FM11 - 8ビットでも16ビットでも何でもござれ
富士通がFM-8の次にホビー向けに特化したFM-7を出した話は以前に書きました。
FM-7 - 御三家の地位を獲得した富士通のヒット作品
この時にビジネス向けにフォーカスしたFM-11も出しています。1982年11月にリリースされたのは3モデルで、最上位モデルのメインCPUは6809だけではなく8088も搭載されていました(サブはいずれも6809)。グラフィック画面も最大640✕400となりカラーも16色まで使えるようになりました。オプションでJIS第1水準の漢字ROMも用意され、遂に標準的に漢字を扱える環境が整ったわけです。F-BASIC(Ver4)が用意されていましたが、これは6809専用で8088のためにCP/M-86が用意されていました(後に8088用のF-BASICも出ました)。
FM-8やFM-7のように、キーボードの下に基板が収まるスタイルから拡張スロットやドライブベイを備えた箱型の本体にキーボードを接続するという、その後のPCの標準となるようなデザインとなりました。11という数字は8と16の間を採ったんだそうです。それなら12でも良さそうなものの11を選んだのはコンビニチェーンのイメージをもらったのでしょうかね。
FM-11
【富士通】 FM-11(エフエム イレブン)
FM-11(1982年)
実はF-BASICのROMを備えていたのはドライブレスモデルだけで、FDDを搭載しているモデルはBASICですらFDから読み込んで使うものになっています。そして6809向けにはFLEXやOS-9、UCSD-Pascalも用意され、8088に対してはMS-DOSも使えるようになります。また拡張スロットにZ-80などのCPUボードを挿すことで、CP/Mも使えるなど、実に多くのプラットフォームをサポートしていました。まあパソコンとしては少しお高めで、いろいろ揃えるとなかなか大変なPCではありましたけど。
懐パソカタログ 富士通 FM-11
1年半後の1984年2月にはメインCPUが8088のモデルと6809のモデルに整理されFDDも2HDが使えるようになり、その年の12月にはCPUを80186に衣替えしたFM-16βとして再出発を果たします。
Fujitsu Micro-11 AD2
FM-11
多くのOSをサポートし、グラフィック周りをサブCPUに追い出したおかげでハードウェアの構成も素直だったので、FM-11は開発マシンとして愛されたような気もします。富士通はIBM-PCの発表を見て8ビットから16ビットへ移行するにあたり、どうやら8086が普及することを見越していたのかもしれませんが、まだその行方がわからないことから、このようなマルチプラットフォームなPCを作ったのかもしれません。発表当時はまだ日本語を扱える環境が充分に整っていなかったのですが、この機種の歴史の間にワープロが急速に進歩して、パソコンでも日本語が使えることが当たり前の時代に移っていきました。
カタログ 富士通 FM 11AD2+ OS-9装備のハイグレード・パソコン。スライドショー 1985年2月
ヘッダ画像は、月刊アスキー1983年4月号に記載されたFMシリーズの広告の一部