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もしも冷戦下の露国にエイリアンが来ていたら【映画「スプートニク」】
割と最後は普通のドラマで期待通りではなかったが、エイリアンを通して旧ソ連時代の背景を見る映画として探るSFとしてなら悪くはない。
映画『スプートニク』は、冷戦時代のソ連を舞台にしたSFホラー映画で、エイリアンとの恐怖の遭遇を描く物語だ。物語は、宇宙ミッションから帰還した宇宙飛行士が異様な症状を示す場面から始まる。彼の体内には地球外生命体が宿っており、ソ連政府はこのエイリアンを利用しようと秘密裏に彼を隔離する。
ストーリー
主な登場人物には、宇宙飛行士コンスタンチンと、彼の治療を担当する精神科医タチアナがいる。タチアナは政府に雇われ、彼を観察しエイリアンの正体を解明する役割を担うが、次第に事態の恐ろしさに気づき、道徳的な葛藤に苦しむことになる。
エイリアン自体は非常に独特で、寄生生物のように宿主に依存して生存する。夜になるとコンスタンチンの体外に出てくるこの生物は、戦闘に適した形状と機能を持ち、驚異的なスピードと攻撃性を発揮する。その見た目も恐ろしく、異形のフォルムが観客に強烈な印象を残す。
『スプートニク』は、人間とエイリアン、科学と倫理の境界線を問うスリリングな作品であり、ソ連の秘密主義や冷戦の緊張感を反映した作品としても評価されている。
エイリアンを旧ソ連時代に召喚した意味を勝手に考える
映画タイトル「スプートニク」は作中の宇宙船の名前であるが、実際の旧ソ連時代にも打ち上げられた宇宙船とわざわざ同じにして制作されている。
当時は米国との冷戦下で宇宙事業での争いも行われていた時代。
その一環の中で打ち上げられたスプートニク2号ではライカという犬を宇宙船の中に入れ実験が行われていたとされている。
スプートニク2号の打ち上げは成功しライカは当初宇宙の軌道上で数日間生きたと報告されるも実際は大気圏内の熱で亡くなったとされ、非人道的な実験と悔やみにより国の中では神話として扱われているらしい。
作中のエイリアンはコンスタンチンの身体に共生し地球に帰ってくる。それを知る軍は彼を匿い国にも隠密に非人道的な実験をしながら軍事利用する計画を明らかにしていく話だった。
2020年制作のSFにわざわざ冷戦時代を設定し、このタイトルを選んでいるのは当時に対する非人道的な出来事に関する皮肉も混ぜて作っている意図も勘ぐってしまう。
コンスタンチンはエイリアンに寄生されたことは家族を見捨てた報いだと捉える。絶対的に近い服従と国の名誉が向けられている中で、個人的な私情や失敗を宇宙へ発つ一週間前に世間に勘ぐられるような選択はできなかった。
しかし後に彼の共生できた力は選ばれたものと捉えなおし、一度は見捨てなければならなかった息子の迎えを決めて軍施設の脱出と抵抗を試む決戦と共に終わっていく。
ライカを暗喩しているかは私の勝手な深読みにすぎないが、この作品におけるエイリアンの文脈は当時の国の緊張感を表すとともに外から帰ってきた異質な存在がその歴史を壊すためのSFでもあったのかなと思える。
正直ドラマとしては面白味はなかったが、わざわざ冷戦下の自国を選んでエイリアンを召喚した意味をあれこれ想像すると面白くは見れる。向こうのSF映画は飛んでいるのが多いが監督インタビューが全く日本に届かないのが少し残念である。