写真製版の話
子供の頃はちょっとした印刷といえばガリ版で、その話は
なつかしのガリ版印刷
に書いた覚えがあります。サークルの会誌なんかも大体はガリ版でした。とはいえ学祭であるとか設立何周年記念みたいな時には、ちゃんとした本のようなものを作りたいので、そういう少部数の出版の際には写真製版でオフセット印刷をお願いすることもありました。
オフセット印刷
写真製版というのは元になる版下と呼ばれる紙を作り、これを写真に撮って原版を作って印刷をするわけです。元の紙は通常の文字であれば和文タイプライターなどで打ち、表題などで特殊なフォントを使いたければインスタントレタリングを転写するのです。
製版
印刷というのは実はデジタルな技術で、特定の位置にインクを載せるか載せないかの2択しかできず、濃さというものは表現できません。そこで写真など濃さがあるものは網掛けという技術を使って版を作ります。
網点
カラー印刷をするのであれば、網掛けの際に色分解をした版を作ります。
印刷
こうやって印刷所に色分解や網掛けをお願いして版を作ってもらって印刷に廻すわけです。版下を作るには、タイプ打ちした部分や図や写真などバラバラになっているものを版下用紙に文字通り切り貼りをしていくわけです。貼り付けた部分はどうせ2値化されてしまうので、多少の汚れは大丈夫ですが、貼り付けた段差の影が出ないようにホワイトを塗ったりします。細かい傷が見えないように少し大きめに作るのが普通でした。有効な部分がわかるように四隅にはトンボと呼ばれる位置合わせの印が付いていましたね。
こうして版を作るのは結構大変で同人誌をつくる人は大体こういう苦労をしていたとは思います。この知識は後にパソコンでDTPが出来るようになった時にはとても役に立ちましたが、日本での印刷の基本と英語での印刷の基本にはそれなりにギャップがあって苦労しました。
例えば和文タイプライターの文字の大きさはポイントではなくて「級」ですし、フォント名も簡単に置き換えられるものではありません。日本語にはプロポーショナルはないですし、ぶら下げのルールも全く違います。縦書きに至っては最初の頃は使い物になりませんでした。
乾式コピーが使えるようになってからしばらくは、ワープロで印刷したものを版下に貼り込んで縮小コピーで印刷するようになりましたが、カラーコピーの品質が充分になるまでは、表紙だけは印刷屋さんに頼むなんていう時代がしばらく続きました。
そうそう印刷した後には製本という手順があるのですが、表と裏を合わせるのって、結構面倒でしたし、のりしろの位置調整も大変でした。
製本
紙の選択というのも大事で、薄くしすぎると裏が透けてしまいますし、厚くすると紙が高いだけではなく、製本の種類によっては背の部分が耐えられなくなるので、悩ましい選択でした。紙の厚さって単位が重さなんですよね。
今はかなりのところまでパソコン一台で済ませることができるので、随分と楽になりましたが、版下を用意して印刷所まで何度も往復していた日々が懐かしくもあります。
そうそうこんな記事も見つけました。プロの方の記事はやはり深いですね。
写真製版のこと 製版カメラ
ヘッダ画像は、いらすとや より
https://www.irasutoya.com/2017/08/blog-post_287.html
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