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いい夫婦の日
「和代さんと旦那さんの夫婦愛に感動しました」
なんていう言葉をいただくことがある。
…そんなことは、とんでもない話で、
私達夫婦は、決してお手本と呼べるような夫婦ではなかった。
なれそめ。
私と旦那君は同級生である。
一時は、同じ保育園、小学校に通っていた。
(私は周りをよく見るタイプのためか、同じクラスになったこともなく話したこともない彼のこともちゃんと憶えている。ちなみに、彼は全く私のことを認知していなかったけど。)
小学校の途中で転校した彼とは、大学2年の時のバイトで知り合うことになる。
ガソリンスタンド。
雨の日のお客さんが来ないスタンドで、
何の曲だか忘れたがイケてる音楽を聴きながら、
二人、目の前を走る国道をただ眺めていた、その時に、
まだ付き合ってもいない横の男子大学生を相手に、
「こういうシチュエーションから、物語とは始まって行くんだな。」
と思った…ハタチの私。
恐ろし。
そうして、私を好んだ男性の出現や、彼に馴れ馴れしい女子の出現など、
お約束の試練を乗り越え、
二人は付き合うことになり、
それぞれが大学を卒業し、
それぞれが就職し、
それぞれが没頭できる世界と出会った。
私は教員で、彼はカフェ経営。
互いにそれぞれの人生を思い切り生きることが、
幸せなんだと思っていた。
「一つの個体」と「一つの個体」が同じ箱に入る、
それが夫婦だと思っていて、
重なり合う時間があれば一緒に過ごす、それでいいと思っていた。
休みも別々、お金も別々、
お互い、朝から夜まで、仕事のことばかり考えていたし、
お互いがワーカホリック。
お互いが自分の身を立てることしか考えてなかった。
そして…彼は、倒れた。
夕べ、眠る前に、本日夕食の恵方巻の具材の話になった。
「マグロとアボガド、レタス…」
「俺とミサキ(次男)はアボガドは嫌い。」
「じゃあ、偏食組二人はアボガドは無しね。」
「かんぴょうは?あと、ピンクの甘いやつは?」
「そういうの好きやったっけ?それ助六やない?」
「別に好きではないけど、言っただけ。」
「意外とオールドスタイルだね…」
あんなに別々だった二人が、
今は恵方巻一つでこんなに話し合う。
倒れたことやこれまでの夫婦の歩みを、
失敗だとも後悔だともこれで良かったとも、
何のジャッジもしていない。
ただ、今年の節分は、2月2日。
「いい夫婦の日」だそうだ。