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虚誕解説 Part3(Never7 Loop2)

この解説は、以下のinfinityシリーズのネタバレを含みます。
以下の作品をプレイしたことのない方は、解説をご覧になる前にプレイすることをお勧めします。
なお、このマガジンでは、Ever17についてXBox版の内容を含みません。

  • Never7 -the end of infinity- 

  • Ever17 -the out of infinity-

キュレイ空間

キュレイシンドロームを発症する時、現実化する妄想が1つの世界を形作ることがあります。
これをキュレイ空間と呼ぶこととします。

Never7では、全て誠のキュレイ空間の出来事だったことが真相として明かされます。
その発端はキュレイシンドロームの存在を否定するための反証実験計画でした。
キュレイ空間は、それ自体が第3の特徴によって現実化する妄想です。
そのため、現実化するための妥当性と理想性が必要になります。
infinityシリーズは、Never7の計画(黒幕が協力者と共に主人公を騙す構造)を踏襲することで、他の作品でも暗黙的にキュレイ空間が作られていると解釈出来るようになっています。

計画では、作品ごとにタイムスリップを実現する特殊な概念が現実化します。
タイムスリップを利用してキュレイ空間をループすることで、主人公とBWの理想の大団円――infinityシリーズにおける結末――グランドフィナーレを目指すことが可能になります。

[補足]タイムスリップを実際に行っていると解釈すれば、同じキュレイ空間を使い回すことになり、循環的ループになります。
一方、追想していると解釈すれば、キュレイ空間内で更にキュレイ空間を作り出すことになり、再帰的ループになります。
また、ループをPart1のように並行世界として捉えることも可能です。

再帰的ループ

因果のループ

タイムスリップを現実化することで重要な点は、因果のループが発生することです。
本編はn番目のループであり、ループの起点ではありません。
n番目のループは、n-1番目から生み出され、n+1番目を生み出す可能性が存在します。
こうして、キュレイ空間の現実化の条件が外部に求められることなく、自己言及的に満たされます。

[補足]ループが成立した経緯は、未定義であることに注意が必要です。
繰り返しますが、本編はn番目のループであり、起点は描かれていません。
仮に起点が存在したとしても、本編のキュレイ空間で上書きされるので存在しないのと同じことです。

ループにおいて、ネックになるのが記憶です。
ループ途中の状態なら、キュレイ空間の出来事をすでに経験しているはずであり、ゲームスタート時の状態と矛盾します。
これを解決するために、スタート地点では記憶の初期化が行われます。
なお、細部に関しては、作品ごとに説明が異なります。

[補足]初期化された記憶は、初見時のプレイヤーのものとほぼ同等です。
記憶の初期化は、主人公とプレイヤーの同一化を図るための仕掛けという側面もあります。

虚構と現実

主人公のキュレイ空間は、BWによって俯瞰されます。
キュレイ空間が妄想なら、それを追体験するのは妄想の伝播です。
つまり、infinityシリーズは、それぞれの作品の主人公の妄想が伝播したBWのキュレイ空間であると解釈することが出来ます。
更に言えば、メタ的な側面ではBWはプレイヤーそのものですから、プレイヤーの意識上に浮かぶ物語空間もキュレイ空間の一形態であると言えます。

文学用語に、不信の停止というのがあります。
フィクションを現実であるかのように受け入れ、のめり込む様子のことを言います。
infinityシリーズのようなメタフィクションは、ともすれば現実のことを思い返すことになりがちです。
それを防ぐために、キュレイシンドロームは、ゲームの世界やプレイヤーの介入を概念化してフィクションに巻き込みます。
こうした発想は、プレイヤーそのものをフィクションに巻き込むBWと地続きです。
Never7は、infinityシリーズ(あるいは打越・中澤作品)のメタフィクションの方向性を決めた作品と言えます。


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