シンクレアとVIC - 日本では広まらなかったけど
御三家のパソコンが売れ始めた頃、ここにマーケットがあると気がついた人たちが仕事ではなく家で使うホームパソコンというジャンルの開拓をはじめました。ここでイギリスからのシンクレアという刺客が登場します。PETで味をシメたコモドールとともに、何とか家電としてのパソコンを目指しました。とはいえ値段を下げるために機能も削ったので、マニアな人たちには受けず、少なくとも日本ではあまりパッとしませんでした。
御三家のことを書いた記事
シンクレア ZX81/ZX Spectrum
ZX81が発売されたときには、100ドル程度という衝撃的な価格がバズって雑誌などでは大変に話題になりました。ところがなかなか手に入りません。ビデオ信号などの違いがあるので、日本ではアメリカ向けが発売されてから輸入されたようです。お小遣いではパソコンに手の届かなかった人たちが飛びつきました。キーボードが酷すぎるとか、実行中に画面が消えるときがあるとかもありましたが、何せメモリが1キロしかないので、実質的には画面の付いた関数電卓というところでした(80系CPUを使ったパソコンは、この後もVRAMとCPUの間のメモリの取り合いでパフォーマンスが落ちる話題が繰り返しでてきますね)。
シンクレア ZX81 - この記事はとても良く書かれていますね。
ZX Spectrum - ZX81の後継機
シンクレア・リサーチ
ちゃんとしたBASICが走りますし、コンピュータが何であるかは、これだけで充分に理解できます。ただやはり物足りなさがあって、このカテゴリは後のポケコンが引き継いだようです。
このイギリス、いやケンブリッジの文化は、ラズパイもそうですが、徹底的な簡素化をして、本当に必要なものだけにしてしまう力に目を見張ります。もっともケンブリッジのビジネスのやり方は良し悪しがあって、もう少し流通のことを考えてほしいなとは思います。
コモドール VIC-20/VIC-1001
コモドールがPETの成功を受けてホームパソコンに参入するために用意したのが VIC-20 です。300ドルという価格設定が受けて、売れに売れまくったようです。日本では、これを輸入するのではなく、ほぼ同等の機能を持つ VIC-1001 をコモドールの日本法人が設計して販売しました。多分ですがPETを日本で売るときに輻射電波の問題での苦労やカナを追加する需要がかなりあることから、最初から別製品としたのではないかと思います。
VIC-20
VIC-1001
これにはPETに手の届かない人が飛びつきました。キーボードもPETに比べれば(ちょっと)まともになりました(カチャカチャしていてApple][やTRS80ほどの品質ではなかった)。(確かパー研の後輩も何人か飛びついた覚えが)
最初は良かったのですが、コンテンツ(ゲーム)がなかなか揃いませんでした。また、人気が出そうで出なかったのは、内蔵されているBASICが、ほぼPETからパクったままで、せっかくのVICでグラフィックやファンクションキーなどの拡張された機能へアクセスできなかったこともあったような気もします。PC6001が登場する頃には日本での勢いは完全になくなってしまいました。
コンテンツとしてゲームは大事です。VIC向けのゲームはほぼHAL研という知る人ぞ知る会社が作っていたようです。この会社の中の人が後に任天堂の偉い人になるわけで、ファミコンが6502系列のCPUであることと、何らかの関係があるのかもしれませんね。
業界に痕跡を残して消えたメーカー マイコンがブレイクしゲーム市場を掌握したコモドール
Commodore VIC 20 のファンクションキーと PC-6001
コモドール
ところで、タンディはTRS80で充分安いと考えていたので、この時点での参入はありませんでした。VICの成功を見てから対抗機種を出してきましたが、いずれにせよホームパソコンのカテゴリは日本製に占拠されていたので、海外製のパソコンの出番はもう無くなってしまいました。コンテンツの力が強くなると、ドメスティックな要素が強くなりますよね。
写真はヘッダ写真も含めて、いずれもコンピュータ歴史博物館で展示されていたものを撮影したものです。
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