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ネトフリ実写版を踏まえて読む新一とパラサイトの共生【寄生獣】

先日ネトフリにて寄生獣 ザグレイが配信され早々話題になっている。

自分はネットフリックスにも入っていないので予告でしか情報が見えていないが早速シーズン2も見える綺麗な出来なのはうかがえる。さすがサスペンスジャンルにも脂も載っている韓国制作なだけある。

ドラマの軽いネタバレも食らったのでそれも踏まえてもう一度原作を観たら一貫するテーマである人間とパラサイトの「共生」と共通する人間における振る舞い、そしてシーズン2にどうつながっていくか考える。


あらすじ
地球に突然、謎の寄生生物「パラサイト」が出現。それは知性を持ち、人の脳に侵入して体を乗っ取り、他の人間を捕食する。人知れずパラサイトが増殖していく中、ごく普通の高校生・新一に潜り込んだパラサイトは脳への侵入に失敗し、右腕に居座ってミギーと名乗って彼に共存を持ちかける。

共生における感度の高さを持つ女性キャラたち

改めて原作を読み直すと出てくる女性キャラクターたちが異様にパラサイトの存在や共存という思索について感度の高さを持っていることをうかがわせる。

物語中盤ではすでにパラサイトの存在は政府や警察の上層には認知されていたがパニックを避けるために国民に公表することは避けた。これは密かに人間に寄生し人間を食さなければ生きられないパラサイト側の怒りにも配慮した対応だった。

勘違いされがちだが人間側はラストまでは特にパラサイトを対立構造に持っていく気はそもそもなく、突如きた寄生獣側の中に地球との共生の意志があるかが問われるのが話の肝だった。

その中で人間ではない違和感の存在に気づき始めていく加奈や里見、そして唯一寄生獣の中で人間社会に適応する未来を見据えていた田村涼子と、

現世の違和感や先を見据えて動かしているのは全て女性による感度の高さに象徴されていく。

そして時に行き過ぎた人物はそれが新一の枷となり、唯一の寄生獣の中間的な存在として彼の孤独に勘づいた物は母性として発揮し救いになる。

ネトフリにおいてはそんな役割であった女性が主人公となってリメイクされたが、それが男性にはない感度が聡明さとなって発揮されるのだろう。

新一の場合は人間社会の適応を望むミギーと会話できることによってその聡明さも担われたが、ドラマ版ではこの会話が殆どなく二重人格によって発揮されるらしいのも面白い。

これは男性ではできないルールで新一や他の寄生獣に観られたように合理性が先に働く分、追い込まれたらパラサイトを切って断絶するか寄生獣に振り切ってすぐに物語が終わってしまう。

ディストピアにおいて不安要素を察知する能力に長けるのはどの世界でも女性である。それが行き過ぎるところまで関わるか聡明に立ち振る舞うかで変わるかも、寄生獣においても改めてよく描かれているのである。


組織管理の脆さと田村涼子の存在

パラサイトは人間を捕食する上社会問題化されていくリスクを学び選挙で自治体を乗っ取り、人間を管理できる立場にいることで組織化していく。

生物学上の進化として同種で組織化していくことは自然ではあるが、目的は人間の捕食の管理であることは関わっている田村涼子以外のパラサイトは何も変わっていなかった。

生き抜くうえでの共生という発想はなく常に対立構造を生み出そうとしているのも彼らである。人間社会に紛れても獣的な本能は何も変わっていない。

その中で変種であったのは田村涼子として生きたパラサイトである。
序盤から未知の脅威として描かれていた時から寄生生物を生物学上の視点で思索し、未来を見据えてコミュニティを形成したのも彼女だった。

この辺も中身はパラサイトのため女性特有の発揮として持つべきか疑うが、自ら望んで子供を持ち人間性を獲得していくことで確信していく。

それらの上で彼女が下した結論は人間と寄生生物は家族であるという。

先見性と合理性を兼ね備えた上ではパラサイト組織としてのリーダーとしても適任すぎた存在で今見ても光るが、30年前の原作ではそういう発想は定着するはずもないし青年漫画の展開としては冷めたかもしれない。

この作品全体の帰結にも繋がるが最後はどの生物においても心の余裕がある生物にしか共生や家族という概念が生まれてこない。それが人間になろうとした田村とミギーの象徴だった。

自己利益と感情で動くパラサイトと新一が対比的に描かれる部分が多かったのも寄生獣と人間は大して変わらないという魅せ方も対立構造が起きないこの作品の良さであり奇妙なところだろう。

最終的に共生というテーマの結論もゆるやかな変化にしかならないという曖昧さを残したまま終わったのも良かった。田村が倒されて9割がた終わっていたところで変な派生をしなかったことも含めていい作品だった。


ドラマ版シーズン2は新一の救済なのか

ネトフリでは原作のイメージとは変わって、特殊部隊と寄生獣の対立シーンもメインになるあらすじや予告をちらほら見る。

噂では原作と同じ時間軸で動いている話らしいので韓国社会の特有性もよく見られるのかもしれない。

シーズン2では新一がそのゴタゴタを救済する使者として登場する可能性もあるのだろう。

韓国ゾンビでも社会的に弱い立場にいる人間のメタとしてストーリー性を持たせる最近の傾向としてはあり得る。

10巻で終わった派生のインフレとして対立構造の立ち位置を持ち出すのは間違っていないけど、原作崩壊しない程度に主人公が関わることを祈る。





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