廃棄物再生と分析② 多角的な検証が大事です
こんにちはかず波です
SEMの続きです。
SEM観察によって対象物の形状や表面状態に関する情報が得られました。そしてさらに、SEMを使い情報を得る事ができます。そのひとつはEDS(エネルギー分散型X線分光)といわれる手法です。
SEM観察時に電子線で励起された試料が発するX線(これを蛍光X線といいます)をエネルギーあるいは波長に分解し、それぞれに相当する元素を固有エネルギー(ライブラリ)から特定、さらにピーク強度から濃度がわかるため、試料に存在する元素分布を知る事ができます
②元素分布(マッピング)
前回取り上げた試料のEDS分析結果を示します。
SEM像で用いたものと同じ試料(撮影箇所は異なりますが)の250倍撮影画像に、EDSで得られた元素分布をマッピングしました。
以下に、バルク※あるいは添加剤由来の成分元素の分布を示します。
※バルク(bulk)とは、流体や物体のうち界面に触れていない部分のこと(物質固有の部分に相当するもの)で、今回は、添加剤以外の主成分を意味します
この結果では、バルク由来の代表的な3つの元素分布(上段)が均一なのに対して、バルク以外のいくつかの添加剤由来のもの(下段)には濃淡がある事がわかりました。
もともと別の添加剤由来の元素でも、同じような分布をしているもの(ピンクと緑の元素)や、異なる分布を示すもの(オレンジの元素)など、添加剤のバルク表面での挙動(特定の物質と反応、あるいは単体で分散しているか、など)についての情報を得る事ができました。
さらに、処理物の物性を示す他のデータとリンク・考察した結果(添加剤の量が不足している、混合がうまくいっていない、反応速度が適正でないなど)を、処理に関する情報としてまとめ、反応条件を最適化、低コストな処理条件を得るための重要な指標として大きく役立ちました。
以上のようにSEMは、起こった現象(反応など)を空間・視覚的に解析できる貴重な情報源になります
今回は、固体廃棄物の再生に関する情報でしたが、液体(水系、油系)廃棄物に関しても、それに適したツールを用いて必要な情報を入手していきます
このように、さまざまな分析ツールを用いて多角的な検証で対象物(廃棄物)の正体をあきらかにし、その性質をできるだけ生かした再生品の設計を行うことが、環境負荷が小さく合理的なものになるものと考えています
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?