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中森明菜「Rojo-Tierra-」

「Rojo-Tierra-(ロホ・ティエラ)」
作詞:川江美奈子、Miran Miran 作曲:浅倉大介 編曲:浅倉大介、鳥山雄司

2015年1月21日発売の49枚目のシングル曲。
前年大晦日のNHK紅白歌合戦でNYからの生歌唱が披露された。
またiTunesStore、レコチョクなどで先行配信され、
CD発売においても、オリコンにて20年振りのTop10入りを果たした。

この頃のヒット曲は…
オリコンも配信もごっちゃごちゃになっていて、
はっきり言って何が国民的ヒット曲なのか、
さっぱり分かりませんので、割愛します。
AKBグループとジャニーズが独占し、
B'zと声優・アニメ系ソングが出ては落ちてという状況だけ、
お伝えしておきましょう。

前作の配信限定シングル「Crazy Love」から5年、
「DIVA」から6年振りのシングルとなり、
長期休養からどのような形で新作を出してくるのかと思ったのだが、
見事な力作をドスンと出してきた。
もうこれは、他とは確実に一線を画する路線へ彼女は走り始めた。

彼女は変化を恐れない。
年齢による変わり様を素直に受け止めて、
現在の自分自身を如何にして最高のものに魅せるのかをしっかり捉えつつ、
最新の手法を臆することなく取り入れる。

この作品もAccessの浅倉大介氏を迎え入れ、
最先端のEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)に彼女の低音を小気味よく乗せている。
彼女のプロジェクトに長く携わる鳥山雄司氏も加わり、
無機質になりがちなシンセサウンドに、アフリカ調の野性味を加えて
「生きることの喜び」を見事に表現した。
彼女が80年代に挑戦した「歌は楽器の一部」というテーマも、
この作品では、彼女の現在の声量も偶然にその意図と一致して、
力強い歌声も音楽の一部として見事に調和している。

「女の情念」「深遠な恋愛」を歌い続けていた彼女は、
これからはこういった「生きる意味」を歌っていくのかも知れない。
周りの雑音など気にしない。
過去には決して縛られない。
生き続けて歌い続ける。そのこと自体に意味がある。

当然僕は紅白を録画しながらも、生でその姿をしっかりと確認した。
歌唱前の衝撃の小声には、
正直「あらあら、やっちまった」と思ったのだが、
マイクに向かった瞬間の表情の切り替わりで、
その不安は絶対成功するという確信に変わった。
そしてそのパフォーマンスは、
「私の歌を歌う」という決意をひしひしと感じさせた絶唱だった。

ヒットできるかなど気にしなくても、もういいと思う。
中森明菜しか歌えない歌、今の彼女でしか歌えない歌を歌えばいい。
今のJ-POPシーンでは、そもそも国民的ヒット曲など存在しないのだから。
分かる人だけに分かればいい、そんな時代になっているから。
時に休んでもいい。それでも次の「自分らしさ」を追求し続けてくれれば、
僕たちファンは、そして新しいファンは必ずついてきてくれる。

なおこの曲を歌うのは、想像以上に難しい。
低音で早口な歌詞が単調に続くだけかと思いきや、
いきなりサビで高音をパッと出さなければならない。
彼女ならではの感情移入が、
このような曲でさえもしっかりと込められている。
つまり、近年の曲によくある「誰もが歌える曲」という視点を
一切無視している曲だ。
しかも6分以上という長い曲。
息が続くのか、挑戦してみても面白いかと。

【2016/11/12追記】
TOKYO FM 土曜20時30分から放送される
篠原ともえさんがパーソナリティの「東京プラネタリー☆カフェ」に、
2016年10月22日放送分で作曲担当の浅倉大介氏がゲスト出演され、
この楽曲のレコーディングにまつわる
明菜とのエピソードを披露されました。
https://www.tfm.co.jp/hoshi/archive/index.php?blogid=224&page=361" にその内容が載っています。
篠原さんの言葉を借りれば「ありがとう! 大ちゃん!!」って感じです。
これがなければ、この出来には繋がらなかったのだと素直に思っています。

(※この文章は、作者本人が運営していたSSブログ(So-netブログ)から転記し加筆修正したものです。)


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