見出し画像

「電力会社の憂鬱」第13話

事故原因

約1か月が経過した。
PR室に陣取る報道陣は、海野の裁量のおかげか落ち着きを取り戻し、淡々と推移を見守るという雰囲気になっていた。

調査結果は次のようなものだった。
ITVにより日本海2号機蒸気発生器細管全数を調査。
うち1本が完全に破断。
破断細管の破断口から、もう片方の円形の破断面を確認できた。
蒸気発生器細管には激しい流量・流速に耐えるため、振れ止め金具が設置されている。  
その振れ止め金具が、四つ葉重工で細管施工の際、一部間違った位置に挿入されていたことが直接の原因になった。
破断細管の前回探傷検査結果に異常が見受けられなかったことから、今回運転時の接触により急激に摩耗したものと思える。
事故時の運転対応は適切であり、ECCSが作動したことも設計通りのパフォーマンスである。
事故収束までの間に若干の放射能の放出はあったが、環境への影響を与えるものではなかった。

ここから先は

5,157字

¥ 100

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

是非サポートをお願いします。小説の構想はまだまだありますので、ご購入いただいた費用は、リサーチや取材の経費に使わせていただきます。