー裕也!」 「なんであんたそんなに楽しそうなんですか!」 トキエは助手席から後ろの車を見て喜々としていた。 「だって裕也の映画の話と同じじゃない! こんなことってあるんだねぇ」 「あるわけないでしょ。たまたま行く方向が一緒なだけですよ」 「じゃあ次曲がってみようよ」 トキエがタクローに同意を求めるように言うがタクローは黙って運転している。その横顔には能面の様な笑みもない。 「暗いんですから道わからなくなりますよ」

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          【関之尾武雄と小岩井宏美~終わりの始まりⅢ~】  車は郊外を走っている。郊外とは言っても、都心からそれほど離れていないので車の数はそこそこある。まだ大丈夫だろう。 助手席のタケチャンはシートを深く倒し、タバコを吸っている。 きっと栄二さんの事を考えているのだろう。 「腹減ったな」 違った。 「なんか買っときゃよかったなぁ」 運転するボクを見ながら吸っていたタバコを灰皿へと突っ込んだ。 ボクのお腹が音を立てた。 「はっはっは! 可愛い音だなおい!」 ボクは恥ずかしくて何も言え

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉒

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉑

          【終わりの始まり】  夜12時。タクローのよそ行きだという香水の香りが充満した車で例の交差点に向かう。車内で、もうすぐ死ぬ人しかこの店は見えないという噂をアヤノさんにされた事を聞いた。 「あの店も長くやってるからねー。変な噂が出ても仕方ないよねー。え? 死ぬのかって? ばかだなぁゆうちゃんは。それじゃボクがまるで死神みたいじゃないかー」 「いや、でも変な力持ってるし……」 「言ったでしょー。リピーターが多いってー。死んだらリピーターに慣れないでしょうが」 タクローの能面のよ

          天使の抹茶ラテと悪魔の落書き㉑

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          【本屋で昼食とアヤノさんとの会話】  いつもの定位置であるテーブルにクーゼで買ってきた食べ物を広げる。かなりの量だった。 「ひょ~どれがアヤタンが握ってくれたおにぎりかな~」 「あんたの対応でずっとレジにいたでしょうが」 「じゃあミエタンが握ってくれたのどれかなー」 「全部だと思って食べなさい」 タクローより先に裕也がおにぎりを口に運ぶ。 「あ! おかかチーズ盗られた!」 タクローが騒ぐのを無視して食べる。おそらくお店のメニューを全て一個ずつ注文したのだろう。 「この店のお

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