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虚誕解説 Part2(Never7 Loop1)

この解説は、以下のinfinityシリーズのネタバレを含みます。
以下の作品をプレイしたことのない方は、解説をご覧になる前にプレイすることをお勧めします。
なお、このマガジンでは、Ever17についてXBox版の内容を含みません。

  • Never7 -the end of infinity- 

  • Ever17 -the out of infinity-

CURE.

キュレイシンドロームは、感応精神病の類型です。
感応精神病には、複数人の間で妄想が伝播するという特徴があり、キュレイシンドロームの第1と第2の特徴はその範疇に収まります。
キュレイシンドロームが感応精神病と区別されるのは、第3の特徴である妄想の現実化が所以です。

現実化の対象となる妄想には、現実だと信じるだけの妥当性と理想性が含まれている必要があります。
infinityシリーズでは、キュレイシンドロームが存在することで、常識では説明することが困難な奇跡的な現象を、妥当性と理想性を基準にして論ずることが出来ます。
作中の精神科医であるキャビン博士の仮説によると、宗教的な奇跡もキュレイシンドロームによって引き起こされたと考えられています。
本編で神話や伝説のモチーフが登場した時には、キュレイシンドロームとの関係を考えると、よりinfinityシリーズへの理解を深めることに繋がります。

『妄想が人から人へと伝播する症状を、ある種の感応精神病として定義するならば、その精神疾患における妄想内容とは、ひとつの生物にたとえることができる』
『ひとりの人間の中に、突然変異によって生み出されたこの生物は、それが存在することの妥当性と、存在して欲しいと願う人々の意思を糧として、次から次へと人々の意識の中に繁殖していくものなのかもしれない』
『従って、この生物が生まれたときの時代背景に相応しい妥当性と、人々の願望……この2つが強大であればあるほど、その生命力もまた激しさを増していくのである』
『ところで、この生物が繁殖する過程において、最大の天敵となるものは常識である』
『常識を淘汰するだけの生命力を持ち得たとき、初めてこの生物は新たな現実として姿を現す』
『或いは、世界各地に伝わる宗教的奇跡も、この生物の胎動として見ることができるのではなかろうか?』
『人々の意識(妥当性による信頼感と強い願望)が、この生物を現実のものとして生み出した』
『強固な思念(妄想)は、新たな現実を創造することができるのかもしれない』

Never7 -the end of infinity-
いづみキュアルート2週 3日目 第3の特徴

[補足]作家論的な視点では、奇跡を単なるご都合主義にしないための宣言とも受け取れます。
トリックに目が行きがちですが、奇跡が望まれるようになった経緯の描き方も注目すべきポイントです。

メタフィクション

第3の特徴の説明時にシュレディンガーの猫が引き合いに出されます。
これは選択肢も第3の特徴の表現であることを示唆しており、当事者の誠だけでなく俯瞰者のBW(あるいはプレイヤー)もキュレイシンドロームを発症していることを意味します。
つまり、選択肢は俯瞰者が可能性の中から最も妥当性と理想性のあるものを選択していることになります。
この時の選択は、俯瞰者にとっては多世界解釈的ですが、当事者にとってはコペンハーゲン解釈的であり、事象の収縮によって他の可能性は存在しなかったことになります。

事象の収縮

例えば、Ever17ではBWが召喚されなければゲーム開始時点の状況にならないため、ココルート以外では矛盾が生じます。
(実際、BWはココルートの途中で矛盾に気付き、タイムパラドックスの起きる世界を妄想しています)
しかし、BWがその矛盾に気付けるのは、統合BWとなるココルートだけであり、他のルートでは事象の収縮によって矛盾が起きる状況がそもそも存在しなかったことになるため、タイムパラドックスは発生しません。
infinityシリーズの選択肢は、選択肢時点の現在や未来だけでなく、過去も選択しているのです。

選択肢以外にも、infinityシリーズのゲームシステムは、キュレイシンドローム関連の現象で説明出来ます。
例えば、妄想の伝播はルート分岐、追想はゲームのスタートやロードと一致します。
また、より理想的な世界を目指し、それを実現するというゲームの構造自体がキュレイシンドロームに裏付けされています。

BWがプレイヤーを概念化したものであるとすれば、キュレイシンドロームはゲーム性を概念化したものであるといえます。
こうしたメタ的な側面は本編では語られず、プレイヤー視点で気付けるようになっています。

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