オンラインゼミvol.3発達理論から見るキャリア教育の課題と展望
2020年最後、3回目となるオンラインゼミを12月26日(土)に開催しました!
前回は、「不確実な世界を捉える感覚・思考を研ぎ澄ます システム理論と統合的思考に学ぶVUCA時代のリテラシー」と題し、システム思考やインテグラル理論を題材としたこれからの時代に求められる思考フレームをご紹介しました。
オンラインゼミは、「人と組織の発達をテーマに、自己・社会を捉える観点や価値観に新たな気づきをもたらす、学び続ける大人のための学びの場」をコンセプトにした少人数×双方向のオンラインセミナーであり、他では恐らく話す機会がなさそうなニッチなテーマや題材で、探究成果のアウトプットも兼ねて不定期で実施しています。
vol.3のテーマ
今回は長らく携わってきたキャリア教育をテーマに、「発達理論から見るキャリア教育の課題と展望~発達理論から見るキャリア教育の探究、発達に資する学習機会~」と題しロバート・キーガンの成人発達理論を基に考えた、キャリア教育の考察と可能性について話題提供し、参加者の皆さんと対話し深めていきました。
レクチャーパートは成人発達理論について概要をお話して前提となる基礎知識を揃えたのち、今回のテーマに関する仮説や考察、課題解決の可能性をお話しました。
まず、キャリア教育について詳しくない方向けにお伝えしておくと、キャリア教育と職業教育は異なるものです。キャリア教育=特定の職業に関する知識技能の習得ではありません。
キャリア教育は子どもたち一人ひとりがどのように生きていきたいか・どんな進路を進むかを主体的に決められるようになるキャリア観、そしてあらゆる職業に就く上で求められるであろう基礎的汎用的な能力・態度を育むことを目的に行われています。
日本における歴史としては、1999年に文部科学省の審議会で初めてキャリア教育という言葉が用語として登場したと言われており、このような社会背景があったとされています。
キャリア教育には約20年の歴史があります。
導入された当時私は中学生でしたが、現在成人を迎えている20代のほとんどが小学校~高校までの12年間フルで受けてきたといえるのではないでしょうか。
ここで一つ、今回のゼミの企画の発端にもなった疑問が浮かびます。それは、
”果たして、日本で行われてきた20年のキャリア教育は効果があったのだろうか?”
という問いです。
ここについては色んな意見があると思いますが、日本財団をはじめとする諸外国の若者との調査結果の比較を見ていくと、明らかに低い結果が示されています。
日本の若者は自らを大人とは思えていない。社会を変えられるとは思っていない。社会課題の話を家族や友達とすることもない。そして、国や自分の未来に対して希望を抱けない…教育界隈の皆さんにとっては周知の事実だと思います。
現場の肌感覚としても、日本の子どもたちは自己肯定感・自己効力感が低く、実態として少子化が進むなかで不登校者数は依然として減らないどころか増加する傾向にあります。
少なくともこの状況を見て私はお世辞にも「キャリア教育は成功した、上手くいった」とは言えないと考えています。
(見方を変えれば、やっていなかったらもっと酷い結果になっていたとも考えられますが…)
この点ついては後半に「なぜ上手くいかなかったのか?」という問いを現場の実践知や暗黙知と発達理論等と統合しながら考察し、仮説と突破口を導き出しました。
コロナの蔓延に学校は一斉休校。GIGAスクールの前倒しと激的な変化が学校を襲い、今なおいつ休校になってもおかしくない不安定な状況が続いていますが、VUCAな社会においては今後より一層のキャリア教育が求められることは間違いでしょう。
確固たる根拠がある訳ではないですが、これから必要となるキャリア教育の観点とそのための方策や要素についても、現時点の考えをお伝えしました。
粗削りなところもあったかと思いますが、教育現場の第一線に関わる皆さんにご参加いただけたことで、様々な観点からフィードバックや新しい論点をいただき私自身も学びとなりました。
無論、私が正解を持っている訳ではなく出来るのはあくまで話題提供と論点の提示だけです。
皆さんで対話を通して生成的に新たな知を紡いでいくこのプロセスこそが、これからの教育現場の常識や新たな選択肢をつくるのではないかと感じられる豊な時間となりました。
最後に、今回もご参加いただいた皆さんの振り返りと感想の一部をご紹介します。
ご参加いただきました皆さん、本当にありがとうございました!
講義動画
当日参加が叶わなかったけど学びたいという皆様に向けて、少しでも本研究と実践をおすそ分けしたいと思い、今回レコーディングした動画を公開いたします。
面白いと思っていただけたら過去のオンラインゼミ動画もご覧いただけると嬉しいです。