「電力会社の憂鬱」第24話
ビックチャンス
本社人事課長席で、夢子はひそひそ声で電話をしていた。
人事案件などでよくあることなので、訝しる者はいなかった。
「理子です。久しぶり。」
「そっち、大変なんだって?
あなたが行くと、必ず事故ね。」
「人聞き悪いこと言わないでよ!
あなた、酒井秀樹って知ってる?」
「忘れもしません。同級生です。
あの村田事件の前に会ってた奴よ。
どうかしたの?」
「今回の事故調査メンバーの主査だって。
いまは安全委員会に所属しているみたい。
今晩あなたの地元で一泊して、明日朝こっちに来るみたいなんだけど。
会ってきてくれない?」
「あの人、昆虫みたいな顔してて苦手なの。
どうしても?」
「昆虫ってどんな顔?」
「蜘蛛の足を全部取ったみたいな顔。」
「わけわかんない。
しかも蜘蛛は昆虫じゃないし。
ビッグチャンスよ。会ってきなさい!」
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