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アナログテレビで縞々模様のネクタイが禁止だったのは何故か カラーテレビの原理

テレビ(とディスプレイ)に関してはボチボチと書いています。

ディスプレイの歴史 - 初期のパソコンはどうして横40文字だったのか

アナログテレビで画面が流れるのは何故か

ここまでで端折ってきたのがカラーの原理なんですが、テレビというのは元々はモノクロで放送されて見られていたものなので、カラーにするにあたり電波や装置に互換性を持った形で実現できるように工夫されています。

そもそも画像というのは最終的に人の眼で認識するものですから、その原理には眼の作りが大切になってきます。

視細胞

まあテレビを見る時は明るいので錐体が反応しているのですが、人の場合は三種類の細胞の明るさを組み合わせることで色を感じています。ですからブラウン管にも三種類の蛍光体を塗布して、これらの明るさを組み合わせてカラーを実現しているわけです。面白いのが人間の脳は明るさに関しては高い識別能力を持っているのに、色に関しては大雑把な認識しかしておらず、あまり細かな色分けをしても、それは混ざって認識してしまうという特徴があるようです。

そこでモノクロとの互換性を維持するためにも、比喩的に表現すれば、細かなモノクロの画像の上に大雑把な色を塗り絵のように重ねることでカラーを実現したのです。色はあくまでオプションであって、この信号を理解できないモノクロなデバイスであっても、色はノイズとして処理されてしまいカラー放送をモノクロテレビで見ることもできるという訳です。

NTSC

そう言えばカラー放送が始まった頃は、家にカラーテレビなんてなくて、画面の済に表示されていた「カラー」という文字を見ると、モノクロの画面を頭の中で色を着けていたものです。

このように、ちょっとズルをしてカラーを作っていたので、細かな周期的な柄が映像に含まれると、それを色信号と誤認することがあります。アナウンサーが白黒の縞模様のネクタイなんかしていると、その縞が色信号と誤解されて、何だか赤紫っぽい色が着いてしまったりするのです。確認したことは無いのですが、これが理由でアナウンサーは縞模様のネクタイをしてはいけないという都市伝説を聞いたことはあります。

ところで、このカラー信号の導入の際に垂直同期信号に微妙な修正が行われています。いろいろな信号の波長の関係を回路構成上および信号の識別やノイズが減るように見直したところ、今までの商用電源から作れたような60Hzから59.94Hzになっています。これが巡り巡って現在のディスプレイの標準的なフレームレートである29.97という謎の数字の発生源となっているようです。

NTSC ~1000/1001の秘密~

まあ0.1%ずらしただけなので、これはアナログデバイスにとっては微調整の範囲内ですからね。なお、カラー信号は3つの蛍光体に対応した信号を送るのではなく、RGBそれぞれの明るさからモノクロとしての明るさである輝度信号(Y)と2つの色度信号(IとQ)を計算により作ります。これは人の眼が色を色相と彩度で認識していることを真似た方法です。この信号を色信号として輝度信号の少し上の帯域に挟み込んでコンポジット信号を作るわけです。

カラーバー

そしてこの色信号を分離してブラウン管の表面にある三種類の蛍光体のそれぞれを適切な電圧で電子ビームを当てることでカラーを再現するわけです。

シャドーマスク

なかなか複雑な方法でカラーを実現しているわけです。この方法の細かな部分はテレビメーカーごとに特徴があって、パソコンで使う時には文字が鮮明に見えるソニーのトリニトロンに人気があったのですが、トリニトロンは何本かマスクを押さえている針金が見えてしまうのが残念でしたね。

トリニトロン

ところでAPPLE][のビデオ出力回路を見ると、この信号の特徴を上手に使った天才的な設計が見られます。モノクロ信号としては横280ドットの信号なのですが、ここから色信号をうまく作り出して奇数番目のドット、偶数番目のドットのみが光っていると色が着くようにしてカラー表示を作っています。そして2つ続けて光ると白く見えるわけです。もちろんテキスト表示の時には、この機能は邪魔なのでグラフィック画面のみ色を作るようになっているのですが、ディスプレイはアナログデバイスなので、調整次第ではテキスト画面でも色が着いてしまい見にくくはなったのですが。

Apple IIのハードウエア(3)

ですからAPPLE][はVRAMとしてはモノクロ画面の情報しか持ってはいないのですが、メモリを増やすこと無くカラーでゲームが楽しめるというなかなか巧妙な設計でした。そして高価なカラーディスプレイを用意する必要もなかったわけです。

この方法によるカラー化は、モノクロとの互換性が必要で一定の帯域で電波を送る放送に関してはデジタル放送になるまで使い続けられましたが、パソコンで使うには高解像度にすることができないため、袂を分かって専用のディスプレイを使うようになりました。もっとも家庭向けの機種では解像度が落ちてしまうもののコンポジット信号の端子が残されることもありました。ディスプレイとしてテレビを使う限り、むやみに解像度を上げることはできないので、このNTSCの仕様がゲームなどでも画面の制約でもあり基準となり続けていました。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SMPTE_COLOR_BAR_75.png
パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98687672

#カラーテレビ #NTSC #フレームレート #色信号 #コンポジット信号 #トリニトロン #APPLE2  

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