虚誕解説 Part8(Remember11 Loop3)
この解説は、以下のinfinityシリーズのネタバレを含みます。
以下の作品をプレイしたことのない方は、解説をご覧になる前にプレイすることをお勧めします。
なお、このマガジンでは、Ever17についてXBox版の内容を含みません。
Never7 -the end of infinity-
Ever17 -the out of infinity-
Remember11 -the age of infinity-
ココロとサトル
Ever17のBWは、2034年のLeMUを2017年であるかのように見せかけることでホクトの肉体に召喚されました。
それと同様のことが悟に起きたとすれば、サトル編の空間はココロ編の空間であると見せかけられたと推測出来ます。
以後、それぞれの空間をサトル空間、ココロ空間と呼ぶこととします。
上の図は、劇中で説明された時空間転移を表しています。
背景の色は場所を表しており、赤が朱倉岳、青が青鷺島、緑が穂樽日鉱山跡です。
人物のイラストは、それぞれこころ、悟、胎児αを表します。
2つずつ用意されており、サークルの外側が人格、内側が肉体を表します。
時空間転移は、サークルの範囲がそれぞれの場所を時計回りに転移します。
ただし、例外としてイラストの人物(と穂鳥、犬伏、胎児β)は意識が場所に留まります。
本来、人格はサークル内に位置すべきですが、場所との対応を重視してサークルの外側に配置しています。
さて、図を見れば分かる通り、劇中の説明が正しければ、必ず朱倉岳には青鷺島からサークルが転移してくるはずです。
人格に注目すれば、ココロ編の出来事はサトル編の対応する出来事と常に連続することになります。
もし連続性がない箇所があれば、劇中の時空間転移の説明には嘘が混ざっており、ココロ空間とサトル空間は別空間であるといえます。
筆者が確認したところ、2つ繋がりがおかしい場面を発見しました。
これらの反例により、少なくともココロ空間とサトル空間は別空間ということになります。
1つ目は、2日目のスフィアのネズミの死骸の場面です。
サトル空間では、犬伏が瀕死のネズミに止めを刺します。
この時、内海とゆにはその場にいません。
一方、ココロ空間では、ネズミの死骸の情報が、こころを除いた全員に共有されています。
特に、穂鳥はこころと同じく時空間転移の例外であるにも関わらず、何故かネズミの死骸を既知のものとして扱っています。
2つ目は、3日目のスフィアの場面です。
サトル空間では、ゆにが悟に対して呼び掛けながら近付いてきます。
ココロ空間では、逆にこころから遠ざかっていきます。
[補足]ココロ空間とサトル空間が別空間であるということは、それぞれの3地点も別空間であることになります。
3地点を三角形に見立てた時、2つの三角形でダビデの星(六芒星・籠目)を形作ることが出来ます。
更に、α空間が存在すると仮定すると、3つの三角形によりソロモンの星(五芒星)を形作ることが出来ます。
これは異次元体を封印するための独立した世界――Remember11の舞台を象徴します。
協力者
サトル空間をココロ空間に見せかけるには、協力者の誘導が不可欠です。
例えば、Ever17のLeMUでは、2034年で桑古木が武として振る舞ったり、ココが超能力を駆使したりすることで致命的な破綻が起きないようになっていました。
それと同じように、ココロ空間とサトル空間それぞれの朱倉岳と青鷺島の出来事を誘導する協力者が存在します。
劇中でユウキドウに協力していたのが明らかなのは、2012年のゆに(主に朱倉岳にいる方)と榎本です。
2012年のゆにの方は、避難小屋でこころ達と共に行動しているため、誘導が可能です。
一方、榎本はスフィアの地下で監視しているため、悟達を誘導する役割には不適当です。
スフィアには別の協力者が必要となります。
榎本は、本編では悟しか接触していないように思えます。
しかし、実はそれ以外にも接触していたと推測出来る人物が存在します。
内海と2011年のゆにです。
内海と2011年のゆには、テラバイトディスクの内容を見たと発言しています。
一方、ココロ編で、スフィアの生活スペースにはPCの本体がないことが分かっています。
つまり、スフィアでテラバイトディスクを読み込めるのは、榎本のいる管理室しか存在しません。
2人は初日の段階でそこを訪ねておきながら、その事実を悟達に意図的に伝えなかったことになります。
このことから、2人がユウキドウ計画の協力者としてスフィアの出来事を誘導していたことが推測できます。
大まかな流れは以下のようなものだと思われます。
最初の人格交換の時、α人格が悟に宿った時に鎮静剤が打たれます。
その後、時空間転移が一周して悟が目覚めるまでに、内海とゆにがテラバイトディスクを管理室で閲覧します。
この時、管理室のロックは榎本が解除しました。
テラバイトディスクの内容を全面的に信用した2人は、以降テラバイトディスクを参考にして行動します。
本編の振る舞いを鑑みるに、ユウキドウ計画に全面的に協力するというよりは、テラバイトディスクに従って行動していれば自分達にもメリットがあるというようなものだったのかもしれません。
いずれにせよ、結果的にユウキドウの思惑通りに事が進みます。
2012年のゆには、計画の遂行のために入念な準備を行ってきました。
一方、内海達は計画実行中に協力者となったため、何の準備もしていません。
そのため、対処すべきことにはその都度悟達の目に入らないように管理室を訪れて確認していたと思われます。
[補足]悟は、管理室で監視カメラの映像データを解析します。
注意深く観察していれば、内海達が管理室を訪れていたことに気付けたかもしれません。
しかし、TIPSで説明されるように、解析の対象を悟が登場するものに限定していたため見過ごしてしまいます。
協力の具体例として、内海の医療行為が挙げられます。
内海はスフィアでは精神科医として振る舞い、DIDや薬品の専門的な知識を披露しています。
しかし、復讐を諦めた後、悟に精神科医ではなかったと告白しています。
精神科医でないなら、どこからか専門知識を得ていたことになりますが、スフィアにはそうした資料が存在しません。
描写されている中では、テラバイトディスクが情報源であったと考えるのが自然です。
他にも、榎本の襲撃中、スフィアの外に締め出された際、部屋に戻ることが出来たのはゆにのおかげです。
このように、スフィアで起きた問題は内海とゆにの行動で解決の可能性が生み出されていることが分かります。
逆に、内海の復讐はテラバイトディスクに関係のない私怨によるものです。
ユウキドウ計画において、衛星電話の人為的偶然のために復讐は着手されなければなりません。
そのため、あえて思い止まらせることはせずに内海の意思に任せます。
スフィアの誘導役が明らかになったことで、サトル空間をココロ空間のように見せかけることが可能であることが分かりました。
こうして、BWが悟の肉体に召喚される条件が揃います。
一方、Ever17と違い、BWはココロ空間とサトル空間の矛盾を見落としています。
そのため、BWは第3視点を得ることが出来ず、悟として収縮します。
黛
悟の人格は、ココロ編で得られた情報を基にしています。
特に、黛との思い出は悟を悟たらしめる重要な要素です。
ココロ編では、極限状態に陥った黛が、悟のふりをしたこころに思い出を語るシーンが存在します。
この時のこころと黛は、互いが悟という妄想を心から望んだことにより、キュレイシンドロームの妄想の現実化と伝播を引き起こしたと解釈出来ます。
Remember11は、黛が悟を否定することで終わりを迎えます。
原因は、事前にユウキドウと榎本が人格交換を行った結果、榎本の肉体に悟の人格が宿っていたからです。
しかし、第3視点を得ていない悟には、その事実を知る術がありません。
黛に否定されれば、自身が悟であるという現実を信じられなくなります。
最終的に、悟として振る舞っていたBWは、キュレイ空間から消滅することになります。
[補足]参考になるシーンに、Ever17の鏡のシーンが挙げられます。
BWは、宿主である少年を桑古木だと勘違いしていました。
鏡を見て桑古木でないと気づくと、自我を失うほどの衝撃を受けます。
この時に完全に消滅しないのは、第3視点によって、少なくとも沙羅は少年を兄として認めてくれるのが分かっているからです。
BWは、2012年のゆにの説明により、こころ達を救うためには衛星電話が繋がる必要のあることを認めています。
衛星電話が繋がったのは奇跡的な偶然であり、歴史がずれると妥当性を失ってしまいます。
そのため、BWは他の可能性を妄想することが出来ません。
こうして、Ever17で超越的な活躍を見せたBWは無力化されます。
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