ASCII キーボードとANSI キーボード(それからJISキーボード)
今は特に説明無く英語キーボードといえば、記号を入力するのに「シフト+2」で「@」が入力できて、日本語キーボードであれば「シフト+2」で「”」が入力できます。カナの刻印が日本語キーボードにしか無いのは当たり前で理解できるのですが、どうして英語の記号の位置が異なることになってしまったのでしょう。この原因は元々のタイプライター時代のキー配列にいくつかの種類があったことが原因です。
私が覚えている限りでは、一般的に使われているタイプライターの記号配列は日本語キーボードのように「シフト+2」が「”」だったと思うのですが、英語と言ってもイギリス製のタイプライターもあるので、記号の一部が異なっていて「£」になっているものもあったと思います。そしてこれを元にASCIIコードが作られたので、コードを見るとシフトなしの数字とシフトありの記号は特定のビットをオフにするだけで済むように下位4ビットが同じ並びになっています。
ASCII
このような理由で、この記号配置のキーボードをASCIIキーボードと呼ぶこともあります。この配列は他にもテレタイプなどで採用されていました。またこのような関係になっていることから「ロジカル・ペアリング」と言うこともあるようです。IBMがPCに参入するまでの多くのPCはアメリカ製であってもこちらの配列のほうが主流だったと思います。
ANSIキー配列の制定に至るまで
http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~yasuoka/publications/ISCIE2004.pdf
キー配列
これに対して「シフト+2」が「@」になっている配列は、IBMが電動タイプライタを販売し始める際に、既に電動タイプライタを販売している会社を買収したため、元の会社が採用した独自の記号配列をおおよそ、そのままとしました。どうして一部の記号の位置が変更になったのかの理由は定かではないのですが、IBMは頑なにこの配列を守り続け、こちらの配列がANSIに採用されたので少なくともアメリカのコンピュータ向けのキー配置としては標準になりました。それでANSIキーボードと呼ぶこともあります。こちらはシフトのあるなしでASCIIコードのような関連性もないので「タイプライタ・ペアリング」と言われるようです。単にIBMのタイプライタが採用していただけなんですけどね。
キーボード配列に凝縮されたコンピュータの歴史とは
ちなみに日本語キーボードのキー配列がANSIではなくASCIIなのは、最初にカナ入力のできるキーボードがテレタイプであったところから、アメリカでもテレタイプで使われていたASCII配列がベースになったからのようです。この後、通信端末(ターミナル)用のキー配列としてJISに制定された際に、アメリカではIBMがANSI配列を強く押していたにも関わらず、そのままASCII配列を採用したことから英語キーボードと日本語キーボードで記号の位置が違うという状態のまま今に至るというわけです。もっとも初期のJISキーボードはバリエーションが多く、Shiftキーがないものがあったりしましたし、変換キーをどうするかが決まっていませんでしたが、最終的にPC互換機を日本で使うためにOADGが標準化したものが基準となりました。ちなみにJISキーボードに事実上テンキーが標準なのは、カナ状態のまま数字を入力することが出来ず、数字を入れる度にいちいちカナモードをオフにするなんてやってられないからです。ローマ字入力していれば関係ないのですけどね。
JISキーボード
ヘッダ画像はASCII配列のTRS80とANSI配列のVT100のキーボード(どちらもマイコン博物館所蔵)。
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