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「海外実写」というフラグを跳ね返してネトフリより先に成功させた仏実写版【シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション】
アマプラで配信がそろそろ終わるらしいので期待なくネタ半分に観てみたが、いい意味で裏切られ実写にしては質の高い作品になっていて驚いた。
あらすじ
ボディーガードや探偵を請け負う凄腕のスイーパー「シティーハンター」こと冴羽獠(山寺宏一)は、相棒の槇村香(沢城みゆき)と日々様々な仕事を受けている。ある日、掲示板に「XYZ」書かれた新しい依頼。その依頼人の男ドミニク・ルテリエ(土師孝也)から獠と香は、仕事の話を聞く。それは、ルテリエの父が開発した<香を匂った者を虜にする「キューピッドの香水」>を悪の手から守ってほしい、という依頼だった。
シナリオは原作にない完全オリジナル作品になっているが、原作へのリスペクトが感じられ日本のファンが見てもあまり違和感のない話に仕上がっている。
そもそもなぜフランスで実写化されたのか。
フランスでは80年代にシティハンターのアニメが放送されており日本と同じぐらいの世代でファンも元々多かったらしい。
ただ放送の時間帯が子供枠だったために下ネタや流血などの暴力シーンは吹き替えやカットで別の表現に差し替えられており、原作出版もアニメ放送の後の話だったともいわれている。
タイトルも「ニッキーラルソン」というタイトルに変わっており映画でもそのままの名残で描かれている。
その当時からシティハンターを愛していた今作の監督フィリップラショーは北条氏にオリジナル原作を提案し、北条氏もめずらしく射止められたようだ。
北条「(『シティーハンター』に関しては)いろいろ映画化のオファーは受けたんですけれども、アクション映画というか、アクションが多いプロットばかりだったんですね。でも、ラショーさんのシナリオは、とても『シティーハンター』らしくドラマがあって、ギャグもあって、お色気もありました。これこそ『シティーハンター』の世界だなと思いました」
そもそもシティハンターのアニメや原作の権利は出版社ではなく北条氏が運営する会社が全て管理しており、実写の話は来ても彼に原作を見せて許可されなければ何も作れない体制になっているらしい。
振り返るとシティハンターの劇場版に全くハズレがないのもそれほどの徹底ぶりだと思えば納得できる。
「コスプレ実写」で終わらなかった細部に至る原作愛
海外実写に飽き足らず、国内実写映画も今だ数多く作られるが基本的に役者がキャラクターを被った違和感を拭えない「コスプレ実写」のままの作品で終わっていく。
今作も予告編から同じテイストで一般から不評は受けていたらしいが、リョウの袖を少し捲られている細かいファッションの演出、海坊主やカオリの再現度は「コスプレ」とは乏しにくい再現度でファンからは密かに好評だった。
本編を観てもそこは増していき個人的には海坊主を最後までリョウと敵対視させたままあまりしゃべらせなかったことや、定番のカオリのハンマーコメディを1回にとどめたのも細かいが良かった。
その辺の定番をしつこくブラすとキャラクター要素だけを詰め込んだチープにしか見えない実写作品になる。
シナリオは誰でも魅惑的にしてしまう「香水」を巡る争いをテーマにした下ネタコメディではあるのだが、脇にリョウとカオリのパートナー観も軸にしているのがこの映画が北条氏やファンに受け入れられた要因だろう。
最後の黒幕への伏線をカオリの兄がいなくなったことによるリョウとカオリがパートナーとなったきっかけを序盤で描いたうえで回収されるという非常に原作に忠実なオリジナル作品となっており、そこにカオリによるリョウへの女心も交錯させることで実写化ストーリーの意義もより感じられるようになっている。
アクションの演出も最後まで妥協感もなく、中には「ハードコア」で話題になったFPS視点を採用したり、カオリの股座からリョウが銃を撃つ細かい演出も多く文句なかった。
コメディも中盤はしつこくてダレるところも多いが、アニメ版から仕込まれたフランス故のものなのか肝になっている下ネタに関しては大人全員が振り切ると上品さも見えて恥ずかしい印象を受けない独特な世界観だった。あの辺は日本でも真似できないところだろう。
成功要因を探りつつそれなりに賞賛する文章になったがイチ映画としてだけ見ると物足りなさは正直なところある。
ただ漫画実写映画というジャンルで観た時にハリウッドや日本映画も見習ってほしい所しかない作品になっていた。
監督が原作を最大限リスペクトした演出をした上で、余計なオマージュは絶対につけないというのはシナリオを再現する上でもかなり重要なのが分かる。
最近はネトフリの実写化がものすごくよくできてるがそんなネトフリにてシティハンターの実写も決まったので楽しみ。リョウ役は鈴木亮平と既に申し分ないので北条氏の判断も信じつつ期待したい。