「電力会社の憂鬱」第6話
第二章 活躍と暗躍
大異動
海野はアメリカから帰国するとすぐに小村社長から辞令を受けた。
社長の小村純一郎は、小柄だが筋肉質で眼光鋭く威厳に満ち溢れている。
業務の説明の際でも、担当者が少しでも誤魔化そうとすると、一瞬で見抜く頭脳と眼力を兼ね備えている。
ただ笑うと、誰もがホッとするような優しさも感じさせる。
「君の頑張りはいつも本社から見ている。
『異色』らしいけど、これからも現場ファーストを貫いて欲しい。」
にやりとしながら辞令を海野に渡した。
「ご希望に沿えますように精一杯努力させていただきます。」
海野は緊張気味に応えた。
「単身赴任が続くが、ご家族は大丈夫か。」
「はい。原子力工学を出て電力会社に入った以上、それは納得の上だと思います。」
「早く本社から現場の指揮を取れるようになるまで頑張って欲しい。」
「ありがとうございます。光栄です。」
意味深である。
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