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不妊治療の保険適用 回数制限撤廃の声に考えること
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不妊治療の保険診療が開始されて来年の4月で3年が過ぎます。
保険診療のスタート当時は様々な混乱を極めた感が否めない不妊治療の保険適用ですが、1年、2年と経つにつれて徐々に落ち着いてきました。と同時に新たな課題も見えてきました。
その一つが、移植回数の制限です。当事者はもちろん、不妊治療の現場で働く人たちからも保険回数の撤廃や緩和の声が聞こえてきます。
この記事では不妊治療の保険回数撤廃もしくは緩和について考えていきたいと思います。
注意点
*この記事の内容はあくまでも私個人の見解になります
この記事に関しては、無料・有料範囲に関わらず、引用、リライトを含め転載をお断りいたします。取材・インタビュー・執筆依頼は別途お問い合わせください
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この記事の内容
・不妊治療保険診療における制限とは
・保険診療に回数制限があることの問題点
・保険診療の回数と累積妊娠率の関係
・回数制限を撤廃するのであれば
・誰が声を上げるのか
不妊治療保険診療における制限とは
まずは、簡単に不妊治療の保険診療について触れておきたいと思います。
不妊治療は2022年の4月まではタイミング治療と一部のスクリーニング検査を除いて、基本的には自費診療で行われてきました。費用においては初回30万 2回目以降15万を上限として(様々な条件あり)43歳未満に最大6回(40歳~42歳は3回)まで助成金が出ました。(2021年のみ保険診療移行前の暫定措置で助成金が初回40万 2回目以降30万)
2022年4月に体外受精を含む不妊治療が保険診療になりましたが、自費診療時代の内容がすべて保険適用になったわけではありません。保険診療と混合できる先進医療に指定された項目もありますが、着床前診断などは保険診療が認められませんでした。
保険診療ではエコーの回数や血液検査の回数、薬の処方上限などもあり、自費診療と同じ内容で治療が出来ないというクリニックもあり、特に独自路線を走っていた大手クリニックでその傾向が顕著だったように思います。
そのため不妊治療の保険診療開始当時は、保険診療に関して慎重な姿勢をみせるクリニックもあり、保険診療を行いつつも、あえて実績のある自費診療を勧めるクリニックもあったようです。
そんな保険診療には助成金時代と同様に、「40歳の誕生日まで移植最大6回 43歳の誕生日まで移植最大3回という」、年齢制限と回数制限が導入されました(出産等で回数はリセットされます)
ただこの回数制限は助成金時代の名残であり、保険診療になってから新たにできたわけではありません。
保険診療に回数制限があることの問題点
不妊治療が保険適用されれば、年齢も回数も気にせずに納得いくまで治療が続けられる、そう思っていた人も多くいたように感じます。そんなこともあり、SNS等では不妊治療における回数制限の問題点と撤廃の要望が度々話題にあがります。
では、保険診療の回数制限によってどのような問題が生じているのか考えてみます。
治療に焦りが生じる
多くの方から聞くのが「6回の回数が見えてくると焦りと不安に襲われる」という意見です。
不妊治療は保険診療であれば1回の治療費用は10万~20万前後(先進医療を含むともう少し高額になります)ですが、自費診療になると一気に100万前後の負担となります。
高額な自費診療での治療は難しいと考える人も少なくなく、保険診療の6回が終了した時点で治療の終結を考える人もいます。そのため移植回数が4回目、5回目になると、このまま妊娠出来ないまま不妊治療を終えなければならないのではないかという不安と焦りが心を占めてしま人も少なくないようです。
それでなくても不妊治療は鬱状態を引き起こしやすいと言われていますので、不安や焦りがより鬱への引き金になることも考えられます。
納得いかないまま治療が終了
移植6回は胚盤胞が出来る人であれば、周りが思っている以上にあっという間に過ぎてしまいます。もう少し治療を継続したいが、金銭的に厳しいという人も出てくるでしょう。
もちろんこの問題は保険適用になったから出てきたわけではなく、助成金時代であれば、そもそも移植6回までに費用が尽きて治療を断念した人もいます。中には費用を工面するために休み休み治療を繰り返す人や、中には数年治療を中断して、やはりもう一度体外受精にチャレンジしたいと言う人もいました。
保険診療6回終了と同時に治療を終わりにしても、数年後に「やっぱり…」と治療再開を考える人も出てくるかもしれません。納得いかないまま治療を終結してしまったことで、気持ちを引きずり続ける人もいるでしょう。またこのような気持ちがメンタルの不調をきたしてしまうことも考えられます。
焦らず納得いくまで治療ができる環境は当事者であればだれもが求めているものなのだと思います。
良好胚盤胞以外は破棄
不妊治療の保険診療は採卵回数でなく、移植回数によって回数が決められています。そのため、移植さえしなければ何度採卵しても、保険回数は減ることはありません。
そのため出来るだけ良好な胚を移植したいと多くの人は考えます。(きっと私が当事者でもそう考えたと思います)その結果、本当であれば妊娠に至ったかもしれないグレードの低い胚を凍結せずに破棄するということも起こりえます。
保険適用前であれば、グレードの低い胚は凍結しておき、再度採卵するということも出来たのですが、保険診療では貯卵が認められていないため、移植するか破棄するかどちらかを選択しなければなりません。
2個移植の増加
上記でも述べたように、不妊治療の保険診療は移植回数によって回数が決められています。ただグレードの低い胚を凍結せずに破棄するのも躊躇われるという人も少なくありません。その影響もあってか、保険診療開始後は、良好胚とグレードの低い胚を同時に2個移植する人が増えているという話を聞きます。
もちろん2個移植までは産婦人科学会も認めている方法にはなるのですが、双子の妊娠や場合によっては三つ子になってしまうことも起こりえます。
双子や三つ子の妊娠は、妊娠・出産のリスクはもちろん、産後の負担も計り知れません。もちろん自然妊娠や1個しか戻していない体外受精でも双子を妊娠する可能性はあるのですが、2個戻しで双子妊娠というリスクをあげてしまうことには慎重になる必要があります。
保険回数管理の煩雑化
助成金時代は、当事者が自分で申請する形であったため、そこまで複雑な管理は必要ありませんでした。(個々で申請しなければならない作業の煩わしさや所得制限がわかりにくいということはありましたが…)
保険診療後は個々での回数管理は原則必要なくなりましたが、そのぶんクリニックでの管理が煩雑化しているという話を聞きます。
特に転院は紹介状もしくは自己申告によって管理しているのが現状です。また、出産だけではなく、死産や流産(週数による)で回数がリセットされるため、その点も管理を煩雑にしている要因のひとつになります。
このようなことから、不妊治療の保険診療における回数制限撤廃の声は当事者だけではなく、医療関係者からも徐々に増えてきているように感じます
保険診療の回数と累積妊娠率の関係
ただ不妊治療は続けていればいずれ妊娠できるというものではありません。各クリニックが出している「累積妊娠率」のデータを見ると、多くのクリニックでは5回、6回目の移植あたりから数値の変化がほとんど見られなくなります。保険診療の回数制限にはこれらの数値も参考に決められているのだと思います。
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