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医療が営利目的化されたらこうなる【映画「薬の神じゃない!」】

観たらシリアスな社会派映画で良かったのに、表向きがコメディタッチになってる分損している気もした。

あらすじ
2014年に中国で実際に起こり、中国の医薬業界の改革のきっかけともなったジェネリック薬の密輸販売事件を映画化。男性向けのインドの強壮剤を販売する店主 チョン・ヨン(程勇)。ある日、「血液のがん」である 慢性骨髄性白血病を患うリュ・ショウイー(呂受益) が店に訪れる。国内で認可されている治療薬は非常に高価である為、安価で成分が同じインドのジェネリック薬を購入して欲しいという依頼だった。

実際に起きた陸勇事件がモデルになっている。舞台は白血病が流行していた当時の中国。

未だ医療保険制度も整っておらず治療薬も企業製造によって高価格で売られていたために、最も感染リスクの高い庶民には全く手が届かない構造的な問題が表面化していた。

医薬の法制化もジェネリックの認可もない利権絡みの雰囲気が強い状態が当時の描かれ方だった。

特に経済格差が大きくなっていた当時、貧困層と言われるような人がその当人になっていることも劇中では強調されていく。

当時の白血病の生存率は30%ほどしかなかったという中々恐ろしい数字も出てくる。

事件の主人公になる薬剤の店主チョンヨンは患者であるリュの依頼によって、こちらも自分の収入目的という不純な動機で渋々インドからジェネリック薬の密輸を始めていく。

初めは潜在需要が大きく成功も見込まれた商売だったが、国内の患者に売っても性質を疑われ最初は全く売れない。

転機になるのはネット掲示板で医薬品の情報を患者に流し影響力を持っていた送り主に情報を流してもらうことで患者にも信頼されビジネス的成功を収めていく。

その後も正規品とは安価で密輸の薬を多数の人に売ることで売り上げを伸ばしていった。

店主を中心に彼らは老若男女で役割を分担する小さなチームとして動いていたのも、現代に通ずる裏社会感が出ていて面白い。

後に特殊詐欺的な手法で薬品を売りつける違う同業者も出てくる。主人公らはあくまで効果も見込んだ商売として描かれるが、医薬品が地下ルート化すると悪徳屋が総じて増えるのも背景としてはありそうな話でよかった。

結局チョンヨンはその同業者に脅されてルートを買収されたことでチームは解散し密輸ビジネスとしては一度足を洗う。

しかし一年後買収した男が逃亡したことで薬のルートが止まり、患者であった仲間の死によって再び密輸ルートを復活させ安価で売っていく。

後半からは主人公は善意として私財を投じ赤字覚悟で患者にさらに安価に薬を届けていく話に。

医療の保障が機能しない国では善意として違法を犯さなければいいけない構造的問題と正義が両面していく複雑な状況がそのまま描かれる。

結局彼は最終的に逮捕されてしまうがこの事件がきっかけに医療保険改革が進み、正規薬品は安価に設定されていく。

白血病の生存率も80%にまで登るまでになり、彼の正義が結果として公共性を見直す一端になった話として幕を閉じる。

我々にとってはコロナワクチンに対する各国の対応がこの話をよりリアルな最悪の想定話として考えさせられる。

先進国でもアメリカは接種の優先を富裕層や白人などを露骨に優遇する対応で感染者数はより増大する事態も起きていた。その指揮を執った某大統領が変わったことでようやく抑えられていった過程も記憶に新しい。

日本も優先度を公共性の貢献度から上げていく名目に結果として政治家関係者らが最も早かったやり方には違和感があったが、老人を中心とする重症リスク度から優先し無償で全国民に接種を施した対応自体は今でも評価されている。

社会保険も整われ薬事法で法制化されている国としては中々考えにくいが、流行病ほど利権が絡むリスクも見てきた我々には知らないところで営利化が進んだ果てに公共システムさえ瓦解していくことも最悪の想定として考えられる作品だった。

医療だけでなく生存に必要不可欠なものが営利化されるとこうなるのかもしれない。







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