テレビとビデオ信号
どの家にもテレビはあるので、昭和の時代にはテレビ修理の技術を持っていればサラリーマンを辞めた後も食うには困らないとまで言われていたのですが、令和の時代になってみればテレビこそどの家にもありますが、昭和の技術で直せるものなんて無くなってしまいました。
さて、今ではもう見つけるのも難しいのですが昔のテレビはブラウン管という真空管を使って画面を出していました。
ブラウン管
一番奥に取り付けられた電子銃から電子を出し、これを周囲に取り付けられている電磁石によって方向を決めて目的の場所を光らせます。制御の仕方は、レーダーで見るようなラジアンスキャンや、オシロスコープのようなベクタースキャンもありますが、画像を表示するためにはもっぱら左上から順に左右に振りながら下に向かって一筆書きっぽく点を打っていくラスタースキャンという方式が使われます。電子銃にかける電圧にあわせた明るさの点が光って、これを素早く繰り返せば全体としては動く画像が出せるわけです。
電子銃にかける電圧は、触れば危険なほどの高いものが必要ですし、ブラウン管も真空管の一種ですからあまり扁平な四角いものを作るにはガラスの強度が足りません。そこで大雑把にいえば丸い画面、四角で考えれば正方形に近い形がよく使われるようになりました。
さて、表示する画像は放送という電波で送ることが多いです。テレビを開発していた当時、実現可能な電波の情報量としては4MHz程度の帯域が限度だったので、これを元に走査線の数(画面を縦方向にいくつに分割するか)が決められ、525本の線を1秒間に30回送るという値が決まりました。実は1秒間に30回では少しばかりちらつきが目立つので、これを1本おきの画像を60回送ることにして(飛び越し走査、インターレース)ちらつきを抑えることにしました。画面の縦横比としては4:3としました。
映像信号
この数字は国や地域によって少し違うものが選ばれることもありましたが、1画面のタイミングを図るのに商用電源の周波数が使いまわせれば便利だと考えたのかもしれません。この1画面を区切る信号を垂直同期信号と呼び、右まで行って左に戻るタイミングを水平同期信号と呼びます。これがズレると画面が縦に流れたり、全体に斜めの平行四辺形の画像になってしまうのは、昭和のテレビをご存じの方にはお馴染みの症状です。
右から左に戻るときも、下から上に戻るときにも一定の時間、有効な画像を表示するのに使えない(帰線)時間があるので、画面自身の解像度はおよそ350✕350(インターレースを考えなければこの半分)にしかなりません。
実際にテレビの放送として電波に載せるときには、音声も一緒に送る必要がありますし、変調方式としてFMであるとかAMであるとかの話もあるのですが、気になる方はとっぷりと調べてみてください。その後、カラー化される際には互換性のために、ちょっと変わった方法で色信号を追加し、音声も2カ国語であったりステレオといった複数の音声(音声多重放送)を送れるようになりました。
アナログ時代のテレビは、ここから大きく変わること無くデジタルな時代を迎えたのですが、テレビを受信することのないPCのディスプレイにおいても、この規格の延長線上にありました。縦横比はやはり4:3で、帯域の制限と帰線期間を少し減らせるようになったので、640✕400~480(インターレースを考えなければ半分)というお馴染みの解像度は、こうして決まったのです。
いずれのせよコンピュータにとって便利な2の累乗の数値ではないためにビデオRAMの作りは少し面倒になり、あえて256であるとか512の解像度を選んだケースもありました。アップル][では280✕192という解像度にしたために、少し半端なドット数となって実は使われないビデオRAMのアドレスがあり、こっそり秘密のデータを隠すこともありました。画面をクリアすると一緒に消えてしまう難点もあったので、用途は限られてしまいましたけど。
チャンネルの話とかケーブルの話もまだできそうだな。
ヘッダ画像は、いらすとや より
https://www.irasutoya.com/2017/03/blog-post_814.html
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