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【米国EC運営】 Delivered not Received の原因と対策

米国で日本製品の輸入販売業を営んでいる杭原です。販売代理店事業や米国進出支援等を通じて、日本製品の米国での販売拡大に取り組んでいます。

米国でのEC運営において発生する問題の一つ、「Delivered not Received」。商品の配達後に購入者から「トラッキング情報は配達済みとなっているが、荷物を受け取っていない」という連絡を受けるというものです。米国では置き配が基本であるが故に、日本以上に発生します。

マーケットプレイスでの取引であれば最終的には運営側が介入してくれますが、自社サイトではアメリカ人カスタマーを相手に全て自ら解決をしなくてはいけません。

こうした問題に対しては、個別対応で時間と心を消耗するのではなく、ルールを設定し数値で捉えることが重要です。運営ポリシー、配送サービス選定、カスタマー対応、保険など各段階で対策し、それでもそのファネルを通り抜けて発生したクレームに対して、その発生率やレピュテーションリスク、対応コストを天秤にかけて返金等の金銭補償を検討する必要があります。

今回はそんなDelivered not Received問題の原因と対策を解説します。

原因

改めて、米国では置き配が基本です。

受取署名には追加料金が発生します。戸建てであれば、配達後にドアをノックしてくれる場合もありますが、毎回ではありません。多くの場合に配達完了メールが送られますが、配達写真がついてないことも良くあります。

Delivered not Receivedの主な原因は以下の通りです。

原因① 住所間違い

購入者が注文時に誤った住所を入力することで発生します。単純な間違いや引っ越しなどを理由にごく稀に発生します。発生率は低いです。

原因② 家族等による受け取り

家族、ルームメイト等が受け取っており、そのことが購入者本人と共有されていないケース。アパートのレセプション等に配達されており、連携ミスにより発生するケースもあります。先に確認して欲しいところではありますが、稀に発生します。

原因③ トラッキング情報の更新ミス(USPS)

これはUSPS(郵便局)での発送時のみ発生します。実際にはまだ配達されておらずUSPSの施設内に荷物があるにも関わらず、トラッキング情報だけ配達済みに更新されてしまうものです。通常は1-2日後に実際に配達されます。原因はUSPS施設内でのスキャンミスによるものらしいです。配達期間を短く見せるための人為的な操作を疑ったこともありますが、真偽のほどは不明です。意外と発生します。

原因④ 盗難

玄関先に置き配された荷物が盗難されるものです。Porch PirateやPackage Theftと呼ばれ、防犯カメラに記録された盗難の映像がソーシャルメディアで拡散されるなど、オンラインショッピングの普及とともに増加し社会問題化しています。防犯カメラや宅配ボックスの設置などの対策をとる人もいます。
最終的に荷物の所在が判明しないのが、原因④⑤⑥です。その中で何が真実なのかはセラーとして最後までわかりせんが、盗難は主因の一つであると考えられます。

原因⑤ 購入者の詐欺

実際に商品を受け取っているにも関わらず、購入者が虚偽の申告をしてくるものです。購入者が商品をすり替えて返品をするAmazonでの返品詐欺などと同様に、オンラインショッピングの隙をついて利益を得ようとする人は残念ながら存在します。ダメもとで取り合えず言ってみる、何か得られたらラッキーだ、という気軽さで連絡してくる人も多いと感じます。
Redditやコミュニティ内で情報が共有され、ターゲットにされることで一時的に発生率が上がるようなケースもあります。
対策部分で後述しますが、購入者への一次対応の工夫で炙り出せるケースもあります。発生率は高いです。

原因⑥ 配送業者のミス

配送業者が誤った住所に配達したこと等により発生するものです。UPSはトラッキング情報に配達写真が添付されますが、写真がついていない事や不明瞭な写真(何だか分からないブレブレの写真や真っ黒な写真など)であることもあり、確実に配達されたと証明できない場合もあります。USPSには配達写真を残すサービスはありません。

対策

以下は、あくまでDelivered not Receivedによる損失を減らすために取りうる対策の羅列であり、全て実施することを推奨するものではありません。対策の中には購入意欲を削いだりレピュテーション低下につながったりするものもあります。商材や顧客層により発生率も異なるため、自社に合わせた対策の組み合わせが必要です。

対策① ストアポリシーの設定

まず、セラーとしての責任は購入者が指定した住所に商品を届けることで完結することを明確にする必要があります。つまり、配送途中の紛失等に対してはセラーが対応するが、配達以降の紛失に対しては責任を負わないということです。

ポリシーに記載するだけでなく、商品説明文、購入画面、Q&A等に記載し実際に購入者の目に触れるようにすることも有効です。実際の対応と必ずしも一致する必要はなく、明記することで「原因⑤ 購入者の詐欺」の抑制にもなります。

対策② 配送サービス選定

米国内の通常サイズ商品のエコノミー配送はUPSとUSPSの2択です。Delivered not Received対応という観点では、UPSがベターです。UPSはクレーム対応もUSPSよりスムーズで、配達写真も撮ってくれます。USPSは対応も悪く、写真もありません。

ただし、小型軽量品(1kg以下)の送料はUSPSの方が安いです。盗難の可能性の低いポスト投函可能な商品、低単価商品などはUSPSを使用することにメリットがあります。USPS Ground Advantage(トラッキング、$100までの保険付き)がメインで利用するサービスとなります。

大型、高単価の商品はUPSの方が安心感があります。トラッキング、$100保険、配達写真のつくUPS Groundの利用がメインとなります。UPS Groundよりも配達期間が+1-2日のUPS Ground Saverという更に料金の安いサービスもありますが、これは目的地エリアまではUPSが運び、その後引き渡され最終配達はUSPSが行います。配達写真はつかずクレーム相手はUSPSとなるため、利用にあたっては注意が必要です。

両社ともにオプションで配達時の受取署名サービスを追加できます。USPS$4弱、UPS$6弱が追加でかかるため、複数注文時など購入金額に合わせて利用を検討したいところです。

なお、大型、高単価の商品であっても、ハワイ、アラスカ、グアムやプエルトリコなど離島はUSPSの方が送料メリットがあることが一般的です。

対策③ カスタマー対応

(一次対応)
購入者から荷物が見当たらないという連絡を受けた場合の一次対応としては以下の通りです。

  • 発送住所があっているか(原因①)、家族やルームメイトが受け取っていないか(原因②)の確認を依頼

  • USPSの場合、配達直後の場合は1-2営業日様子を見てもらう(原因③)

  • UPSで配達写真がある場合は、発送先住所の写真であることの確認を依頼

  • 『それでも荷物が見つからない場合、再度連絡して欲しい。再度連絡を受けたら、配送会社にクレームを提出する。配送会社が調査のために購入者に連絡することもあるが、協力して欲しい』と事前に伝達

  • 配送会社の調査により、商品は配達されたと結論付けた場合、運営ポリシーにより配達後の紛失には責任を持てないことを事前に伝える

ポイントとしては、確認して再度連絡してもらうアクションを挟むこと、次のアクションはクレーム提出であり配送会社から購入者に連絡がいく可能性があること、商品交換や返金についてはこの段階では触れないこと、です。

これにより「原因⑤ 購入者の詐欺」の場合、相手が諦めて連絡してこなくなることがあります。本当に困っている購入者を切り捨てることになってしまっては本末転倒ですが、不正のターゲットにされている場合などは簡単に返金に応じない姿勢を示すことも有効です。

対策④ 配送会社へのクレーム提出

対策①~③を経てもやはり荷物が見たらない場合、配送会社へクレームを提出します。ここまで進んだ場合、原因④~⑥の中でどれが真因かは分からず、顧客優先に振り切って対応するのが良いでしょう。

UPSで配送写真がある場合、クレームが通る可能性は低くなります。有効な配送写真がない場合、セラーからのクレームだけでなく、購入者からもクレームを提出してもらうと通る可能性は高くなります。

クレームが通り実際に補償されるまでは月単位で時間がかかるため、クレームを提出した時点、Rejectされなかった時点などで購入者への返金を検討する必要があります。レピュテーションリスクを考慮すると、クレーム提出まで進んだものは全て返金対象とするのも一つの考え方です。

対策⑤ ポリスレポート

クレームが通らず補償されない場合、持ち出しでの返金を検討することになります。

取りうる極端な対応としては、クレームが通らない=配送会社が荷物は正しく届けられたと結論付けたということで、ポリシー通りに配送後の紛失には責任を取らないとすること。ただし、この時点までに何度か購入者とメッセージを交わしており、ここで納得してもらうハードルは高いです。

もう一つあるとすれば、詐欺ではないことへの牽制として警察に届け出てもらい、そのポリスレポートを提出すれば返金するというもの。本来、配達後に盗難されたのであればセラーより警察に言うべき問題なので論理としては通りますが、世間一般の感覚とは乖離しているので押し通すには気力が入ります。

最後に

冒頭で説明しましたが、自社に適した対策を採用したうえで、発生率とレピュテーションリスクを考慮し、金銭負担をするラインを設定することが重要です。

理屈では配達済みになっていればセラーは責任を負わないと全て突っ撥ねることもできますが、もともと返品文化があるところにAmazonのカスタマー優先主義にどっぷり漬かっている顧客に対して、強く出すぎるのも危険です。

長期的には、リピーターほど発生率は低くなるため、独自の優良な顧客基盤を築くことが最大の対策になるでしょう。

弊社では、日本企業のEC運営を含んだ米国進出支援を行っております。ご質問等あればお気軽にお問合せください。

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