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自然の異変から生き延びるとは何か【映画「ハプニング」】
ハプニング/あらすじ
健常だった人間が言語と方向感覚を喪失し、その後自らの命を絶つという事件が続発。そんな混乱の中、高校教師の男性は家族を連れて安全な場所に避難しようとする。しかし、彼らの行く先でもその異常現象が起き始める。
家族や仲間たちとともに、都市から離れ安全を求めて田舎へ逃げますが、現象は広がり続けます。やがて、現象の原因は植物が放出する神経毒である可能性が示唆されます。この毒は人間の攻撃性を抑制する部分に影響を与え、人々を自殺へと導くという設定です。エリオットたちは、次第に追い詰められていき、最終的には自然に身を委ね、奇跡的に生き延びるという結末を迎えます。
評判
『ハプニング』は公開当初、賛否両論の評価を受けました。特にM・ナイト・シャマラン監督の過去の作品『シックス・センス』や『サイン』と比べて、物語の展開や結末が不明瞭だと感じる観客も多く、批評家からは批判的な意見が多く寄せられました。
一方で、環境問題や人間と自然との関係をテーマにした点は評価され、特に環境保護や地球温暖化など現代的な問題と結びつけて議論されることもありました。
映画の最大の特徴は、シャマラン独特のサスペンスフルな雰囲気と、人間の無力さを強調した描写です。しかし、観客によってはその「現象」の原因が植物であるという設定が突飛であり、説得力に欠けると感じられた部分もあります。
自殺がテーマになった理由
『ハプニング』で自殺が中心的なテーマとして描かれているのは、人間が自然に対していかに無力であるかを象徴するためです。映画の中で、人々は自然現象によって強制的に自ら命を絶つ行為に至り、これにより観客に強烈なインパクトを与えます。
自殺の描写は、シャマランが人間の心理的脆弱さや、自然が人間に与える絶対的な影響力を示そうとした意図があると考えられます。また、現代社会の抱えるストレスや環境問題に対する無意識的な恐怖が、映画の中で形となって表現されているとも言えます。特に、現代人が制御できない力(自然や環境の変化)に直面したときの恐怖感が、映画全体を通して描かれています。
さらに、このテーマは現代の環境問題とも関連し、地球規模の異常現象や環境破壊に対する警鐘としてのメッセージが込められているとも考えられます。シャマランは、この映画を通じて、人間が自然に対していかに無力であり、また自然が破壊されれば人間にも深刻な影響を及ぼすという警告を伝えようとしているのかもしれません。
シャマランらしさは見える箱の作り方だったが、物語としては薄い。
ただこうした見えない自然の脅威が来た時に人はどういう風に動き、どういう人間が早く死ぬのかという視点で見れば、数年前のパンデミックを想起しながら面白くなるだろう。
彼らは安全な地域に逃げるためにまずは現在地からは移動したが、電車内で大集団で移動しているのはまずかった。後に大きな集団で固まっているものからウィルスに襲われるリスクがあることも描かれる。
自然が人間を脅威としてみなして送るシグナルはどの物語でも集団や組織が大きく固まるほど顕著になるらしい。
また主人公の親友は移動の際に分かれた妻を探しに行ったことであっけなく亡くなる。彼は子供を主人公に預けて場を去っていたが、明らかに行ってはいけない場であることは本能的に本人も察していた。
自らが生き延びれる可能性や未来を取るか、自然的な勘に反して焦りから生む自らの感情に従うか選択の裁量も普段の生活から現れるということだろう。共に移動する前から主人公に言ってはいけない余計なことを言う選択を敢えて取るところからも、生き延びる勘には従えないあの場面に少し繋がっている気はしている。
そして中盤以降緊急時は必要な移動以外はしないこともリスク回避に繋がるのも描かれている。主人公らは家に匿ってもらうため平和的に交渉を望むがその感覚と対立する幼稚な人間は人からもリスクととらえられ銃で撃たれるのも今では暗喩的なことを感じる
謎怖要素としては残念だが、自然からの驚異が来た時にどういう人間が自然や人間にとってリスクであるかが象徴される意味では答え合わせ的にもなる作品だろう。
制御できない自然脅威も冷静に最後はシグナルを感じ取れる人間から生活が送れる対比も見せながら終わった。
結論
『ハプニング』は、その独特な設定とテーマにより、観る人によって大きく評価が分かれる作品です。環境問題や人間の脆弱さ、無力さを描くことで、観客に自然との関係を再考させる意図がありますが、物語展開や結末に関しては意見が割れました。それでも、テーマとしての「人間と自然の関係性」や、制御できない力に対する恐怖心は、この映画の重要なメッセージとして受け取られています。