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これからの社会をどう生きる?2020年代を生きる「20代キャリアの処世術」

今回、気になった記事はこちら。

タイトルから既に分かるかもしれませんが、一部の人たちに未だ根付いている大企業信仰への問題提起と、Withコロナ・Afterコロナで激的に変化していくことが見込まれる働き方やキャリアについて、Google Japanで人材開発責任者をされていたピョートル・フェリークス・グジバチ氏のエントリです。

普段、学生や20代ビジネスパーソンとコミュニケーションを取っていると、自分なりの考えをしっかり持ち動いている人もいらっしゃいますが、なかには記事で指摘されているような「オールドエリート」な価値観に囚われている人も少なくないように感じます。

令和へと元号も変わり突入した2020年代。パンデミックによる東京オリンピックの延期など、まさに予想不可能で不確実な社会の様相を呈したはじまりとなりました。
一方で自身が学生であった2000年代と比べるとさらにテクノロジーは発展し、価値観も変わり様々な可能性に満ちている時代ともいえます。

今回は20代後半から複業(パラレルキャリア)を経験し、自らキャリアを切り拓いて独立起業した経験のある、キャリアコンサルタントでもある筆者が考える現代に必要なキャリア観を考えてみました。

特にこれから転職や独立、結婚などワークとライフどちらにおいてもキャリアチェンジを経験するであろう20代の皆さんに向けて、ぜひ考えてもらいたい「2020年代を生きる20代キャリアの処世術」としてポイントを書いてみます。

当事者ではない年代の方にとっても参考になる点はあると思いますので、よろしければお付き合いください。


1.「定義」を見直す

1つめは使われる言葉の定義です。

若い方に限らず、どうも時代の変化に合わせて使っている言葉が意味するものが変化していることに気づいていない方が多いように感じています。

その言葉とは「安定」「優秀」の2つ。

これらの言葉をキャリアを指して使う際、その前提となっている意味がこの数十年で変化しているのではないでしょうか。

「安定」といえばどんなイメージでしょうか?

恐らく、破産倒産リスクの少なさそうな規模や業態、伝統実績のある老舗、給与が年功序列で少しずつだけど各自に上がっていく、賞与が出る、福利厚生がしっかりしている、などのイメージが挙がってくるかと思います。

そうなると数千人規模の社員を抱える一部上場の大企業や公務員、銀行や鉄道会社などのインフラ関連、観光協会や商工会などの公共団体といった、いわゆるお堅い職場が安定の代名詞ですね。

これらの価値観から察するに、「安定」とはちょっとやそっとの雨風や地震では倒れないような、堅くて頑丈な建物のような感じがします。こうした組織は、根付いた文化やシステムもやはり固くてなかなか変えられない。

今の50代以降の皆さんからしたら我が子を苦労させないために進学させ、こういった職場を積極的に勧めたのではないでしょうか。私の周りの同年代の友人にも、こうした言葉を親から受けてきたという人が多いです。

ですが、そういった従来の安定という言葉に込めてきたものも年々上記の職場から無くなってきています。

人口減少の局面に入った全国の地方自治体や公共団体では、税収という収益が減ることで安定的な給与のアップは確約できません。
産業構造の変化について行けずメガバンクや地方銀行、インフラ関連企業も立ち行かなくなる可能性が出てきており、倒産やリストラなどの人員整理に関するニュースも日々流れてきています。

冒頭の記事でも触れられているように、民間の大企業ももはや手放しで安定と呼ぶことはできません。

給与や待遇という金銭報酬は一定程度守られているけど、成長に繋がるような経験は得られない…伸び盛りの貴重な20代を学びの少ない環境を選ぶというのも考えものです。

これからの「安定」とは、堅さや頑丈さという不変的なものではなく、組織を取り巻く外部環境の変化を察知し、状況に応じて柔軟でしなやかに変わり続けられることを意味します。

組織内の人や事業、施設設備といった内部リソースだけでなく、異業種異分野や多様な人財など外部リソースも活かしながら対応していく高い適応力が安定のために必要な要素となるでしょう。

「優秀」という言葉はどうでしょう。

上記のイメージに沿って言えば、高学歴、規範や規律を守る、指示に従う、言われたことをこなせる、失敗しない、などでしょうか。

まさに学校でいい成績・いい評価を収めてきた優等生なのかもしれませんが、それらの優秀イメ―ジも刷新していく必要があります。

記事でも触れているように、これからは単純にどこの学校を卒業したかというステータス的な高学歴よりも、何を学び・何を為してきたかという学習歴の方が重要です。

ストレスフルな環境や困難を乗り越えたことで身につけられるレジリエンスやグリット(GRIT)といわれるやり抜く力も重要となるでしょう。

過去の経験が通じなくなっていくなかでは、これをしておけばOKというマニュアルも、唯一の正解もなくなりました。

他者からの指示がなくても自ら思考し、行動に移せる力。年長者が言うことが必ずしも正しいとは限りませんから、指示を鵜呑みにせず批判的思考で物事を考えられることや自らの意見を表明出来ることも必要な資質ではないでしょうか。

組織の規律や規範も確かに大切ですが、時代の変化によって制度疲労を起こしており、それ自体が足枷になっているものも少なくないでしょう。

「なぜこのルールが必要なのか?」を考えることなく、思考停止し規律や規範を守っている間に組織のなかで取り返しのつかない問題を起こしては意味がありません。

そして、このような状況下では失敗も大事な学びの要素です。

失敗を恐れ何もしないのでは事態は変わらず、ただ状況に流され行き当たりばったりの結果に行き着くだけ。仕事もキャリアも、やってみてはじめて分かることはたくさんあります。

行動に起こしたなかで、得られた結果…たとえそれが失敗だとしても、そこから得られるものはたくさんあります。そこでの教訓や経験を次に活かしていこうとするマインドセットも大切です。

失敗しないことをよしとする減点主義の文化を持った組織がこの時代で生き残ることは困難です。未来を考えるなら、そのような組織で長く働くことは避けた方が良いでしょう。

いたずらに場を乱したりチームワークを無視しろということではありませんが、自らが感じたこと、考えたこと、違和感や「おかしい」という感覚を無視することなく、上手く他者に伝えていくことで、あなたの仕事も組織も成長のチャンスになります。

そうした人のことをこれからは「優秀」とすべきですし、そうした人を正当に評価してくれる組織かどうかも選ぶポイントでしょう。


2.「報酬」を拡張する

2つめは追い求めるべき報酬の対象を広げましょう。

従来の「報酬」といえば、多くの人が給与やボーナスといった金銭的報酬を指して使っていたと思いますが、VUCAな社会、人生100年時代といわれる今日においてはそれだけでは不十分ではないでしょうか。

報酬という概念を単にお金とせず、”何かの行為の対価としてもらって嬉しいもの・自身の助けになるもの”とすれば、もっとたくさんあるはず。

もし仮に、いまの仕事のままで年収が2倍になったとしたら、2倍くらい幸せになっている姿を想像できますか?

人によっては充実した姿ややりたいことが実現できているポジティブな姿を想像をできたかもしれませんが、なかにはそうでもないなと感じた方もいるのではないでしょうか。

この問いだと現在の職場でのイメージが湧かず、転職したいと考えている人もいるかもしれません。そうした人ほど、お金以外の報酬にもぜひ目を向けてみてください。

人によって感じられるものは微妙に違うかもしれませんが、たとえば以下のようなものはいかがでしょう。

経験報酬
これまでやったことがないことや仕事を通して自分を成長させてくれる機会。他では得難いような経験が得られることを表します。

たとえば新規事業のスタートアップ、大学院への通学、海外赴任や留学、他社への出向、複数の人との協働プロジェクト、チームマネジメントや後輩同僚へのコーチングの機会などです。
職場の経験をイメージしましたが、これはプライベートで行っているコミュニティや友人関係でも似たような機会があるかもしれません。

給与が毎月貰えたとしても、決まった時間・決まった仕事を毎日ただ続けるだけの仕事、今後もこうした経験がなかなか得られないような職場であれば、このまま続けていくべきかを問うてみるのも一つでしょう。

人脈報酬
文字通り、多様な人と出会って繋がれるかどうかを表します。経験報酬で説明した経験や機会ともリンクしますが、ここでのポイントは人です。
異業種異分野の人、異なる年代、違う国の方、著名人、自分とは正反対の価値観の人との出会いもそうかもしれません。これは言い換えれば、毎日顔を合わせる職場の人以外と出会える機会があるかどうかです。

多様な人脈は、仕事でもプライベートでもあなたに新しい機会を運んできてくれる可能性があります。新しい人との出会いがあなたの視野を広げ、新しい価値観への気づきをくれます。転職のチャンスだけでなく、この後の意味報酬を得る際の手掛かりにもなるでしょう。

しかし、ただ知っているだけではそうした機会にはすぐに結びつきませんので注意が必要です。営業職で色んな人と出会っているだけでは当てはまりません。

どんなにたくさんの人と名刺交換をしても、スマホの電話帳やLINEの友達の件数が多くても、その繋がりのなかで「会社の肩書」を外して付き合える人でなければ、あなたという存在に紐づいた人脈とは言い難い。

会社の肩書を通じて出会ったクライアントだとしても、一人の人間としてあなたの人間性をもとに付き合えている人はいますか。もしいれば、それがあなたのキャリアにおいては本当に価値のある人脈といえます。

意味報酬
意味報酬は、自分がやっていることにやりがいが感じられること、または行っていることについて意義や意味を深く感じられることです。そうした気持ちと接することができている時間もしくは機会のことを表します。

やりがいとは、ここでは「やっていて良かった、頑張りが報われたと感じることができる、たまにある感情や気持ちの報酬」です。

意義意味とは、自分がやっていることを俯瞰したとき、自分なりに社会的に価値があるものと思えたり、他者の役に立てていると感じられたり、自身の過去・未来と繋がるものと感じられるかどうかを表す概念です。

所属している組織のなかでそのまま得られることもあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

意味報酬は働いていく上での動機づけとなるモチベーション、そして生きていく上での生き甲斐のようなものにも繋がる大事な要素です。他者との繋がりによって得られる報酬でもあるため、あなたが結んだ関係がそれらを運んできてくれることもあります。


金銭報酬も加えたこれら4つの報酬ですが、今の職場のなかでバランスよく得ることはできているでしょうか。

仮に給与が少々安かったとしても、他の報酬がたくさん得られているようであればアリという考え方もできるかもしれませんね。

もし偏ったものがあれば、今後意識してみてください。


3.「一人一職」という常識を捨てる

これは今の20代30代の皆さんからすれば違和感もないと思いますが、恐らく上の世代の方々からしたらまだ馴染みがないかもしれません。

日本でもモデル就業規則のなかに副業を許容する記載が入ったこともあり、大企業を中心にですが多くの企業で副業が認められるようになりました。

本業に専念するということが美徳とされた時代は「一人一職」を選び、違う職に就くためには退職するしかない。そして辞めてしまえば前の職場とはもう縁がなくなるという状況が、どちらかというと一般的だったと思います。

終身雇用というものも維持しようにも実質的に不可能となり、雇用契約そのものの在り方も見直されはじめています。

有名なところでいえば、タニタでは社員が希望すれば雇用契約を解消し、個人事業主としてそのまま担当している仕事を変わらない待遇で受けることができるようにし、同時に他社の仕事も受けることできるような制度がつくられました。

会社側が雇用維持の責任を果たしていないという見方をされる方もいるかもしれませんが、これはむしろ会社にぶら下がって生きる社員を生まず、主体的で自律的なキャリア形成を支援する動きと言えるのではないでしょうか。

一部の企業では会社を辞めた人を裏切り者としてではなく、貴重な資源とし、退職者との関係づくりに力を入れ、自社の事業や文化を理解するサポーターやファンのような存在として継続的に関わってもらうアルムナイ(alumni)という考え方も取り入れはじめています。

現在の仕事で先述の4つの報酬が充分に得られていないようであれば、他の手段で得るための機会をつくってみましょう。

そのための観点として、以下で紹介する副業(サイドビジネス)、複業(パラレルキャリア)、福業(ホビー/ライフワーク)の3つのフク業モデルも参考にしてみてください。


4.「何になるか」や「やりたいこと」に固執しない

最後は個人的にもっとも大事にして欲しい要素です。

私たちはこれまでの学校生活で、「何になるか?」ということを問われて大人になってきました。

そうした問いに答えるために、子どもの頃からキャリア教育としてさまざまな職業を理解するために職場体験やインターンシップ、社会人による講話などを経験してきて、多くの人が高校卒業、大学卒業のタイミングで職業選択してきているはずです。

なかには「やりたいこと」と呼べるものを選ぶことができた方もいるかもしれません。

しかし、これも厳密に言えばその時点で自分が知ってる仕事のなかで、その時点の自分が一番優先する価値観(給与待遇、成長機会、知名度等)とのズレの少なそうな職場を、ある程度感覚的に、かつ他者からの評価評判も気にしながら選んだに過ぎないと思います。

自身の仕事にやりがいを感じ、天職のように感じられる仕事をしている人も一部にはいるでしょうが、2017年の米国ギャラップ社の調査で、日本人の仕事に対する熱意度が国際比較をしても著しく低いということが分かりました。

これまで人生の先輩たちの話をお聞きしてきた限りでは、仕事=辛いもの・我慢するものと捉えている方が多く、これはあながち的外れな指摘ではないように思います。

つまり、「何をするか」の呪縛に囚われたまま大人になり「そこまでやりたいと思えないこと」を仕事にし、諦めや割り切りをしながら歳を重ねているのが日本人の多くなのかもしれません。

そうして人生の先輩たちは親となり、我が子にもきっと「何をするか」を問うているのです。

よく講演会の質疑応答で学生たちから「やりたいことが見つからない」という質問を受けていますが、私たちはこの「やりたい」「何になるか」ということにこだわり過ぎのように感じます。

「やりたいこと」が見つからないと、満足することはできないのでしょうか?
「何になるか」が定まらないことは、本当によくないことでしょうか?

皆さんに考えていただきたいこと、それは「どうありたいか」です。つまりDoingよりもBeingの観点です。

たとえば「人の人生の選択に関わる仕事をしたい、その人の人生観をポジティブなものにするお手伝いがしたい」といったような「ありたい自分」としっかり向き合い言語化をしてから、その価値観を体現できそうな仕事を選んでみてはどうでしょう。

その結果、この例でいえば教員や看護師、スタイリストや美容師がいいかもしれませんし、もしかしたらキャリアコンサルタントが適しているかもしれません。

職業とは、自己像のなかで大切にしたい価値観を体現するための一つの手段にすぎません。

そして人は一生涯において精神や知性、意識を発達させていくといわれています。

そうであれば、自分自身の内面に耳を傾けて、その時に大事にしている価値観をもっとも自然に、そして無理なく表現できる生き方・仕事を選ぶというのも一つです。

人生の成功は、必ずしも高収入や社会的地位と結びつくものではありませんよね。

10年20年と一つのことを続けることが必ずしもよいことではありませんし、もし1つの仕事で満たせないならばやはり複数のことをすべきでしょう。

「何になるか」にこだわり過ぎると具体的な職業に囚われすぎてしまったり、逆に視野を狭めてしまい結果としてやりたいことから遠ざかってしまいます。

躍起になって探せば探せすほど見つからない…無理してこちらから見つけにいくというよりは、偶然やご縁も絡んでくることも考えると、向こうから呼ばれるように出会うものなのかもしれませんね。

日本語の天職を表す英語は、コーリング(calling)というそうですが、まさにですね。

そういう意味でいえば、一生を通して続けられる一つの仕事を探すのではなく、その時々に大事にしたい「ありたい自分」を反映させた生き方と仕事の組み合わせをつくる…ライフとワークのポートフォリオのようなものを編集していくような考え方がこれからの時代に合っているようにも思えます。

これらの4つのポイントは30歳を過ぎて当時の経験を振り返り、何が今の自分に繋がっているか。今の自分が20代だったとしたら、何を大事にしてキャリアを考えるかを意識してまとめた内容です。

何かの参考になったら嬉しいですが、これも一つの提案です。鵜呑みにせずぜひご自分の頭で、心で、身体を活かして選んでみて下さい。

迷える20代の皆さんが、今後の人生の主体者であれますように。

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山本 一輝
数多あるnoteのなか、お読みいただきありがとうございました。いただいたご支援を糧に、皆さんの生き方や働き方を見直すヒントになるような記事を書いていきたいと思います。