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NSの見掛け倒しのCPU - NS16032たち

知る人ぞ知るナショナルセミコンダクターのCPUである SC/MPに関して書いたのですが、この会社のCPUについては続きがあります。

愛され嫌われたCPU - SC/MP

最初の32ビットCPUとも言えるかもしれない16032は、1980年頃にはリリースされていたようです。データバスは16ビットですがアドレスバスは24ビットあり、32ビットの8つの汎用レジスタを持つ32ビット・アーキテクチャの命令セットを持っていました。アセンブラでコードを書いたりコンパイラを作成する立場から見れば、VAXなどのミニコンに似た豊富なレジスタと複雑なアドレッシングモードを持つ命令セットは、憧れすら感じるものでした。このチップを活用するためにFPUやMMU、DMACなども用意して、これらを組み合わせることでミニコンと同じようにマルチタスクOSを動作させることのできる能力を持っていました。

NS320xx

NS32000

問題なのは、このチップには多くのバグがあり、それを避けるためにクロックを遅くしたり、特定の命令の組み合わせを回避する必要があって、実用には耐えなかったことです。その後も修正と高速化に取り組み後継のチップをリリースしたのですが、その頃にはターゲットとするマーケットにはモトローラのMC68000が広く使われていました。

The Web Site to Remember National Semiconductor's Series 32000 Family

ややこしいことにマーケッティングの都合で、32ビットであることを強調するためか途中から既存のチップも含めて名称を16032から32016に改名されました。結局、複雑なアーキテクチャが仇にもなり高速化に手間取ったために、何とか追いついた頃にはRISCチップが台頭していて、結局、ハイエンドな組み込み向けに舵を切りました。しかし時すでに遅し感が強く幻のCPUとなってしまいました。

人知れず消えていったマイナーCPUを語ろう(第3回):68000、386、RISC攻勢の陰で生きて消えたNS 32000ファミリー(大原雄介)

どうしてこんなCPUを、こんな状態でリリースしたのかと思うのですが、ナショナルセミコンダクターという会社がもともとエンジニアが勤めていた半導体メーカーから独立したベンチャーで、当初から揉め事が多く、その中でいわゆる立派な企業になるためにアレコレと無理をし続けた結果かもしれません。技術力だけでは生き残れないのですよね。半導体業界の競争は厳しいもので、結局2011年にはTIに買収され今に至ります。

ナショナル セミコンダクター

ヘッダ画像はNS32016。以下のものを使わせて頂きました。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:National_NS32016D-6_S8520_top.jpg
CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=91625

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