ジョンウィックにも繋がらない魅力の薄い人物たちの群像劇【ザコンチネンタル:ジョンウィックの世界から】
誰も観ていないジョンウィックのスピンオフ「ザコンチネンタル」を見た。
想像通りジョンウィックに匹敵する人物たちの魅力もなければストーリーもコンチネンタルで牛耳ったウィンストンの過去を掘り返している割に前日譚として関連を感じるような作品でもない。スピンオフとして制作した意義は良くわからないものだった。
ジョンウィックの屋号を外して単なるアマプラオリジナルのアクションドラマとして見ればクオリティの高さは感じる作品だったと思う。
エピソード1 兄弟の再会
時代はベトナム戦争を終えた1970年代のアメリカに遡り、当時の民衆の時代背景を交えながら貧困に育ったウィンストンと兄フランキーを中心に話が進んでいく。
起業家として成長していたウィンストンとは裏腹に兄フランキーは自らの正義の元テロリストとして個人で活動しており、裏社会を牛耳る男が経営するホテルコンチネンタルを襲撃しコインプレスと言う箱を奪ったことで彼ら兄弟とコンチネンタルの争いに発展する。
コンチネンタルではコインプレスによって製造されたコインを持つことがその人物の高いステータスを表しており、ホテルコンチネンタルで泊まることもできる価値の高い通貨であった。そのコインプレスを奪われることはコインの価値を大きく下げかねないコンチネンタルにとっては重要な道具だったと言える。
ウィンストンは疎遠になったいたはずの兄の襲撃をきっかけにマンハッタンに戻され、マンハッタンの仲間の手を借りて隠れていた兄を探す。主席連合からも目をつけられていた兄、その妻と共に脱出計画を計るが仲間に裏切られツインズと呼ばれる殺し屋によって兄は偽のコインプレスを持って囮となり殺されるのであった。
エピソード2 裏切りか忠誠か
兄のおとりによって逃げ出せたウィンストンとその妻イェンは彼の正義を掲げコンチネンタルと支配人のコ―マックを転覆させることを誓う。
その誓いと共にアジアタウンや地下組織の人間から仲間を集め、それらのサブキャラたちとコンチネンタルや主席側の群像劇を中心に展開していく。ウィンストンとフランキーの少年時代の過ちによって見ず知らずの家族を殺した因縁となる相手も明かされていく。
またジョンウィックでもおなじみのウィンストンとコ―マックの側近であったシャロンの関係も、ウィンストンがコ―マックの裏切りを持ち掛けることによって始まっていくことが描かれる。
本編に繋がる過去の話としてはこのきっかけの描写が唯一で、他の仲間の話や全体的な話は長いが魅力も薄い。
エピソード3 反撃の時
序盤仲間たちといざこざし分裂しかけるが、コンチネンタルへの総攻撃が始まる。
各人物によるアクションシーンが中心となり、ジョンウィックの世界観やアクションを継承したガンフーなどの演出も多く結局作品としてはここが唯一見ごたえある。
殺し屋のツインズの不気味さはアクションを通してジョンウィックらしく一番魅力的だった。
最後はこの群像劇をもたらした兄弟の過去の黒幕こそがコ―マックと主席側の人間だったことが明らかになったところでコインプレスと共にコンチネンタルを転覆しハッピーエンドで終わっていく。
コンチネンタルの支配人がウィンストンに変わることは当時は業界だけでなく市民にとっても喜ばしい時代だったことも描かれている。
メルギブソンのコ―マックも良かったが主席側の女性がもう少し暗躍していたら話も盛り上がったのにと思う。尺も足らなかったか。
ストーリー自体は本編の過去の掘り返しとしても面白味はないが、3エピソードごとの味を体験して評価できる作品と思う。
本編もストーリーに厚みがあるわけではないので、変に引き延ばそうとしたらこうなるのも予想はつく。
Amazonオリジナルドラマとしては映画メディアの良さも残したクオリティは感じられるぐらいだろう。
ジョンウィックのフォーマットが好きな人はがっかりするので見なくてもいいが、見るなら何も期待はせずに見たほうがいい。