自主制作にしてはリアルな半グ〇映画【JOINT】
ここ数年話題になった闇バイトからの特殊詐欺や地面師との付き合いなど、半グレの動きを知る入門として教材になりうる映画だったと思う。
配給はなかなか出ないのか大手含めて半グレ映画はほとんど作られていないが、振り返った時に一つ風穴をあけた立ち位置にはなりそう。
中古スマホ、名簿売買、投資家、地面師
出所した主人公石神は友人支援の下に上京し名簿ビジネスから始めて資金を作り始めようとする。
彼は裏組織の類には属していないが過去に悪さをしていた経歴から組織の人間らにも顔が利く存在になっている。基本的には暴走族の繋がりから続く人も多いらしいが石神もそんなところだろう。
石神は兄弟分とし、中古スマホ転売もしていたキムジュンギの元を訪ね名簿ビジネスに本格的に乗り出す。
市場で出回っている中古スマホもデータ上では消しても中身にログが残っている場合もあり彼らはそこにアクセスして抜き取る。
スマホには家族の電話や住所を登録している人も多いため1台で連結してまとめて吸い取ることができてしまう。
またその後の外人組織では売られる前のルーターにウィルスを仕込みデータを抜き取るという方法も明かされている。よく言われるルーターの脆弱性についてもここにあるとされている。
それらから抜き取った名簿リストは今は特殊詐欺グループに売られ金を稼いでいるというのが流れだ。
映画ではそれを買い取った特殊詐欺グループがどのようにして行い、警察に捕まるかまでも描いている。実行犯はネットで集められた闇バイトに任され逆探知されないよう一日中車で走り回って電話をかけていることもよく出ている。
名簿ビジネスで成功を収めた石神は友人の薦めで投資家に転身することを決める。主人公としては裏社会から足を洗うための転身だったが、半グレの流れとしても投資家はかなりありそうな展開として見えた。
立場の弱いベンチャーに投資し、名簿データをここにも活用しながら会社は軌道に乗っていく。
物語的には石神自身の経歴を取引先に調べられたことで彼は投資を降りる展開になったが、ここは彼が勝手に口を滑らせたのもある。
今は杜撰な企業も多い中で投資家として裏で手を入れている人も存在していることもあるのだろう。
軌道に乗ったベンチャー企業の移転した先も石神の友人である地面師の男によるオフィスだったのは面白い。
ちなみに地面師とは地主になりすまして架空の土地取引を持ち掛けて代金をだまし取る。半グレとしてとらえられることも多い。
直接的に二人がつなぐ描写はなかったが、東京であれば裏で投資先や弁護士、土地も仲間内でネットワーク化しているのはありえそうな話だった。
後半からは表世界で居場所が作れなかった石神は暴力組織の抗争の因縁に巻き込まれて終盤へ向かっていく。
武闘派を破門しビジネスで稼ぐ大島会と、それによって破門された武闘派新組織市川会による抗争で裏組織のねじれの部分も描かれる。市川会が武闘派と言っても鉄砲として雇うのは部下ではなく結局半グレの二人だった。
この辺からは石神個人の揺らぎを描いていたが、彼のバックグラウンドは何もわからないのであまり話に乗れなかったかな。市川会側の半グレ役の演技は大人の怖さが出てて良かった。
表でも裏でもない石神の中途半端なところで半グレの在り方を映し出す筋としては全体で通っていてよかったとは思う。
ここまで良いようには書いたが低予算も見える映画なので見る人の大らかさも試される。
とにかくアップで寄るシーンが多かったり、会話の声が聞こえなかったりはするので大手のような技術的な部分ではゆったりは見づらい。
そうした自主制作系の映画も自分は目を通すので慣れてはいる部分もあるが、それでも出来はいい半グレ映画だったと思う。