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68000 - ミニコンの後継者

インテルの8086から少し遅れて1980年にリリース。インテルのように番号を少し増やして68XXとせずに、一桁増やしてきたのは今までの時代との決別を意図していたのでしょうか。8080と8086の関係のように何らかの互換性を考えること無く、真の16ビットCPUとして新しいアーキテクチャを採用し、すべて32ビットのデータレジスタ8つと、やはり32ビットのアドレスレジスタ8つを持つ、どちらかというとPDP-11に近いレジスタ構成でした。そういう意味では16ビットにシュリンクした32ビットCPUと考えたほうが近いのかもしれません。

MC68000

命令体系も対称的で、それぞれの命令にレジスタ番号と8ビットか16ビット、32ビットを指定すれば良く、アドレッシングモードも68系らしいアドレスレジスタの使い方をサポートし、ポスト・インクリメントとプリ・デクリメントも可能となっていました。

大事にしていたアンチョコ。

1982年にはバスを8ビットにした68008もリリースしましたが、パソコンなどへ採用された記憶はなく、もっぱら組み込み用途に使われたようです。

68000はリリース当時から注目度は高かったのですが、完成するまでの道のりは長く、エンジニアリングサンプルとしてのXC68000が出回ったので、これで試作を始める人もいました。ただ割り込み中に割り込みが発生するとバスが暴走するようなバグが残っていたので、ソフトウェア的には使い物にはなりませんでしたけど。お値段も68000が68000円という冗談が本当になる時期もあり、足も64DIPとソケットもお高いので、大事に大事にしていました。この石の良いところは、クロックサイクルを引き伸ばしやすいところで、初期の4MHzのうちはまだしも10MHzくらいになると手配線の回路では、ところどころ信号線のタイミングが揃わなくなって動かなくなることがあるのですが、少しタイミングを伸ばして事なきを得るという手法がよくとられました。

68000はリリースされると6809との互換性はなかったとは言え、さっそくFLEXやOS/9が移植され、組み込み系などの分野での利用が進みました。アーキテクチャがPDPに近かったことからUNIXも移植されワークステーションなどに採用されていきます。1983年あたりからは、AppleのMacintosh、シャープのX68000などにも使われるようになり、アーケードゲームへの採用も増えてきました。ゲーム機としてもメガドライブに採用された例はありますが、どちらかというと組み込み用途が多く、デバイスのコントローラとして長く使い続けられたようです。

FLEX (operating system)

OS-9

SunOS

Classic Mac OS

その後、仮想記憶をサポートする68010がリリースされ、ようやくUNIXが使いやすくなりましたが、MMUが外付けで、これが無いとプロセスをまるごと退避するスワッピングすることしか出来ず、もう一歩というところでした。さらにデータバスが32ビットになった68020、そしてMMUも内蔵された68030が登場し、ここでようやくゴールに到達した感じです。

MC68010

MC68020

MC68030

ところがこの時期になると、より高性能なCPUが求められハイエンドはRISCであるSparcやPowerPCへ移行し、68000の時代は終わりを迎えました。モトローラ自身も20世紀の終わり頃には会社自身が分裂を始め、2010年くらいには無くなってしまいましたしね。

SPARC

PowerPC

8086系のCPUがビジネス路線を突っ走ったのに対し、68000系はMacにも採用されましたし、ゲームであるとか研究用に多く使われ(組み込みも多かったんですけどね)、プログラムを作る機会がある人も多く愛された石だなぁとは思います。

モトローラ

そういえば、その昔、このビルにモトローラが入っていた記憶がある。その後、南麻布に移ったんだっけ?


ヘッダ写真は、以下から。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:MC68000P10_01.JPG


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