お婆ちゃんの空
お婆ちゃんが突然亡くなった。
夜中、階段から大きな音を立てて落ちてしまった。でも、その怪我をして入院したからでなく、意識もはっきりしていて会話したばかりだったのに、簡単に言えば老衰だったんだろう。
その日は介護疲れの溜まっていた家族から、お婆ちゃんの世話を任せられていた。
早朝4時ころのまだ暗い時間、なぜか僕は台所で、あまり作ったこともないシンプルな和食料理の幾つかの仕込みをしていた。
大根とかぼちゃの煮物、名前も良くわからない大豆と鶏ひき肉、甘辛のお肉料理にご飯とお味噌汁、、、。
ゆっくり味が染みるように、優しく幸せを感じる味になるように。
お婆ちゃん、ごめんね。
お婆ちゃん、ありがとう。
お婆ちゃん、、、、。
お婆ちゃんが亡くなった時に富士山の麓にいた母は、日頃心身の疲れを癒やされながら、お婆ちゃんの悲報を聞いた。
悲しみの中にも、生まれた生きる感謝と決意。
空には突然飛行機雲が現れ、青い光の点がどの写真にも残っていた。
ぼくはこの深い悲しみを受け入れられていない。
何も何もできなかった。
何も何も、、、。
さっきまで話してたのに。
だけどお婆ちゃんの亡骸が横たわる側で、呆然とするぼくの心に、若かがえったお婆ちゃんの声が響いてきた。
「もう男が男を好きだなんて、とっても面白いじゃない。
人生思い切り楽しみなさい。
優しくて、可愛らしいあなたらしく生きることが一番大切なのよ!
応援してるから、頑張んなさいよ!!!」
今は4:22分。お婆ちゃんに食べさせた料理の仕込みをしてた時間だ。