2022年新年の広告コピーレビュー
~ 元日広告のキャッチコピーは企業の決意表明 ~
企業の決意が表われる元日の広告
新商品の発売、新サービスのスタート、社名やロゴの改編、組織変更、創業記念などのトピックに合わせて出稿される企業広告。新年の季節も多くの企業が広告に予算を投じて媒体を彩ります。その年の企業の決意や意気込みが表われやすい新年の広告では、普段とは一味違うキャッチコピーに出逢えます。
2022年元日の企業広告
企業広告のキャッチコピーに注目
2022年1月1日の元日も、さまざまな企業広告が出稿されました。まだまだ新型コロナウイルスによる影響が続くなか、企業はどんなメッセージを発信したのでしょう。そこで、とくに決意表明的に感じられる大手企業7社の新聞広告の中から、全面広告のキャッチコピー(メインコピー)に注目してみます。
※解説は過去に関わった編集・案件などを参考とする当方所感であり、断定するものではありません。
※アミカケ枠内は引用箇所。敬称略。掲載紙面順。
2022年の広告コピー一覧
~ 新聞広告(全面広告)編 ~
┗ ➊日本自動車工業会
※出典:22年1月1日(土)/読売新聞/朝刊10-11面(全面見開き広告)
日本自動車工業会のキャッチコピー
私たちは、できる。
表記のポイント
・表記①:(「私達」と漢字表記ではなく)「私たち」とひらがな表記
・表記②:(「出来る」と漢字表記ではなく)「できる」とひらがな表記
・文中:読点あり(私たちは、~)
・文末:句点あり(~できる。)
メッセージは「できる」
「私たちは、できる。」というキャッチコピーの「私たち」が、広告右下の「# クルマを走らせる550万人」であることが見て取れます。同時にその550万人の全員が「できる。」と訴えかけているような、あるいはコミット(約束、公約)しているような、力強いメッセージとして伝わってきます。
┗ ➋積水ハウス
※出典:22年1月1日(土)/読売新聞/朝刊12面(全面広告)
積水ハウスのキャッチコピー
あたりまえじゃない朝
表記のポイント
・表記①:(「当たり前」と漢字表記ではなく)「あたりまえ」とひらがな表記
・表記②:(「ではない」と文語調ではなく)「じゃない」と口語調
・文中:読点なし
・文末:句点なし
メッセージは「あたりまえじゃない」
「あたりまえじゃない朝」というキャッチコピーに続く本文(ボディコピー)と子どもたちのビジュアルが、家族の成長や変化をイメージさせ、「日常はあたりまえじゃない」と感じさせます。さらに、コロナ禍に直接言及することなく、ニューノーマルな社会をも意識させるメッセージが伝わってきます。
┗ ➌大和ハウス工業
※出典:22年1月1日(土)/読売新聞/朝刊17面(全面広告)
大和ハウス工業のキャッチコピー
今を生きる。
表記のポイント
・文中:読点なし
・文末:句点あり(~生きる。)
メッセージは「生きる」
一般的なキャッチコピーの配置は、本文(ボディコピー)の文頭か文末というのがセオリーであるのに対し、「今を生きる。」というキャッチコピーが文中に配置されたパターン。ボディコピーと男女のビジュアルから、何気ない日常である今を生きることの大切さが、メッセージとして伝わってきます。
┗ ➍セイコーウオッチ
※出典:22年1月1日(土)/読売新聞/朝刊20面(全面広告)
セイコーウオッチのキャッチコピー
無理だと言われる
ことしか、やるな。
Keep Going Forward
表記のポイント
・表記①:(「むり/ムリ」とひらがな/カナ表記ではなく)「無理」と漢字表記
・表記②:(「事しか」と漢字表記ではなく)「ことしか」とひがらな表記
・文中:読点あり(無理だと言われることしか、~)
・文末:句点あり(~やるな。)
メッセージは「前へ」(Forward)
広告表現ではネガティブワード(無理)や否定ワード(やるな)は避ける、あるいは二次的に検討するものですが、あえていずれも採用することで力強い印象を与えるパターンの好例です。さらに「Keep Going Forward」(前へ進み続けろ)というポジティブな英文コピーが、力強さを増幅させています。
┗ ➎SMBCグループ
※出典:22年1月1日(土)/読売新聞/朝刊26面(全面広告)
SMBCグループのキャッチコピー
わからないけど、愛してる。
表記のポイント
・表記①:(「分からない」と漢字表記ではなく)「わからない」とひらがな表記
・表記②:(「けれど」「している」と文語調ではなく)「けど」「してる」と口語調
・文中:読点あり(わからないけど、~)
・文末:句点あり(~愛してる。)
メッセージは「愛」
照れくさい言葉。普段は口にしない言葉。あたりまえ過ぎて理由など考えもしない言葉。だからこそ言葉にして伝えなくてはと思う言葉。世代をわたる家族写真のビジュアルに「愛してる。」というコピーが重なることで、言葉にすることや家族とのつながりの大切さが、メッセージとして伝わってきます。
┗ ➏ヤマト運輸
※出典:22年1月1日(土)/読売新聞/朝刊28面(全面広告)
ヤマト運輸のキャッチコピー
お客さまの近くに
いるからこそ
できることを、
もっと。
表記のポイント
・表記①:(「お客様」と漢字表記ではなく)「お客さま」とひらがな表記
・表記②:(「出来る事」と漢字表記ではなく)「できること」とひらがな表記
・文中:読点あり(できることを、~)
・文末:句点あり(~もっと。)
メッセージは「もっと」
「お客さまの近くにいる~」という前段のキャッチコピーが、配達も接客であるということを再認識させながら、さまざまな業務シーンのビジュアルに重ねられた「できることえを、もっと。」という後段のキャッチコピーが、配達の枠を超えた接客のさらなる可能性に大きな説得力をもたらしています。
┗ ➐キヤノン
※出典:22年1月1日(土)/読売新聞/朝刊36面(全面広告)
キヤノンのキャッチコピー
ひろげよう。
まだない視界を。
Find Your Focus
表記のポイント
・表記①:(「広げ/拡げよう」と漢字表記ではなく)「ひろげよう」とひらがな表記
・表記②:(「未だ無い」と漢字表記ではなく)「まだない」とひらがな表記
・文中:読点なし
・文末:句点あり(ひろげよう。/~視界を。)
メッセージは「ひろげる」
「ひろげよう。まだない視界を。」という前段のキャッチコピーとビジネスや日常のビジュアルが重なることで、視界の概念が複合的で豊かな印象となってこちらの想像を膨らませるだけでなく、「Find Your Focus」(焦点や要点の発見)という後段の英文コピーが、想像の行先を見事に回収しています。
2022年度
各社から伝わる新年のメッセージ
1.できる(日本自動車工業会)
2.あたりまえじゃない(積水ハウス)
3.生きる(大和ハウス工業)
4.前へ(セイコーウオッチ)
5.愛(SMBCグループ)
6.もっと(ヤマト運輸)
7.ひろげる(キヤノン)
まあ、企業広告なのであたりまえですけど、いずれも伝わってくるのは前向きでポジティブな姿勢です。自粛、巣ごもり、ソーシャルディスタンス、オンラインなどのスタイルに配慮しながらも、2022年こそは、前向きでポジティブな決意を表明する企業が経済を勢いづけてくれること、願うばかりです。
(了)