
プレコンセプションケア冊子の炎上に思うこと
毎週note更新を目標に掲げたものの、何かしっくりこない…ということで、今まで通り妊活・不妊治療に関する情報を中心に不定期に更新していきたいと思います。
少し前の話になりますが、秋田県が公費で全県の高校2年生に配布したプレコンセプションケアの冊子の内容が炎上していました
炎上の引き金となったのは「年老いたしわしわの卵子(35歳以上を想定)」と熟女キラーを名乗る精子です。
この冊子自体は、2013年に作成されたものであり、ちょうど「卵子の老化」というワードに注目が集まった頃でもありました。そのため、「卵子の老化」を多くの女性に伝えるために、今では考えられない挿し絵が使われたのではないかと思います。
2013年…確かにそこまでこういう表現が問題視されなかった時代だったのかもしれませんが、改めてみるとなぜこの表現で問題ないと思ったのか?不思議でなりません。
ただ当時の配布対象は妊娠を考えている女性であり、高校生を対象として作ったものではなかったという情報もみかけましたが、この資料を未だupdateせずに配布し続けていることに正直驚きを隠せずにはいられません。
日本のプレコンセプションケア推進への違和感
私は日本が進めようとしている「プレコンセプションケア」があまり好きではありません。
プレコンセプションケアの定義について調べると、
「プレ(pre)は「〜の前の」、コンセプション(conception)は「受精・懐妊」で、プレコンセプションケアは「妊娠前の健康管理」という意味。WHOは2012年に「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義しています。」
ただこのプレコンセプションケアは、幼少期から当たり前の性教育が行われ、リプロダクティブ・ヘルス・ライツ十分に浸透している上に成り立つものだと思っています。
ただ今の日本ではこの性教育もリプロダクティブ・ヘルス・ライツも十分に浸透せずに、プレコンセプションケアばかりが取り上げられているような気がしてなりません。
確かにプレコンセプションケアを含めたヘルスケア教育は必要ですが、妊娠・出産ばかりにフォーカスがあたることに違和感しかありません。プレコンセプションケアは本来、人生教育、健康教育の中のひとつとして行われるべきものだと思うのです。
「産む」ことの押し付け
そもそも日本は女性に対して「産む」ことの押し付けが強い国だと感じることが多々あります。
「女性が子供を産まないから少子化が加速する」
政治家からこのような発言を何度聞いたことでしょうか?
最近でこそ、このような直接的な発言は減りましたが、少子化対策 女性の地方移住推進など名前を変えて「産むことへの圧力」は続いています。
特に地方は深刻です。少子化が進む地方の焦りが見え隠れしています。今回の秋田県もそのような例のひとつだったのではないでしょうか?
ただ女性が地方に残らない、地方で子どもを産もうとしないのは「プレコンセプションケア」の知識不足からではないはずです。
秋田県に限らず、女性の流出、少子化が止まらない地域は、そもそもここで産んで子供を育てたい・・・そう思える環境なのでしょうか?
プレコンセプションケアを推進すると同時に、まずはこれらを自問自答する必要があるのではないかと思います。
都市部と比較した低賃金による経済的不安、家事・育児・介護などの女性負担の偏り、変化しない地域の意識…これらを小さなころから肌に感じるからこそ、この地から離れたいと思うのです。この土地で子を持つことに希望を見いだせないから産む選択をしないのではないでしょうか?
どれだけ妊孕性に関する知識を得ても、社会や環境が変わらなければ人は子を持つ選択をする人は増えるはずがありません。
本来のプレコンセプションケアとは
確かに2013年、「卵子の老化」が話題になった時に、「もっと若い間に知りたかった」という声が多く聞かれたのは事実です。例の冊子もそのような声をもとに作られたのだと思います。
だからこそ性や妊孕性に関する教育は必要です。ただそれは女性の妊孕性だけを伝えれば良いものではありません。精子も年齢とともに減少し、DNAの損傷割合も増えるということを同時に伝える必要があります
そもそも不妊の原因は女性だけにあるわけではありません。不妊の原因の約半数は男性にもあります。生活習慣(肥満や喫煙等)が精子の妊孕性に影響もしてきます。
また男性が妊娠を先延ばしにしたり、不妊検査を受けることを渋る、男性側に原因があるにも関わらず当事者意識にかけるなんて話は、ご相談の中でもよく伺う話のひとつだったりします。どうすればパートナーが不妊治療に一緒に取り組んでくれるか?そんな話だけで、30分、1時間と過ぎていく事も決して珍しくありません。
プレコンセプションケアの定義に「妊娠前の女性とカップル」という言葉がありますが、わざわざ女性だけを強調せず、「妊娠前の男女」で良いのではないかと思うのです。
将来、妊娠を考えた時に「そんなこと知らなかった…」とならないように、知識や情報の提供は必要ですが、「女性に産ませるため」のプレコンセプションケア教育にならないことを切に願うばかりです
と同時に、リプロダクティブ・ヘルス・ライツの考えを前提にプレコンセプションケアが広まってほしいと思います。
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