「電力会社の憂鬱」第19話
大逆転
小村社長の原子力本部長就任、海野の原子力担当副社長兼原子力本部副本部長就任のニュースは、瞬く間に全社に拡散した。
というより、わざわざ海野の部屋を用意させる名目で、中川に噂を拡散させるという、小村の術策だったのかもしれない。
どの部門にとっても刮目の事実であった。
「原子力本部設置検討会」に臨むスタンスも大転換せざるを得ない。
各部門とも、第11回に向けて打ち合わせ会議を重ねていた。
こうなると、海野にとっては、第11回の「原子力本部設置検討会」は簡単な会議であった。
同時に原子力本部を設置するかどうかを決める会議であるはずが、設置後のトップとナンバー2が決まっているという、妙な会議でもあった。
会議は始まった。
メンバーは1回目と同様、各部門の部長が集まる、錚々たる会議となった。
最初にいつも通り、企画部の依田が口火を切った。
「前回海野主査から、原子力本部構想を潰す前提ではなく、成立させる前提でどうすればよいか、各部で検討して欲しい。
というご要請がありましたが、各部いかがでしょうか。
ご発言順位ご自由でお願いいたします。」
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