見出し画像

ビデオもカセットになった - Uマチック

大昔はオーディオでもビデオでもオープンリールな磁気テープだったのですが、リールにテープを通す操作も慣れてしまえばなんということもないのですが、それでも手でヘッドの隙間を通してリールに巻き付けるのが面倒といえば面倒ですし、特に業務で毎日のように繰り返すのであれば、それなりにトラブルもあったでしょう。単に装置に挿入すれば良いカセット型が求められたのはとても理解が出来ます。

オーディオはかなり小型のコンパクトカセットやマイクロカセット(そしてエルカセット)になりましたが、ビデオに関しては最初は「シブサン」とも呼ばれた3/4インチのカセット型であるUマチックという規格が登場し、業務向けにも家庭向けにも使われました。

Uマチック

U規格

テープ幅はオープンリール時代よりもさらに太い3/4インチ(19ミリ)で、テープ速度は毎秒約9.5センチ、最大録画時間は60分で、カセットの大きさは約19センチ✕12センチ(厚さは3センチくらい)もありました。オープンリールと違ってカセットには巻き取られる方の空リールも中に入っているわけで大きくなりがちなのですが、これでも両方のリールに巻かれるテープの量は一定で、両方が同時に最大の長さまで巻かれることはないので、上手に重ね合わさるように設計されていました。

カセット型はソニーにとっても家庭向けビデオへの第一歩で、何とかして自動的にテープをヘッドに巻き付ける機構を開発するのが悲願でした。

第1章 ビデオもカセットに <ビデオカセット>

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-01.html

今見てもサンダーバードよろしく、なかなかメカニカルで複雑な動きをするのですが、これをすべてコンピュータも使わずメカだけで実現した技術力には感服します。

The Umatic Videotape Format - (Tape Lacing Sequence)

「U-ローディング方式」によりマガジン化を実現! 家庭用VTR 『マガジンカラービデオコーダー』(U-maticの原型)

このU規格、当時は各社で争うこともなくすんなりと統一規格となったのですが、まずは普及させることが大事です。家庭向けを目指していたのかもしれませんが、どちらかというと業務向けに使われることのほうが多かったようですが、それでも会社などでは使われるようになり始めました。

そういう訳で、父の会社でもさっそくUマチックのビデオを買ったのですが、記憶にある限りテレビチューナーは外付けだったのでVP-1100に何らかのオプションを付けていたのだと思います。再生専用機となっていますが、単にチューナーが内蔵されていないだけで録画はできたのでしょう。

VP-1100

https://www.sony.com/ja/pressroom/pict_data/v_rec/1971_vp1100.html

このビデオで会社と製品のプロモビデオを作成して、ヨーロッパとアメリカに売り込みに行っていたような記憶があります。テレビ局でなくても大きな会社であればもうUマチックは持っていたようです。テレビ録画もできるVO-1700は、こちらで動画を見られます。

NHKアーカイブス 幻の名機

テープがあまりに高価なのと最大でも60分なので映画を録画するのもままならず、あまりテレビ番組を録画して見るということもなかったのですが(タイマー録画もできない)、王選手の756号を録画して何度も見ていたのだけは覚えています。まあ子供でもわかる大ニュースでしたからね。この時のテープがどうなったのか覚えていないのですが、ビデオが普及した頃にはもうダビングする必要も感じていなかった気はします。

王貞治(巨人) 756号世界新記録

覚えているのはUマチックの画質は素晴らしく、普及したベータマックスやVHSに比べても明らかにきれいな画質でした。電波で飛んでくる放送を録画するのですから、ビデオの性能より先にきれいな電波を受け取ることのほうが先で、ゴーストが出ない電波を受けることはだんだん都会では難しくなっていました。Uマチックは同じ規格が業務用にも使われていたのですが、家庭向けの規格を作るにあたり、いろいろ妥協したところがあって、業務向けとは違うフォーマットになってしまったのは、残念といえば残念でした。そういう経緯もあるのでUマチックは密かなファンがいて、何と2000年まで製造されていたようです。まあ1980年代には業務向けはベータカムなどに移っていったようですが蓄積したテープを再生する必要はありましたからね。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:U-matic_logo.svg
Sony Corporation - Extracted from https://web.archive.org/web/20061117041800/http://www.sony-asia.com/b2b/_media/downloads_pdf/pro_media/brs.pdf, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=148270079による

#レトロデバイス #ビデオデッキ #Uマチック #ビデオカセット #VP1100 #VO1700 #ソニー #756号ホームラン

いいなと思ったら応援しよう!

kzn
頂いたチップは記事を書くための資料を揃えるために使わせていただきます!