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看護師の僕が「がん」と診断された話②(発見から受診に至るまで)

大きくなってきた「ホクロ?」

ここ数年、顔のホクロが少しずつ
大きくなっているなと思っていました。

でも、年齢を重ねるごとに増えてくるものだし
「シミ」みたいなものなんだろうし。

起業したばかりで、ここ数年は
健康のことにはそこまで気を配れず、

気になってきたらレーザーで取ろうかな、
そんな調子で全く危機感を持たずにいたのでした。

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気づいてくれたのは妻だった

妙にそのことが気になった妻(看護師)は
ホクロの種類を夜な夜な調べていたそう。

しかし、どの種類にも特徴がヒットしない。
その時点で、ホクロではない可能性、つまり

「ガンではないか」

と疑い始めたとのことでした。

昔からの写真を時系列で並べたところ
この1年で特にに大きくなっているのに気がつき
「もしかしたら」と疑念が強まっていったそう。

妻は数年前、ガンでお母さんを亡くしています。

「なぜ今まで気が付かなかったんだろう」
「もし助からなかったらどうしよう」

家族と闘病した経験も思い出されて、
彼女はどんどん不安になっていきました。


妻、必死の訴え

妻は僕に受診を進めることにしました。

しかし、のんきな僕は彼女の勧めを完全スルー。
今思えば、妻には悪いことをしました。。

その間にも妻の不安は日に日に増していき、
ついに僕の前で泣いてしまったのです。

流石の僕もこれには弱ってしまい、
妻の不安を取り除きたいと言うだけの理由で
近医の受診を決めたのでした。

まさか自分がガンに侵されているとは
このときは思ってもみなかったです。

このとき、妻が危機感を持って説得してくれ
泣いて頼んでくれたことが運命の分かれ道。

妻、執念の大ファインプレーでした。

街のお医者さんの好判断

次の日、出勤前の時間を使って
近所の皮膚科クリニックを受診しました。

60歳くらいの女性の院長先生が
ぼくのホクロをじっと見てくれます。

「私は大丈夫だと思うけどね」

やっぱり。これで安心してもらえるな。

「でも、確定診断はできないの」
「紹介状を書いてあげるから、一応しっかり検査してみたら?」

ええ〜、うーん、面倒だけど
そのほうが納得してもらえるかなあ。

「わかりました、お願いします」

これが一つの運命の分かれ道でもありました。
先生の選択は、本当に有り難かったです。

ここで「大丈夫」で済まされていたら、
僕は向こう数年安心してしまって、
受診すらしなかったことでしょう。

そして、きっと顔にはもっと大きな穴が
空くことになっていました。

そんな人は世界中にごまんといるのです。
僕はほんとうに、ラッキーでした。

「ああ、ダメなんだろうな」

「大丈夫」とお墨付きをもらいたいだけの僕は
次の日、紹介先のO総合病院皮膚科を受診。

軽い自己紹介を終え、診察が開始。
ダーモスコープ(ライトがついた拡大鏡)で
患部を診察してもらいました。

「これでようやく病院ツアーも終わる」

そう思えたのもつかの間、
ドクターの表情が険しくなっていきます。

「ああ、これダメなやつだな」

僕はすぐに理解し、背後から
すーっと嫌な感情が襲ってきました。

「癌」という言葉の力

自分でいうのもおかしいのですが、
僕はまぁまぁ図太いほうだと思っていました。

しかも医療者である程度知識もあるし
何を言われてもそうそう動じない、
そんな自信がありました。

しかし、

「この病気の可能性があります」
「空いている日に、すぐ検査しましょう」

一切れの紙を手渡され
そこには 基底細胞癌 の文字。

今でも覚えていますが、
平静を意識しなければならないほど
動揺していた
のを覚えています。

「基本的に転移はしないもの」
「進行の速度は遅い」

安心できるワードもいくつかもらったものの
頭の片隅には「死」がちらつきます。

「この紙は、妻には見せられないな」
と思いました。

次の週に検査の予定を設定し、
大きな不安を連れて、僕は病室を後にしたのでした。


余談:妻の優しさ、患者のきもち

振り返って妻の気遣いを感じたのは
「ガンじゃないか」とは一言も言わなかったことです。

おそらく検索して病名は目にしていたと思いますが
「受診してみたら」としか言いませんでした。

それってすごく、優しかったなと思います。


現に、確定診断の後の話ですが
妻が何気なく

「その横にあるホクロは大丈夫なのかな?」

と口走ったことがあり
(本当に素朴な一言だったと思う)

僕がすごく動揺して落ち込んでしまい
妻を慌てさせてしまったことがありました。

ずっと一緒にいれば、そんな一言あって当たり前だし
ナーバスで迷惑な夫だなぁと思うけど、
きっとみんなそうなのかもしれないと思います。

些細なひとことに怯え、
不意の一言が突き刺さる。


患者さんへの伝え方を常日頃意識して
働いてくれている医療者さんには

「その努力、無駄じゃないよ」

と伝えたいです。

その気遣い、ひとつひとつに
患者さんはきっと救われています。

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してもいいものか僕もよく迷うのですが、
僕に限ってはすべて「応援してるね」
という意味に受け取りますので、
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つけてもらってOKです!😊笑

【今後公開予定の目次】

・検査の段階から形成外科受診を決めた話
  大好きな焼き肉の味がしなかったわけ

・医療者であるということについての話
  医療者も「がん」を宣告されたらショックを受けるのか
  ぼくが体験した「スタンディング告知」とは

・看護師の役割を考えさせられた話
  告知後、看護師に「追い詰められた」気がした

・男性であることのデメリットを感じた話
  真剣にぼくの話を聞かない形成外科医

・はじめての「終活」をした話
  ぼくは遺影を撮ることにした

・手術当日の話
  心の準備ができなかったわけ
  自己紹介をした人、しなかった人
  実は執刀医を把握していなかった
  長い待ち時間に感じたこと
  この曲?地味に辛かったBGMのこと
  当日に術式が変更になったこと
  妻がオペ時間を知らなかったこと
  素晴らしかった医師の言葉

・手術を終えて
  どれくらいの不安があったのか
  一連の出来事から得たもの
  生きるうえで心境は変わったのか
  いま、伝えたいこと

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