当たり前でいいのか、四角形でいいのか
子供が遊ぶ積み木にしても、いろいろな形があるけれども、それらを組み合わせて少なくとも面としては四角形を作り、それを積み重ねて大きな物体を作ることを覚えます。紙を切り貼りして何かを作るにしても、使う工作用紙には方眼が印刷してあって、それを元に切って折っていくのです。
身の回りのものは四角形で溢れています。四角形のうちでも長方形・正方形であれば角はすべて直角です。ですから寸法さえ合わせれば角度のことは忘れて構わないというとても便利な形です。身の回りの多くの箱にしても直方体で紙は長方形で、あなたの住んでいる家を見回しても、大体は、そして家自身も直方体で出来ています。例外があるとすれば回るもので、そこだけは円が登場します。
こんな事を先日、再放送されたNHKの「映像の世紀・バタフライエフェクト」の「フラーとジョブズ」の回を見て思い出しました。実は録画したままにしてあって、見たのは数日前の話です。
映像の世紀バタフライエフェクト - 世界を変えた“愚か者”フラーとジョブズ
ジョブズについては
スティーブ・ジョブズという人
などにも書いた覚えがあるのですが、彼の人となりについては思うところがあるものの、世の中に大きな影響を与えた人物であるということに異論はありません。ここでどうしてフラーが登場するのかは番組を見て、ようやくわかりました。バックミンスター・フラーに関してはジオデシック・ドームの発明者であることは知っていたのですが、「宇宙船地球号」の生みの親であることは初めて知りました。
バックミンスター・フラー
ジオデシック・ドームは、多分、小さい時に万博であるとか富士山レーダーなどの建築物の形で見たことはあるはずですが、球の一部に見えた気もして、あまり印象には残っていません。ただ三角形が好きで、工作などで何かを作る時になんとかして三角形で作ろうと苦心惨憺していたのを覚えています。爪楊枝や竹ひごといった端が点になる使い方であれば良いのですが、割り箸であったりバルサ材で三角を使い始めると端が面になるので、適切な角度で端を切り落とさなければなりません。軸を通すために穴を開けたりすれば、もう分度器との戦いが始まります。他の人がさっさと工作を完成させているのに、どうしてこんな苦労をわざわざしているのだろうと思いながら図工室に居残っていた記憶が残っています。でも三角形で出来ていると格好良く思ったんです。
もう少し大きくなると今度は六角形に魅力を感じるようになりました。少しは丸くなったのかもしれません。四角形よりも角の立たない六角形が、どこか安定を感じさせるのです。五角形はイケません。あれはどうも落ち着きません。星のマークも普通は五角形の対角線の形ですが、六芒星の方が美しいです。そこに宗教的な意味を感じているわけではありませんけど。うっかりデザインした模様にこれを使ってしまい、誤解を受けてしまったことがあるので、それからは使わないようにしましたが。
六芒星
ただ六角形の呪いには付きまとわれて、有機化学を専攻するようになると、御存知の通りベンゼン環に追い立てられます。そしてベンゼン環は平面ですが、その立体版であるC60を黒鉛をスパークさせて作る実験をするような日が来るなんて思っても見ませんでした。そうです、C60はフラーレンと呼ばれていて、ここでフラーに戻るのです。
フラーレン
そういえば、以前に紹介した「ロズウェル - 星の恋人たち」のエピソードにもアサートンのドームというジオデシック・ドームが登場していました。
海外ドラマ - ロズウェル
第6話「なぞのドーム」
このドームはアメリカでは、ヒッピー文化とも結びついて意識されているようですし、ヒッピーと非日常体験は仲良しです。フラーにしてもジョブズにしても、あまりに強烈なその個性は、どこか他の人の知らない何かを実際に見てきたような、知っているような感覚を抱かせるところもあり、周囲に信者を作ってしまうところがあるようです。個人的にはそういうのは苦手ですけどね。
しかしながら、当たり前に存在するものをただ当たり前だと通り過ぎてしまうことで、失うことも多くあるものだとはいつも意識しています。わざわざ大きなエネルギーを使わなくても、そこにあるものに気付くだけで何かが解決してしまうことも、結構あるものではないかと思います。
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