僕が「正しい動き」を指導しない様にしている理由

子どもと遊ぶときに気をつけていることの一つに、「正しい遊び方、フォームを矯正しない」ことを意識する様にしています。


運動が上手になって欲しいと思っていると、どうしても正しいとされているやり方で運動を指導しようとしてしまいます。


しかし、大事なのは、「正しいやり方を教える」ことよりも「なぜそのやり方で行っているのか」を考えるのが大事なのです。


子どもは発達するために自分の動作を選んでいる

なぜ子どものやり方が大事になるのかの理由の一つとして、「子どもが発達する過程でその動作を行っている」ことが挙げられます。


子どもの運動が発達するために大事な要素として、その運動が成熟する必要があります。自分に必要な運動を経験し、その運動を行うことで自身の発達運動が成熟するのです。


例えばキャッチボールを例に挙げてみます。スポーツの基礎になるキャッチボールですが、実は発達上では高度な動きの一つになります。


野球の投球をイメージして欲しいのですが、ボールを投げる際、ボールを投げる手を反対の足を前に踏み込みながらボールの投球を行うかと思います。この動作においては利き手とその反対側の足、対側で運動を行う必要があるのです。


人間の運動の発達には段階があります。発達の段階としては、

①同部位の運動

②同側の運動

③対側の運動

の3段回の発達をします。


同部位は両手、両足や上半身・下半身といった運動、同側は片側の手足の運動、そして対側の運動は反対の手足の運動になります。

同部位の運動は赤ちゃんの時の意味のない動きから始まり、対側の運動は歩くといった高次の運動の一つとなるのです。


キャチボールはこの発達段階が分かりやすく出てくる運動の一つになります。同部位の運動を発達させたい子は両手で持ってボールを投げる。同側の運動を発達させたい子は同じ側の手足を前に出して運動を行う。そして対側の動作の運動まで発達している子は大人の様に対側の手足を使ってキャッチボールを行う。


その子の発達段階に合わせて運動を自分で選択しているのです。そしてその発達段階にあった運動を行うことで運動をより発展させようとしているのです。


大人から見るとなんでお手本の様にできないのかと思ってしまうかもしれませんが、実は子どもにとっては自分の発達のために洗濯している動作だったりするのです。



「正しさ」に囚われると自由がなくなる

そしてもう一つの大事な理由が、大人が強制しすぎると子どもの心身の自由さが損なわれてしまうからです。


僕ら大人は何かを教える時に、必要以上に型というものに当てはめようとする傾向がある様に感じます。


型に当てはめることで動作は上達するかもしれません。しかし、子どもの頃はどんな方法や動作で遊んだとしても、どの様な形でも楽しかったはずです。どんなふうに遊んでいても楽しいと感じていたものが大人になるとともに正しいやり方・遊び方を強制する様になってしまいました。


ルールは円滑に安全に遊ぶために大事になるのですが、「正しさ」に矯正されると、それは思考や動作の自由に囚われてしまう形となってしまうのです。


また大人が適切な動作をできないことを子どもに指導しすぎると、子どもは自分はできないといった自尊心の低下を引き起こしてしまいます。僕の経験ですが、子どもの頃にキャッチボールができなくて親にやり方を厳しく指導されたことがあります。親はできる様になって欲しいと思ってしていたことだと思います。しかし当時の僕は恐怖心が強く、キャッチボールの時間が怖かったことを覚えています。


この様に例え親が良かれと思ってしたことでも、子どもの受け取り方が違うことが往々にしてあるのです。


この様な理由から、子どもに運動の正しいやり方を指導しすぎない事は大事だと考えています。


正しさよりも、子どもに必要なことを知り、相手を知ろうとすることが大事だと考えています。

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