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妊活・不妊治療 可能性や希望を与えることへの責任とは

Instagramやnoteなどの広告や記事を見ていると、妊活や不妊治療に希望を与える記事を見かけることが結構ある

・高齢でもあきらめなくて大丈夫
・40歳からでも可能 自然妊娠の方法
・40歳で妊娠した体質改善方法

もっと過激なものになると…
・妊娠に加齢は関係ない(だったら学会で発表しろよと思うが)
・妊娠に不妊治療は必要ない
なんて広告や投稿も出てくる

このような投稿や広告を見るたびに私の中では「無責任だな…」という感想しか湧いてこない。ただなんとか妊娠したいと思う人にとっては、このような投稿や広告は希望の一筋になるのかもしれないなと思う事もある。

しかし、同時に「この希望の一筋」は本当にやさしさなのだろうか?と考えることもある

40代をターゲットにした投稿や広告

最近、SNS等の妊活や不妊治療に関連した広告を見て思うのは、以前より40代以上をターゲットにした広告が増えたということだ。

保険適用前は、体外受精にステップアップする人をターゲットにした広告が多かった記憶がある。高額な体外受精に躊躇う人をターゲットにしていたのだろう。

体外受精前に体質改善が必要と謳い、30万、40万のプランを提供しているところも少なくなかった。

ただ保険適用後はその様相は様変わりした。金銭面で体外受精へのステップアップのハードルが下がったことが大きい。

「なかなか妊娠せずに悩んでいるならまずはクリニックで検査を受けよう」
この考えが一般化されてきたのだろう。また、クリニックのお会計を心配する必要がなくなったことも大きい。(保険適用前からスクリーニング検査でビックリするような金額が発生するクリニックはほとんどなかったが…)

それゆえに、自然妊娠を謳う民間療法はターゲット層を変える必要が出てきた。そこで目を付けたのが保険診療の回数が減る40歳以上だ。

ちなみにこの保険診療の回数に関しては助成金時代から、40歳以上は3回しかもらえず、42歳が上限だったのは変わらない。39歳以下の助成金回数は6回であり、今の保険診療はこの条件がそのまま移行されただけである。

それにもかかわらず、保険診療になってから40代以降が冷遇されているという声を多く聞くようになった。

「40歳以上は保険診療において冷遇されている」
この感情を広告ターゲットとして利用されているのかもしれないと思う時がある。


希望を持ちたい気持ち

とはいえ、多くの人は妊娠や出産に対して、可能性や希望を求めている。

「頑張ればなんとか妊娠できるはずだ。40代半ばでも妊娠している人はいる。私もその一人に入れるはずだ。ここまでやってきたのだから今さら諦めることはできない」と思っている人も少なくないだろう。

そんな人にとって、「43歳の1回あたりの体外受精での妊娠率は…」なんて数値や情報は目にしたくないものかもしれない。厳しい現実を突きつけないでほしい。今は、優しく私の気持ちに寄り添ってほしい…そんな風に思っている人もいるだろう。

そんな人にとって
・高齢でもあきらめなくて大丈夫
・40歳からでも可能 自然妊娠の方法

なんていうキャッチコピーは、希望の一筋に見えるのだろう。

「まだ諦めなくてもいい。私にだって可能性はある」
何の根拠もない言葉に救われ、引き寄せられてしまうのかもしれない。


無責任な発言の先にあるもの

・高齢でもあきらめなくて大丈夫
・40歳からでも可能 自然妊娠の方法

これらの発言をしている人は、正直どのような気持ちでこのような発言をしているのだろうと思うことがある。

悩んでいる人に藁をつかませて、自分は儲けようと考えているのであれば軽蔑しかないが、純粋な気持ちで可能性や希望を与えて、一緒に伴走しようとしている人も一定数はいるのかもしれない。(とはいえ売り上げのためだけにわかってやっている人もいるので要注意ですが・・・)

ただ、可能性や希望を与えてサポートするのであれば、治療終結まで向きあう覚悟でサポートをする必要がある。果たしてその覚悟を持って、可能性や希望を発信している人はどこまでいるだろうか?

仮に最後までとことん伴走できる覚悟があるのであれば、可能性や希望を持たせてあげることもひとつのやさしさなのかもしれないとは思う。

私には夢や希望を与えるだけの無責任なことは言えない。だから必ず最初に現実を提示することから始めるようにしている。それは自分でしっかりと終わりを見極めてほしいという思いがあるからだ。

もしかしたらそんな私の発言に、冷たい、厳しい、優しくない…そんな風に思う人もいるかもしれない(というか言われたこともある)

無責任に可能性や希望を伝えた結果、引き際を見失う人は少なくない。実際に引き際を見失ったご相談を受けたことも1件や2件ではない。

誰か、今までに止めてくれる人はいなかったのだろうか…そう思う事が多々ある。正直なところ、可能性や希望を与えてくれた人が、引き際を提示してくれることはほとんどない。

言い方は悪いが、いつまでも希望を持っていてくれた方が売り上げにつながるからだ。

だからこそ、適切なタイミングで引き際を伝えることも我々カウンセラーの役目ではないかと私は思っている。

妊活・不妊治療はいつか終わりを迎える必要がある。
そして40代の人にとってそれは遠くない未来にやってくる。
だからこそ40代になれば、可能性ばかりを追いかけるのではなく、治療終結を模索し、次に踏み出す準備をしてほしい。

妊娠に至らずに治療を終結することは非常に辛い。それでも、治療終結への1歩を踏み出した人を見かけると、心の中で「お疲れ様でした。今後の人生に幸あれ」と願わずにはいられない。

きっと私はやさしくない
それでも私は現実を伝え続ける


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kazuyo usui 不妊カウンセラー・臨床検査技師
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