原作再現はできたけど微妙な冒険のまま打ち切られた実写版【ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章】
ジョジョの微妙な冒険で打ち切られた実写版。レビュー。
同じ内容を動画でも語っているのでこちらでもどうぞ。
ただのコスプレ映画と巷では酷評されていた実写版ジョジョの奇妙な冒険。
舞台はファンにも人気である第4部の杜王町を設定し、実写化する意義は確かにあるが映像化する上ではそこそこ難しいところをチョイスしてしまったのは正直なところだろう。
実際に見たところ役者陣は本格派の顔ぶれが揃っており、コスプレ映画と言われるほど容姿や演技力で邪魔になるような酷さは感じられない。
多少オリジナルな展開はあるもののシナリオ自体も原作に忠実で、映画制作陣によって勝手に原作を酷くクラッシュさせるということもなかった。
ではなぜこれほどまでに不評だったのか。
それは、とにかく実写化する上での見せ方の解釈がスカスカだったということである。
実写作品全体に言えることでもあるが、原作をただ忠実に「再現」さえすればいい実写作品と思えるかといえば全くそうではない。
原作では想像しか出来なかった、人間による肉声や色彩、振る舞い、アクションによる動きの表現解釈を期待して私たちは観たいと思う。
俳優の演技だけでなくそこを綺麗にかっこよく見せるカメラワーク、そして音楽も同様でアニメや原作では感じられなかった新しい解釈に対して私たちは実写映像に期待する。
それまで成功してきた作品を思い返してもそれが原作に忠実だったから感動したのではなく、実写版だからこそ表現できる新しい解釈に対して感動する人が多かったからである。
しかし、ジョジョの実写版には残念ながらその解釈が見られず、ただ原作を忠実に再現することに力を注いだだけにしか思えなかった。具体的に言えば作品のシナリオ上意味のない山岸由花子の登場、アクションとそれ以外の話にメリハリのないテンポの遅いシナリオ構成、アクション中もCGと説明セリフだけが交差して緊迫するカメラワークや音楽も全くなかった。
後半から退屈してしまう人が多かったのもこの辺が原因だろう。杜王町を再現するためにスペインでロケを敢行した割には重要なシーンはスタジオ撮影が多く、視覚的に何か訴えられるものも少なかった。
原作の世界観を再現することに予算を注ぎ込んだのは理解できるが、その上で実写作品における新しい解釈が何も見えずにただただ暗くて退屈な映画に終わってしまったのがこの映画の問題点であった。
終盤では仗助と虹村兄弟の前になぜか吉良吉影のシアーハートアタックが出てくるオリジナル展開になる。
静かに暮らしたかったはずの吉良吉影の原作設定から逸脱する展開と、スタンドを素手で触れるオリジナル解釈を見ると、この後の続編が打ち切られたことを胸を撫で下ろしたファンは多かっただろうと思える。