信州とサッカーで思い出すマンガ【Short Letter】
皆さん、新年明けましておめでとうございます。
さて、本題に入る前に、若干の前置きをお許し願いたく。
私はついこないだ、年明け早々に1コ歳を重ねちまって。もう50過ぎると誕生日ってあまり感慨はないけど、とにかく、何とかまた生きながらえることはできたな、と。
今はまだ明確なことは言えないのだけど、この先、いろいろあるかもしれないし、その中でたくさん迷惑をかけたりしてしまうかもしれないので、一足先に「ごめんなさい」だけはしておこう。
どうなるか、まだまだ先は読めないけれど、自分の中でエポックメイキングなことが起きるかもしれない、とだけは申し上げておこう。
ま、ともあれ、そういったことも含めながら、これからもボチボチお願いしますわ。
ということで、前置き終了。以下本題。
例の「すたすたぐるぐる」の初巻・埼玉編が好評発売中である。
そして、その次回作が信州・長野編ということが既に発表もされ、現在いろいろと進行中らしいのだけど、そんな状況の中で、ふと本稿を書くことを思いついた。
ということで、青春時代に出会ったとあるマンガ作品を巡るおっさんの与太に、しばしおつきあい願おう。
さて、皆さんは小山田いくという長野県小諸市出身の漫画家がいたことをご存知だろうか。
ご存命なら是が非でも近況を含めてご紹介したいのだが、残念ながら既に鬼籍に入られている。それでも私も含めてそれ相応にファンはおり、青春の叙情性などを描写した作品の人気が根強い。
一部の作品はfukkan.comなどを通じて、コミックスが再編集・再刊行されるに至っているほどだ。
また、小山田いく先生自身も漫画家としていくつかのヒット作を持っていたが、実弟がたがみよしひさ先生であり、こちらもファンの多い漫画家として有名である。この二人の合作もあるらしい。
小山田いく先生個人の話に戻ると、デビュー当時は、週刊少年チャンピオンを主戦場に、青春系のマンガを多数発表してこられた。
これからご紹介する「すくらっぷ・ブック」(オリジナルの連載期間は1980年~1982年で、全101話)もそうした作品の一つであり、小山田いく先生の初期の代表作の一つと言って良い。
先述した期間に、三本あるプレストーリーも含めて、全て週刊少年チャンピオンにて連載されていた。
話は、非常にざっくり言えば「中学生の群像劇」であり、時間的には主人公たちの中学二年次から、卒業直後辺りまでをほぼリアルタイムで追いかける作品だった。
今でも入手が可能なら、ぜひ見つけて一読してほしい。
さて、この作品の中に主人公である、美術部員の柏木晴(かしわぎ・はる=♂)の幼なじみで親友という設定で登場するのが、市野清文(いちの・きよふみ)という人物だ。
柏木と市野の最も親しい友人には、第1話の顛末で友人同士となった坂口光明(さかぐち・みつあき)という柔道部員がおり、この三人が話の中心になることも多い。
この市野が、彼や柏木らが通う芦ノ原中学校のサッカー部員であり、しかもこの物語が始まる中学二年次から既に、「ゴール際のコンピュータ」と渾名され、自他共に認めるエースストライカーという位置づけだった。
サッカーのシーンも実際登場する。その中では小学校時代の同級生であり、別の中学校に進んだ宇木朝実(うき・あさみ)という人物がおり、この宇木が所属する中学校のチームと対戦している。
その時、プレーの行きがかり上、宇木が市野と交錯してしまい、市野が負傷してしまう。
それを見た柏木らが宇木を非難するが、見かねた坂口が同じようにスポーツをする人間の立場から、柏木に実体験を交えて含むように説得すると、柏木も納得すると同時に、その顛末を知った宇木からも感謝される、という話がある。
そんな市野少年は、いわゆるカッコいい二枚目キャラで、理数系を得意とし、気の強い人物として描かれている一方、唯物論者で合理主義者でもあり、科学で割りきれない魑魅魍魎や幽霊が嫌いというキャラ設定でもある。
そういう側面も持ちつつ、隣のクラスに青木理美(あおき・りみ)という恋人がおり、この二人のカップルは作中において目標とされてきた。
小山田いく先生がサッカーにどの程度の造詣があったのかは、私は残念ながら知らないし、この当時どの程度長野県(特に小諸地方)でサッカーが流行していたかはわからないものの、その競技を敢えて選んだことは興味深い。
「すくらっぷ・ブック」の市野少年が大人になって、小諸に居続けたり、進学就職等で県外に出たあと小諸に戻ってきたとして、その際にまだサッカーを続けていたと仮定する。
そうなった場合に、彼は一体何処のチームに入ってどういったプレーをしていただろうか、などと想像してみる。
プレーについても、ゴール際のコンピュータは引退するまでそのままだったのか、あるいは年齢を増すごとにポジションが変わったりプレースタイルに変化が出たのかなど、想像もついつい逞しくなろうというものだ。
今、信州・長野県と呼ばれる地域にも松本山雅FCやAC長野パルセイロなどというJリーグチームを筆頭に数多くのチームが存在するが、私が不勉強なのか、正直あまりよく知らずにきた。
だが、改めて洗い直してみたところ、小諸にある有力チームということになると、どうやらアルティスタ浅間が想起できそうだ。
元々小諸市の隣にある東御市に存在するチームであり、アルティスタ東御といっていたが、今はアルティスタ浅間であり、このチームの運営法人の所在地が小諸市にあるんだそうだ。
単純に私が小諸市と、2004年に発足した東御市との位置関係をよくわかっていなかっただけだったりするのだけど、まあ、ともかくそういうことのようである。
もし、「すくらっぷ・ブック」が40年前でなく、今の時代の話だったとするなら、劇中に於けるサッカーの位置づけなども含めて、あの頃とは一味違った味付けがなされていたかもしれない、と思うと、なかなか楽しい。
ひょっとしたら、その話の中心にアルティスタ浅間そのもの、ないしは、このチームをモデルとした架空のチームが描かれるかもしれない。そういう想像ができるのは、比較的興味をそそる。
現在はサッカーがナショナルパスタイムとして、それなりに市民権を得ている時代であるが故に、このスポーツの取り上げ方も40年前とは異なってくるかもしれない。
小山田いく先生の作品には、これぐらいしかサッカーを取り上げている作品が存在しない(と、自分の知る限りは思う)けれど、しかし、その中での取り上げられ方は、サッカーの魅力を伝えていると思う。
最初の方にも言ったが、ぜひこの「すくらっぷ・ブック」を手に取って読んでみてほしい。
確かに40年程度前の作品ではあるけれど、その時代に敢えて作品の中で取り上げられるスポーツの一つにサッカーがある、というのが、俄然興味深く思えてくるからだ。
あと、できればその際に、中学生時代のことなどを思い返してみてほしい。もちろん、40年ぐらい前と現在とでは、価値観や倫理観などの考え方、時代感覚等も異なるだろう
だから、このマンガが示す世界観に素直に共感できるかどうかは私にはわからない。
でも、世代的にはジュヴナイルに該当する年齢層が主人公の作品であるが故に、どこか甘酸っぱい気持ちを思い起こせるかもしれない。そんなマンガであることだけは請け合って良い。
10代前半から中盤辺りの心境に帰るつもりで、本作は多くの人に読まれてほしいと思う。
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